38話 不良の勘違い
リトルナイトの群れを退けたピント達は、不良に襲われたフレア達を助ける為にカフェ近くに発生した異空間に飛び込んだ。
しかし、異空間に飛び込んだ先で待っていたのは、フレアの前にひれ伏す不良の群れだった。
『とりあえずフレアを止めないとな……おいフレア、その辺にしておけ!』
「あ、ゴウカ!」
ゴウカの介入により、魔女フレアによる不良への説教公演は幕を閉じた。
「あの、本当に申し訳ございませんでした……」
「さーせんっした……」
異空間の中、フレアの説教から解放された後。
不良達はフレアを筆頭にした魔女4人組に向かって深々と頭を下げた。
そんな中、不良のまとめ役と思われる生徒が前に出て、改めて話を切り出した。
「あの、本当に申し訳ございませんでした……まさか、仇だと追い続けてきた貴方様が番長の命の恩人とは知らずに……」
『恩人?』
「はい、銀髪の……魔女さんのことです。本当にすいません……」
不良のまとめ役は謝罪の言葉を並べ続ける。
カエと無事に合流し、カエの鞄に収まっていたピントは、目の前の状況がよく分からず不思議そうな表情をする。
『カエ、これどういうこと?』
「まあ色々とあってさ」
ピントに状況を聞かれたカエは、異空間に閉じ込められた後からの簡単な説明を始めた。
「異空間に閉じ込められた後、フレアが急に興奮して暴れ始めて……私は巻き込まれないようにそこから逃げ出したんだけど、慌てて転んで……電柱とぶつかって……」
『それはフレアの説教で聞いたよ。確かそれで電柱真っ二つにしちゃって、不良の皆んなは大人しくなったんだよね?』
「そうそう。で、大人しくなった不良達に、今度はトールが写真片手に話しかけに行ったんだよ」
『写真?』
「うん。トールと怪我した男子が写った写真」
『あ、男女の写真だ』
カエの写真の説明に、ピントはついさっき光朗から聞いた「不良が逃げ出した写真」の話を思い出した。
『それ何の写真なの?』
「ここにいる不良達のトップ……つまり、番長との写真なんだって。番長側が頼み込んで外で撮影したって……」
『トップ?』
「そう。そもそもあの不良軍団が私達にちょっかいをかけたのは、不良の仲間数名と番長が改造リトルナイトにやられたのが原因らしいよ」
『改造リトルナイト!』
ピントはピンと耳を伸ばして鞄から身を乗り出す。
『僕ら改造リトルナイトに間違われて、変なリトルナイトの集団に襲われたよ!』
「不良はそっちがメインとか言ってたなぁ。ピント、大丈夫だった?」
『うん! ダイキチと忍者が助けてくれた!』
「ダイキチと忍者?」
『うん、あの人のリトルナイト』
ピントは近くで佇んでいた、カマイタチ型リトルナイトのダイキチの主人である光朗に指を向けた。
そんな光朗の隣には、忍者型リトルナイトを肩に乗せた小次郎の姿もあった。
『あの2人が助けてくれた。光朗と小次郎だってさ』
「えっ、あ……どうも……旋風光郎です……」
「どうもこんにちは、小川小次郎です。貴方が例の初心者リトルナイト使いですね?」
「こんにちは、カエ・オームラです。私のこと知ってるんですね……あっ」
気まずそうにする光朗と、真面目に挨拶する小次郎にカエは挨拶を返す。と、ここで光朗のことを思い出したのか、カエは驚いたように声を上げた。
「初心者に負けた上にお店の人に連行されて2度と戻らなかったあのリトルナイト使い!?」
「一言も二言も余計! ホントのことだけども!」
ピントとダイキチが数十分前にした掛け合いとほぼ同じものが再び繰り広げられ、ダイキチは光朗の肩の上で苦笑いをする。
「ほら光朗、此処で面と向かって対面したならオームラさんに謝罪して!」
「あの時は大変申し訳ございませんでした……」
『ごめんなさい……』
「あ、大丈夫ですよ。今日までずっと忘れてましたし……」
