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35話 形勢逆転

 不審リトルナイトにより袋小路に追い詰められたピント達だったが、ダイキチの助太刀によりフィールドが上書きされ形勢逆転。


 相手はダイキチが投げた煙幕に包まれ、叫び声が響いていた。


『此処から出るならまずは相手を全滅させて、安全面を確保してから後でフィールドを解除する……ってわけで、まずは遠距離攻撃で相手を粗方片づける方針で!』


『オッケー!』


『ピント、攻撃を放つのはカイエンが助け出された後だからな』


『分かってるって』


 今現在ピント達は、煙幕に包まれた相手リトルナイト達のいる方角に武器を構えたまま待機する。


 目に見えて煙は減っていくが、煙幕の中で何かが爆ぜて新しい煙が吹き上がる。ピントは長い耳をピンと伸ばしながら待機する。


『煙玉は残り僅か……でも、もう少しで仲間が脱出できる……』


 カマイタチのダイキチは両手の大鎌を構えながら独り言を呟く。


『そろそろ、もう少し……!』


 と、ダイキチが口にしたその途端。煙幕の一部が妙な動きを見せた。


『よっしゃ! 今だーっ!!』


 ダイキチは鎌を振り回して斬撃を飛ばす。ピントは両手の魔法陣から魔法弾を放ち、ゴウカは火炎魔法を何発も繰り出していく。


 斬撃、魔法弾、炎による弾幕が相手リトルナイトの群れへと飛んでいく。


『うわーっ!?』


『何だ!?』


『おい攻撃受けてるぞ!』


 攻撃の雨が降り注いだ煙幕の中から叫び声が聞こえてくる。悲鳴や怒号により騒がしくなる。


『ぐえっ!? 何すんだお前!』


『俺じゃねーっつーの!』


『テメェ何すんだボケェ!』


 状況が掴めない一部リトルナイトがパニックを起こし、味方同士で小競り合いが発生したようだ。


 ピント達の攻撃の影響により煙はさらに晴れていき、次第に全貌が明らかになる。


『結構残ったね、煙』


『仲間があの煙の中で追い煙玉を投げ込んでたんだよ。お陰で奇襲は成功したし、リトルナイトは粗方片付いた感じかな!』


 浮遊型リトルナイトの大群はほぼ壊滅状態、自我のあるリトルナイトもピント達の攻撃により大怪我。

 もはや無事であるリトルナイトを探す方が難しいだろう。


『相手はまだパニック状態みたい! この騒ぎに乗じて残りも片付けちゃって、すぐに脱出しようかね〜!』


『うん! ダイキチ、頑張ろうね!』


『へへへ……センスのいいピントくんはノリが良くていいねぇ、対するベテラン様と来たら……』


『ほざけ。無駄口叩いてないで身体動かせ』


『はいはーい』


 ダイキチは軽く返事をすると、先陣を切って相手リトルナイトの群れへと突撃した。


『俺達も後に続くぞ』


『おーっ!』


 ピントとゴウカもダイキチの後に続いて駆け出し、敵陣へ乗り込んだ。




『そらよっ!』


 カマイタチのダイキチは両腕の大きな鎌を構えながら回転し、相手リトルナイトへと突撃した。


『ぎゃあっ!?』


『誰か助け……デエッ!?』


 鎌の嵐にまともに立ち向かえず、攻撃に巻き込まれた相手リトルナイトは次々と脱落していく。


『おらっ!』


『ヴッ……!』


 ゴウカは鎧に魔力を込めて身を固めつつ、炎を纏った拳で相手を殴りつけていく。チームワークの欠片もない相手を、ゴウカは冷静に対処していく。


『それーっ!』


 ピントは大きな脚で相手リトルナイトをまとめて蹴飛ばし、魔法陣で防御しつつ魔法弾で反撃する、


『くっ……! ペットが調子乗ってんじゃねぇぞ!』


 どうやら相手リトルナイトの中にも普通の武器を持つ物がいたらしい。

 黒い鎧のリトルナイトは両腕を前方へと突き出すと、突き出した両手から巨大な魔法弾を発射した。


 巨大な魔法弾はピント目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。


『よっ!』


 ピントはその場から高く飛び上がることで躱し、空中で出した魔法陣を足場にして相手リトルナイトのいる方へと方向転換。


『うわっ!? こっち来……!』


『やぁっ!』


『!?』


 足場で加速したピントの飛び蹴りが黒鎧のリトルナイトに炸裂。

 攻撃をモロに受けたリトルナイトはその場から派手に吹き飛んで倒れ、そのまま動かなくなった。




 混乱状態の相手を順調に片付けていくピント達。そんな中、相手リトルナイトの重装備リーダーと、ツールだらけリトルナイトのジッパーは大慌てで前線から逃げていく。


『まずいまずいまずい!』


 前線が混乱する中、重装備リトルナイトのリーダーは壁際に到達し、外へ逃げようと必死に壁を触っている。


『無理だってリーダー! 俺が設置したフィールドと同じでリトルナイトは絶対に出られない仕様になってるから!』


