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34話 意外な助太刀

 謎のリトルナイトの群れにより袋小路に追い込まれ、カイエンがバラバラに解体されてしまった。


 ピント達が窮地に陥る中、かつてピント達が戦った初心者狩りリトルナイトのカマイタチ『ダイキチ』が突如乱入したのだった。


『俺は通りすがりの一般リトルナイト。騒がしい気配を感じたんでちょっと見学しに来たんだよ』


(カマイタチのダイキチ……まさかこんな所で再会するとは……コイツ、一体何が目的なんだ……?)


 ゴウカが訝しむ中、ダイキチは自然に背後に手を回し、ピント達に向けてサムズアップをする。


(……まさか、俺達の味方をするつもりか?)


 なんて考えている間に、ダイキチは背後に手を回す。

 ダイキチが背後に回した手の中には小さな玉が2つ握られていた。ゴウカは不審に思いながらも、ダイキチから玉をそっと受け取った。


(これは……エフェクト弾を全て防げるバリアじゃないか)


 今のゴウカ達にとって非常に助かるアイテムだった。ゴウカはバリアの1つをこっそりピントに手渡す。


「何これ? この玉どう使うの?」


「魔力を込めるだけで発動するエフェクトバリアだ。殆どのエフェクトをこれで防げる筈だ』


『へぇ〜』


 金属片の裏でゴウカらピントと小声でやり取りしてるその間も、ダイキチは調子を崩さず相手に呑気に話を投げかける。


『ねえ、この集まりって追い剥ぎ集団か何か? さっきリトルナイト1体バラバラにしてたよね?』


『これは追い剥ぎではない! 部外者は黙ってもらおうか! それとも、そこの改造リトルナイトと共にバラバラにされたいのか……?』


『おっと、変なこと考えるのはよしといた方がいいよ』


 相手は一斉に武器を構えるが、ダイキチは特に怯えることなく呑気に相手を見やると、口の端を吊り上げ相手に一言告げた。


『こっちには君達のした一部始終を録画した映像があるんだからね』


『何……?』


『イマドキのリトルアイは優秀でね、俺の見た映像をリトルアイ本体に保存しておくことができるんだよね』


 ダイキチは自身の目元を指でトントンとわざとらしく指し示す。


『俺さ、遠くから君達のしてたことずーっと見てたんだよ。この子達を袋小路に追い込んで、仲間の1人をバラバラにしたところまでぜーんぶ』


『何だと……!?』


『友達から聞いたけど、リトルナイトをコアが露出するまでバラバラに解体するのは違法らしいね〜。こんな情報が警察にバレたらどうなっちゃうかなぁ〜?』


 ここまで言ったところで、相手リトルナイトのリーダーはようやく事態が飲み込めたらしい。リーダーは目を大きく見開く。


『お前まさか……この俺達を脅しているのか!?』


『うん。俺の相棒はいつでも警察に駆け込める状況なんだよね。この映像を見せたら、君達とそのご主人様はどうなるだろうねぇ〜?』


 ダイキチはニヤリと笑い、鋭い歯をギラつかせる。


『……いや、俺達は改造リトルナイトを捕まえただけだ。何もやましいことはない』


『そうなんだ。じゃあなおのこと急いで警察行った方がいいかな? 相手が改造リトルナイトだったら君達はお咎め無し! だけど、もし間違いならば……?』


『…………』


 ダイキチの提案に相手のリーダーリトルナイトは黙り込んだ。


 もしピント達が一般リトルナイトならば、ピント達を襲ったリトルナイト達はもちろんのこと、指示を出したであろうリトルナイトの主人は重いペナルティを受けることになる。


 だがそれ以前に彼らには、警察に駆け込まれたら不都合な何かがあるようだ。


『えーっと、あの……』


 現にツールまみれのリトルナイトのジッパーは慌ただしく手を動かし、挙動不審になっている。


『あ、あの……その……えっと……』


『……ジッパー、俺が話すから黙れ』


 このまま放置したらジッパーが口を滑らせると判断したのだろう。

 リーダーはジッパーの口に手を押し当ててこれ以上言葉が出ないよう牽制しつつ、ダイキチに向かって静かに語り始めた。


『……警察に駆け込むのはやめてくれ。俺達はコイツらが改造リトルナイトかどうか確認するだけで、危害を加えるつもりは一切ない』


『ほぉ……もしかして、何か訳ありな感じ?』


『ああ、少しな……少なくとも、白いカラスのリトルナイトは改造なんだ。アイツらはそいつの仲間だったから拘束した、ただそれだけだ』


『なるほど……あーそうそう、このフィールドに入った途端、俺の相棒が持ってるリトルアイとの通信が途絶えちゃったんだけど……』


『…………』


『多分だけだ、このまま放置してたら俺の相棒が心配すると思うんだよね……あいつ心配症だから、もしかしたら警察に駆け込んじゃうかも』


『……ジッパー、通信妨害を解除しろ』


『えっ、でも…………うん、分かった……』


 リーダーは部下に対して即座に指示を出し、通信妨害を解除させた。


『じゃ、通信が解除されたところで……とりあえず、詳しい事情について尋ねてもいいかな? もしかしたら力になれるかもだからさ』


『……分かった、出来るだけ教える。だが、お前の背後にいるやつは改造の疑いがあるリトルナイトだ』


『……さっきから何の抵抗もしてないけど、ホントに?』


『フィールドの効果で武器の類を無効化してるからだ。だが、それでもまだ不安が残る。奴らから武器や防具を取って最低限無力化させたい』


『うーん……ま、それもそうか。武器と防具を外すくらいなら大丈夫でしょ。ってことで君達』


 ダイキチは振り返ってゴウカ達に視線を向ける。


『一旦武器を外してもらっていいかな?』


『あ、ああ……分かった……』


(コイツ……雑な話術だけで相手より優位に立ちやがった……)