『僕も2人に謝罪されたよ。で、みんなで此処まで助けに来たんだよ。ねえ、不良に襲われてたカエの方はどうなってたの?』
「えーっと……」
ピントは不良に襲われた続きを尋ね、カエは再び話を戻す。
「そうそう、不良は私達を……特にトールを目の敵にしててさ」
『トールを?』
「なんか番長が襲われた現場にトールがいたから、きっとトールが改造リトルナイトの主人に違いないって」
『でも違ったんだね』
「うん。むしろ、番長を改造リトルナイトから助けたのがトールだったんだってさ」
『えーっ!? よりによって番長の恩人を襲ったの!?』
「らしいよ。トールが写真を手に改めて説明した瞬間、不良軍団は一気に意気消沈して……そこでフレアが、その辺のコンクリート剥がして座席作って説教始めちゃって……」
『それであの現場に繋がるんだね』
ようやく状況を理解できたピントは、鞄の中で深く頷いた。
「本当に申し訳ございません! まさか番長を助けてくれた相手で、しかも初こ……」
『ハツコ?』
「あっ! いや、言っちゃダメなんだった! えっと……すいませんでした!」
「もう遅くない?」
「ほぼほぼ言い切ったようなもんだよな」
不良のまとめ役の軽率な発言をフレアとカエが指摘する中、話の中心となっているトールは申し訳なさそうにしながら話に割り込んだ。
「……私も軽率だった」
全力で謝罪する不良のまとめ役に対し、魔女トールも頭を下げて謝罪をする。
「あの時結論から話したから、不審に思われて余計に事態が拗れた。ごめんなさい」
「あー、改造リトルナイト使ってないとかいう発言か。確かにあの時のトールの発言は唐突だったよな」
「うん。私の悪い癖」
「えっ!? いや、そんな……! 元はと言えばロクに話し合いもせずに暴走した俺が悪いんで……!」
トールの謝罪に不良のまとめ役は更に頭を下げる。
「しかもよりによって番長の初恋の……! いや、なんでもない! 今のは忘れてください!」
「もう完全に言い切ったな」
『あの人口軽いね』
「こらピント、本当のことでも言わないの」
『ホントのことじゃん』
不良のまとめ役は再び失言。ここまでくるともはや隠す気すら見えない。
「はぁ、また勝手に暴走して迷惑をかけてしまった……あの、そもそも全員駆り出して暴走したのは俺のせいなんで、全力で償うんで……!」
「大丈夫。結果的に皆んな無事だったから」
「ですが……!」
「それよりも質問がある。いい?」
「あっ、はい! 勿論です! 俺に答えられることなら何でも……!」
「じゃあ1つ質問」
聞き手に回る不良に対し、トールは真剣な顔で1つ質問を投げかけた。
「貴方達と初めて会った時、貴方は私達が此処に来ることを理解してるような気がした。貴方は私達が此処に来ることは分かってた? 誰から聞いたの?」
「ああ、それは俺に直接タレコミがあったんだ。確か…………」
トールの質問に答えようとした不良まとめ役は、途中で不自然に停止した。
「…………?」
不良は口を開けたまま固まり続ける。どうやら内心で動揺している様子だ。
「どうしたの」
「…………俺、誰からこの話を聞いたんだ……?」
「は?」
「話どころか顔が……! 何もかも思い出せない……! 会った筈なんだ……あれ、そもそも会っていたのか……!?」
「……」
頭を抱え脂汗を流す不良を、トール達は静かに見つめる。
「副リーダー、どうしたんだ……?」
「なんかヤバくね……?」
不良のまとめ役、副リーダーの異変に周りの不良もざわつく。
「……副リーダーさん」
「あ、えっと……」
「思い出せない理由、私は心当たりがある」
副リーダーが慌てる中、トールは冷静に話を続ける。
「多分だけど、それは改造リトルナイトの仕業」
「……えっ?」
「貴方は改造リトルナイトに遭遇して、強い幻術をかけられ情報を得た可能性がある」