『じゃあ出られるよう何とかしろ!』


『するけどその前に一言言わせろ副リーダー!』


 ジッパーは不機嫌そうに怒鳴り、リーダーの方を向いた。


『何で相手を追い詰めた時にエフェクト弾で一気に潰さなかったんだよ! 相手に勘付かれる前に撃っておけば色々とやりやすくなってた筈なのに!』


『ぐっ……!』


 ジッパーの正論にリーダーは口を噤む。


『副リーダーってば何やかんやでこっちが優位だったから油断してたよね!?』


『いや、あれはハリボテの軍団だと悟られないようにだな……』


『絶対違うね! お前は感情を……! 敵討ち優先で動いたんだ! 相手を辱めることを目的にしたからあんなにもたついたんだ! そんなんだからお前は永遠に副リーダーなんだよ!』


『ぐっ……そうだよ! 俺はあの時感情優先で動いたんだ! だから想定より時間が掛かって想定外の事態が発生した! 今回は全部俺のせいだ!』


『反省したならいいよ! そうやってすぐ反省できるところはいいと思う!』


『ありがとよ!』


 喧嘩したかと思えばあっという間に仲直り。リーダーとジッパーは改めて冷静に話し合いを再開する。


『……で、このフィールドからどうやって出る?』


『片方の電源を切ろう』


 ジッパーは手のツールを見せながら話を続ける。


『電源が付いてないリトルナイトはフィールドから出し入れできた筈。片方が電源切って、電源切れた仲間を向こうへ投げ込め……ば……』


 と、そこまで言ったところでジッパーは急に言葉を詰まらせる。


『ジッパー、どうした?』


『リーダー……う、後ろ……』


『……!』


 ジッパーの言葉を聞いたリーダーは慌てて振り返る。



『おい貴様ら……何をぶつくさ言うておる……!』



『げっ!?』


 リーダーの後方にいたのは、ドラゴンを模した赤い鎧の大柄なリトルナイト。


『お、お前は……!』


 リトルナイトリーダーの目の前に現れたのは、ジッパーの手によってバラバラにされた筈のカイエンだった。


 そんなカイエンの後方には忍者姿のリトルナイトの姿が。


『貴様があのリトルナイト共のリーダーかぁ……!』


『や、やば……喧嘩に時間かけ過ぎた……かも……!』


『なっ……何故!? お前はバラバラにした筈……!』


『そこの忍者が助けてくれてのう……』


 カイエンの地響きに近い声色に、ジッパーとリーダーは思わず後方へと後退りする。


『はっ!』


 壁際で2人並んだところで、カイエンの後方で待機していた忍者リトルナイトが素早く動いた。

 忍者は腕から頑丈そうな鎖を打ち込み、リーダーとジッパーの脚に絡ませて動きを止めた。


『うわっ!?』


『これ以上無駄に足掻いても恥をかくだけ……神妙にいたせ』


『くそっ……!』


 忍者に文字通り足止めされ、2人は顔を歪ませる。


『クロカゼご苦労。で、貴様ら……ワシに何か言うことあるのではないか?』


 カイエンは恐ろしい形相のまま自身の尻尾を外す。外した尻尾はその場で伸びて鞭のようにしなる。


『あ……えっと……』


『い、言うことだぁ……!?』


 ジッパーはしどろもどろで頼りにならない。隣のリーダーも先程の威厳はすっかり消え去り、カイエン相手にビビり散らしている。


『貴様ぁ……! 群れてる時は生意気なこと抜かしとったのに、仲間が残りわずかになった途端弱腰になるとは……! 情けないにも程がある!!』


『ヒィッ!?』


『やば……』


 カイエンの覇気のある怒声に、リーダーはすっかり繊維喪失してしまっている。

 隣のジッパーも縮こまり、蚊の鳴くような声でボソリと呟くことしかできない。


『挙げ句の果てに仲間を見捨てて逃走……! 大将の風上にも置けん愚か者め!』


 カイエンは目の前のリーダーを睨みつけ、巨大な鞭を頭上で大きく振り回した。ブオンブオンと凄まじい音と共に鞭が回り、回転する毎に速度が上がっていく。


『あ……その……』


『ご、ごめ……』



『大将なら……! 例え窮地だろうが、大将らしく最後まで奮闘せぇ!!』



 そう一言叫んだカイエンは、振り回した巨大な鞭をリーダーとジッパー目掛けて全力で振り回した。


『!?』


 とんでもない速度の鞭はリーダーとジッパーに見事命中。


 リーダーとジッパーは魔力を込めた腕で防御したものの、鞭の回転から生み出された恐ろしい破壊力によりパーツが腕ごと粉砕。

 重装備で守られたリーダーですら致命傷を受け、頑丈なパーツが大破してしまった。


『……!』


 リーダーとジッパーは砕けたパーツを散らしながら壁の向こう側まで吹き飛ばされたのだった。

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