 短時間で場を取り仕切るまでになったダイキチに、ゴウカは呆れながらも感心する。


(……あの程度の話術に騙される相手も相手だな)


 同時にゴウカは、呆気なく騙され下手に回った相手に対して、そしてそんな相手に追い込まれた自分に対しても呆れ果ててため息をついた。



『ほら2人とも! 俺も手伝うからまずは武器外して!』


『分かった分かった……』


『えーっと、腕輪と……あ、先に脚の方がいいかな?』


『どっちでもいいから』


 ダイキチに促され、ピントとゴウカは自身の装備に手をつけ始めた。


『ねえ、僕の脚って簡単に取れるの?』


『ああ、それは多分だがこれを……』


『ストップ』


 ゴウカはピントの装備に手を触れようとするが、それをダイキチの小声によって止められる。


『もう大丈夫。後は外す真似だけしてりゃいいから』


『何?』


『もう時間稼ぎは終わったってこと! いやぁ、そこそこの話術しか持たない俺でも奴らの相手をするのはとびきり簡単だった!』


 ダイキチはゴウカ達にこっそり告げると、リュックから何かを取り外しながらリトルナイトの群れに向き直った。


『そうだ! 改造リトルナイト対策として、皆さんは念の為に俺の持ってたこのアイテムをご使用くださーい!』


『えっ?』


 ダイキチは大きな道具を相手リトルナイトの群れへと投げ込む。相手はダイキチの投げ込んだアイテムを特に警戒せず凝視する。


『……卵?』


『いや、あれは恐らく煙玉……』


 リーダーが呟いたその瞬間、ダイキチの手によって空中に投げ込まれた煙玉は突然爆発した。


『うわーっ!?』


『前が見えない!』


 相手リトルナイトの群れはあっという間に白い煙で覆われ、身動きがとれなくなったようだ。


『随分とアホな連中だなぁ……ほら、2人とも早く立って! 反撃の支度始めて!』


『反撃するの? でも、カイエンが相手に持ってかれてて……』


『大丈夫! 今、俺の仲間がアイツらから仲間取り返してる最中だから! 仲間奪い返した後は全力で反撃するよ!』


『でも僕らの武器は使えないよ?』


『大丈夫! 時間稼ぎしてる時にちょっとした細工してもらったんだよね。まあ、本当ならフィールド何とかして全力で逃走する予定だったんだけど、このフィールドが頑固らしくて中々剥がれなくて……』


 呑気に質問をするピントに言葉を返しつつ、ダイキチは両手から大鎌を出して攻撃の支度をする。


 そんな中、ゴウカは支度を整えつつダイキチに視線を向ける。


『お前……俺達を助けてくれるのか?』


『まあ、色々あってね。にしても……あんな連中の罠にかかった方もかかった方だよ。そのつめの甘さがあるから、俺の死んだフリも見過ごすんじゃないの?』


『くっ……お前だってピントの口車に乗せられてキレたクセに……!』


『残念でした〜、あれも俺達の作戦だったんで』


『作戦だと……?』


『あの狼野郎に負け星付けるのが目的だったんだよね。相手は片方ベテランだから、俺の死んだフリからのノロイも避けられるだろうと思ったのに……』


 ダイキチは怪訝そうな目をゴウカに向ける。


『まさかのベテランがやられて、初心者の方が残るんだから俺は内心ヒヤヒヤしたよ。ま、結果的にその初心者くんがあの狼を倒してくれたから良かったけども』


『くっ……!』

 

 ゴウカは反論するもダイキチに言い負けてしまい、渋い顔をする。


『あっ、ほら! 周り見て!』


『あっ、周りにまたあの光が出てる』


 光の網に囲まれたフィールドの内側に、新たに別の光が伸びて周囲を囲む。


『さっきみたいにネットに囲まれちゃった』


『フィールドの中にフィールド置いたんだよ。新しく内側に設置したフィールドのルールが適用されるからね』


『フィールドの効果を上書きしたのか』


『その通り! 因みにこのフィールドではフィールドバトルのルールが適用されるようになってるよ』


『フィールドバトル……ということは……』


 ダイキチの言葉を聞いたゴウカは手に力を込めると、手元から炎魔法を発生させた。


『俺達の武器が使えるようになってる』


『ホント!?』


 魔法を使用するゴウカを見たピントは両手に魔力を込めた。ピントの両手から魔法陣が現れた。


『おぉ〜! ホントだ〜!』


『ついでにエフェクト武器の使用は禁止にしてくれたみたいだよ。だからほぼ一方的に倒せるんじゃない? まあ、君達の仲間を助け出してからじゃないと動き出せないけど……』


『なら、カイエンを救出できたら即座に攻撃に移らなくてはな』


『そーいうこと。さて!お喋りはここまでにして……』


『ああ、ここから反撃開始といこうか』


『急いでカエのところに戻らないと! 頑張るぞ〜!』


 ピントとゴウカは未だに煙で充満する前方を見据え、自身の武器を構えたのだった。

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