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36話 一難去って……

 ピント達を罠に嵌めて追い込んだリーダーを返り討ちにした後。


『フン!』


 リーダーとメカニックを鞭の一撃で片付けたカイエンは、振り回していた鞭を龍の尻尾の形に戻すと、再び元の位置に装着した。


『たった一撃で倒れおって……リーダーの風上にも置けん奴じゃ!』


 カイエンはフィールドの外で倒れるリーダーに視線を向けて一言吐き捨てる。


『カイエン〜!』


『ピント!』


 そんなカイエンの元に、リトルナイトの群れを倒し終えたピントが駆け寄ってきた。


『カイエン、こっちはみんな倒したよ』


『そうか。ワシも今しがた悪党の頭とその側近を始末したところじゃ……して、ピント』


『なあに?』


 ピントを前に姿勢を正したカイエンは、ピントに向かって深々と頭を下げた。


『…………ピント、すまなかった!』


『急にどうしたの?』


 腹の底から響く本気の謝罪がカイエンから発せられた。しかし、ピントは何故謝罪されているのか分からず頭を傾げる。


『ピント……お前の言う通りだった! あの妙な盗撮犯を無理に追いかけていなければ……! 追いかけた結果、窮地に立たされ辱めを受けて……!』


『でも結果的に助かったじゃん』


『しかしピントの言葉にも耳を傾けていれば罠にはかからなかった! ピント、詫びとしてあのかしらへのトドメはお前にくれてやる!』


『いらない』


 リーダーにトドメを刺す権利を譲られるも、ピントはそれをあっさり拒否。


 そんな中、忍者のクロカゼとカマイタチのダイキチがゴウカと共に歩み寄ってきた。


『ピント、カイエン。此処から脱出するぞ』


『あ、ゴウカ。僕ら外に出られるの?』


『あの忍者のクロカゼがメカに強くてな。俺に脱出方法を詳しく教えてくれた』


 ゴウカは後方で佇む忍者リトルナイトを指差す。対する忍者はピント達に向けて返事代わりのサムズアップをする。


『四隅に設置されてる円柱の機械に小さな穴が空いててさ、その穴の底にあるボタンを10秒間同時押しすればフィールドは解除されるってさ』


『へぇ〜』


 ダイキチは説明しつつ、背中のリュックから取り出した細い棒をピント達に配る。


『俺らが設置したフィールドはすぐに解除できるんで、それ解除したら相手が設置したフィールドをさっき言った方法で解除するからね。パパッと終わらせて外に出るとしよっか』


『あ、待って』


 ダイキチが棒を手に隅に走りだしたところで、ピントが唐突に呼び止める。


『初心者くん、どうしたの?』


『僕はピントだよ。ダイキチ、ここで倒れてる皆んなはどうするの?』


『どうするって……放置だけど』


『そうなんだ』


『……まさか初心者くん、敵さんを心配してるわけ?』


『心配するよ。だってこの辺には改造リトルナイトが出るかもしれないんでしょ?』


 ピントの言葉に、フィールドの外で倒れていたリーダーが僅かに反応を見せる。


『あと、こんな場所だと魔獣も出るかもしれないし、放置したら倒れてる皆んなが危ないよ』


『……それもそうだ。少なくともネズミは出てきそうだしな』


 ピントの言葉にゴウカはゆっくり頷く。


『ダイキチ、お前の主人は近くにいるか?』


『いるよ。ついでに言うと、カフェの店長とハクヤってリトルナイトとも合流したみたい』


 ダイキチはリトルアイを通じて主人と通信しているのか、時折目を閉じて考え事をするような仕草を取る。


『……よし。とりあえず、リトルナイトを回収しにこっちに来るってさ。ピント、人が来るなら大丈夫でしょ』


『ダイキチありがと』


『いーよ。コイツらに逃げられないよう回収する意味もあるし、ついでだよついで。ほら、内側のフィールドが解除されたから、外側のフィールド解除しに行こ』


『はーい』


 内側のフィールドが消え去った後、ピント達は外側にあるフィールドの四隅へと移動すると、穴の奥にあるボタンを一斉に押してフィールドを解除した。

 機械から出ていた光は消え、ネットは空中から姿を消した。


『おぉ〜』


『これで出られるようになった! さて、後は皆んなが来れば……おっ、来た来た!』


 フィールドが解除された袋小路に、複数人の人の足音が聞こえてくる。


「ダイキチー!」


 真っ先に袋小路に現れたのはダイキチの主人。学生服の男子生徒は黒髪のセミロングを揺らしながら駆け寄り、ピント達の前で停止する。


光朗みつろう!』


 カマイタチのダイキチは大喜びで彼に駆け寄り、そのまま肩によじ登った。そんなダイキチの主人である光朗の左頬にはガーゼが当てられている。


『あ、初心者狩りの人だ』


『「それはもうやらないって!」』


『あれは事情あってのことなんだって!』


 ピントの一言にダイキチと主人の光朗は声を揃えて反論する。


「……まあ、個人的なトラブルに君達を巻き込んだのは悪いとは思ってるけどさ……」


『個人的なトラブル?』


「そーそー。まあちょっとしたことなんだけどね」


『それはあのウルフマンの主人に関するものか?』


「……まあ、そんなとこ……あの、あの時はごめん」


 ゴウカの指摘に光朗は言いづらそうにしながらも返事をし、最後に謝罪をした。


『いいよ、あの時は楽しかったし。ねえ、その頬の傷はどうしたの? 別のトラブル関係?』


「君にはどーでもいいこと! ほら、余計な詮索せずにさっさとここから出る!」


「あの頬の傷は僕がつけたんだよ」


 光朗の後方から返事が来だかと思うと、現場に新たな人間が姿を現した。

 光朗と同じ制服を着た男子生徒で、大きな眼鏡が印象的な優しそうな人物だ。


「あっ……小次郎こじろう……」


 光朗は後から現れた男子生徒に顔を向け、口ごもりならも名前を呼ぶ。

 対する眼鏡の小次郎は、光朗を気にせず話を続ける。


「彼はね、とある上級生のいじめをやめさせる為に、あえてその上級生に取り入って色々と無茶したんだよ」


『?』


「小次郎! その話はもういいって!」


「でも彼らって君のトラブルに巻き込まれた被害者なんでしょ? なら多少は聞く権利あると思うな」


「いや、小次郎が説明するくらいなら俺が言うって!」


 光朗は小次郎の説明を中断させると、今度は光朗が説明を始める。


「……まあ、その上級生ってのがウルフマン使ってた奴でさ。あいつ小次郎いじめてたんだよ」


『あ、そうだったんだ』


『あの性格ならやりかねんな』


「実際やってたんだよ。だから、仕返しも兼ねてアイツの下っ端みたいなのになって、色々やってたって感じ……かな」


『アイツ金持ちだから、少しおだてれば色々奢ってくれたよな! 他にも金にモノ言わせて色々してくれたりさ!』


「まあ色々利用して、都合が悪くなったらオサラバする予定だったんだよ。まあ、最後は初心者に負けるという屈辱を味合わせられたから、それを機に離れたってわけ」


『アイツ、学園で「喧嘩ふっかけた初心者に負けた」って噂が流れてさ。さらにいじめをしてた諸々の話も「どーいうわけか」ボロボロ出てきて……で、学園に居づらくなって転校してったんだよ!』


「そうそう! 結果は俺達の大勝利だったわけ! でもさ……」


 ここで光朗はガーゼで覆われた左頬に手を当てる。


「あの上級生に取り入って小次郎をいじめた仕返しをしてたってバレて……初心者狩りのことも含めてめっちゃ叱られた」


「当然だよ! 一歩間違えたら光朗も危なかったかもしれないのに……! あと見知らぬ人も巻き込んだから……」


『それで思い切りぶたれたの?』


「そういうこと! ほら、君達が無事だってハクヤさんとハクギンさんに知らせないといけないんだから! 早く此処から退散するよ!」


「光朗、その前に倒れてるリトルナイトをなんとかしないと」


 何かと焦る光朗に対し、小次郎は倒れたリトルナイトの群れを心配する。


「倒れたリトルナイトは私に任せて」


 そんな時、光朗と小次郎の後から3人目の男性が現れた。落ち着いた大人の雰囲気を纏う眼鏡の男性だ。

 そんな彼の足元には、老人の姿をしたリトルナイトの姿が。


『あ、ヴァルハラの店長』


「ゴウカくんだね、久しぶり」


 男性に気付いたゴウカは真っ先に声を上げた。店長はゴウカに視線を向けて優しく言葉をかけ、改めて話をする。


「私がこの場に倒れた彼らを保護しよう。ゴウカくん、君達には急いでパートナーの元へ駆けつけてほしいんだ」


 店長の言葉に、ゴウカ含むリトルナイト全員が反応する。


『まさか、フレア達に何かあったのか……?』


「……今はハクヤくんが向かってくれている。あれを止められるのはおそらく君達しかいない」


『……分かった』


 店長の話に深く頷くと、ゴウカはピント達のいる方を向いた。


『ピント、カイエン、急いで仲間を迎えに行くぞ』

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