32話 罠にかかったリトルナイト達
カエ達が結界に閉じ込められる数分前……
カエ達が不良と遭遇したその時。相手と揉めそうな雰囲気を察知したピントは、鞄の中から外の様子を伺いながら静かに待機していた。
『じーっ……』
ピントは長い耳を不良達に向け、何か起こったらすぐに動けるよう身構える。
『ククク……!』
『ん?』
不良達のいる方角と反対方向からリトルナイトの笑い声が聞こえてきた。ピントは鞄から少し頭を出し、声のした薄暗い路地のある方角に顔を向ける。
『あっ!』
ピントの視線の先にいたのは、妙な装置を構える迷彩柄のリトルナイトだった。
『何アレ?』
『何じゃあれは……! まさか隠し撮りではあるまいな!?』
カエの隣、スミの鞄から身を乗り出していたカイエンはピントと同じ方角を向き、迷彩柄のリトルナイトに怒りの形相を向けている。
『おいピント、ワシらであの不審なリトルナイトを追いかけるぞ!』
『えっ?』
ピントが反応し切る前に、図体の大きなカイエンはピントの首根っこを掴んで鞄から引っ張り出すと鞄から勢いよく飛び出した。
『ふんっ!』
『うわっ!?』
ピントを掴んだカイエンはコンクリートの地面に豪快に着地すると、ピント片手に迷彩柄のリトルナイトを追いかけ始めた。
『待て貴様ー!』
『えーっ!? ちょっと待ってよ!』
掴まれたままのピントは慌ててカイエンの腕を振り払い、自分の脚で走りだす。
『カイエーン! 待ってー!』
ピントは全力で走りドラゴン鎧のカイエンを追いかける。
『カエ達に内緒で飛び出して大丈夫!? それにあんな変なの追いかけるのって……』
『安心せえ! ハクヤがワシらを視認してから何処かへと飛び去るのを見た! 恐らく助けを呼びに行った筈じゃ!』
カイエンはそう豪語しながら不審リトルナイトを追いかけて狭い路地裏へと侵入する。
『……ん?』
ピントも慌てて追いかける中、ピント達の背後から新たなリトルナイトの気配が。
『ピント、カイエン、俺だ』
『あっ、ゴウカ!』
ピント達を追いかけていたのはフレアのリトルナイトのゴウカだった。
『フレアに俺達が席を外すことを手短に告げておいた。あの不良相手ならフレア1人で十分だ』
『ゴウカありがと!』
『感謝はいい』
『あっ、でも……フレアは大丈夫として、カエ達は大丈夫かな?』
『心配するな、フレアだけで不良は始末できる。きっとあの不良達は最低でも全治一カ月……いや、魔法治療もあれば一週間で済むか』
『フレア残してって本当に大丈夫?』
『大丈夫だ』
別の心配事が生まれ、現場に不安な空気が生まれる。
『それよりも今はあの不審リトルナイトの始末が先だ。ピント、気を抜くなよ』
『えっと……うん!』
ゴウカの言葉にピントはとりあえず頷き、改めて不審リトルナイトの追跡を開始した。
『そこのお前! 待たんかーっ!』
『へへっ……!』
『あいつ……! 追われているというのに不敵な笑みを浮かべおって……!』
逃走を続ける不審リトルナイトの立ち振る舞いが癪に触ったのか、カイエンは怒りを露わにする。
『待たんかこのっ!』
カイエンはその辺に落ちていた大きなネジを拾い上げ、目の前を走る不審リトルナイトの胴体を目掛けて全力で放り投げた。
『っぶな!?』
そこそこの速度で飛んでくるネジを、不審リトルナイトは咄嗟に避けて躱す。
不審リトルナイトはいつのまに手放したのか、謎の装置は既に所持していなかった。
『くっ、ちょこまかと逃げ回りおって……!』
『あの子、持ってた機械をどこにやったんだろうね』
『そんなことどうでもいい! ピント! 今はとにかく犯人の確保が先じゃ!』
『何の罪を犯したかも分からないのに犯人扱いしてるの?』
『十中八九盗撮に決まっておろうが!!』
ピント達は全力で走るものの、最低限の軽装で身を包んだ不審リトルナイトはとても素早いのか、不審リトルナイトに中々追いつけない。
『くそっ……! ピント! その脚で全力で飛び跳ねて犯人を捕まえんか!』
『えー、こんな狭い場所で全力で飛んだら壁にぶつかっちゃうよ』
『そこは上手く調整せぇ!』
『ピントの言う通りだカイエン。ここで失敗してピントが怪我したら、追いかける人数が減って不利になるぞ』
『そんな悠長なこと言うとる場合か! ゴウカ貴様! やる気はあるんか!?』
『まずは落ち着け』
『スミが盗撮されたかもしれんというのに! こんな場面で落ち着いてられるか!』
そんな言い争いをしてる間も、不審リトルナイトは慣れた足取りで路地裏を駆け抜けていく。
やがて不審リトルナイトは突き当たりに追い詰められた。
『よーやっと追い詰めた! もう逃げ場はない! 観念せい!』
『こっちの台詞だバーカ!』
カイエンの怒声に対し、不審リトルナイトは生意気な返事をしながら近場にある扉の前へと駆け寄った。
『じゃあなっ!』
不審リトルナイトは人間サイズの扉の中に取り付けられていたリトルナイトサイズの扉を開け、その場からそそくさと退散してしまった。
『あいつ他人の敷地内に入りおった……! ゴウカ! ピント! ワシらも後を追うぞっ!』
『え〜? 流石にこれを追いかけるのはまずいんじゃないの?』
『俺もピントに同意だ。恐らくだが、あの扉の先は罠な気がする。これ以上深追いするのはやめておこう』
『ぐぅう……!』
『カイエン唸るな。すぐにみんなの所へと戻……ピント、どうした?』
引き返そうとしたゴウカの隣で、ピントは耳をピンと立てて遠くを見つめている。
『んーとねー。よく分かんないけど、なんかこっちに来てるよ』
『人ではないのか……? ピント、どんな物か分かるか?』
『なんかブーン……って、聞いたことない妙な音する』
『……まずいな。ピント、カイエン、とりあえず来た道に向かって遮蔽物を構えろ』
『えっ?』
ゴウカは地面に落ちていた謎の金属片を持ち上げて両手で構え、その場で振り返る。カイエンとピントもゴウカに倣って振り返り、目の前の光景に思わず目を見開いた。
『なっ……なんじゃこれは!?』
『どう見ても僕らの敵じゃん……』
ピント達がやってきた方角からリトルナイトの群れが現れた。どのリトルナイトも宙に浮いており、手に持つ銃の銃口をピント達に向けている。
そんな相手の銃から一斉に「ジャキッ」と不穏な効果音が鳴る。それを聞いたピントとカイエンは慌ててゴウカの持つ金属片の影に隠れた。
『なんじゃあの大群は……!』
『みんな地面から浮いてる……』
『実際に浮いてるんだ。浮遊できる脚を装着したリトルナイトは足音が出ず静かに動ける。動物系の耳には僅かな電子音が聞こえるらしいがな……』
ゴウカは相手リトルナイトの脚を見つめながら話を続ける。
『多分だが奴らは、足音を消して俺達の後をこっそり追ってたんだろうな』
『何!? コイツら、不審者を追うワシらの後を追いかけてたというのか!?』
『そうだ。にしても、無闇に追いかけたのは迂闊だったな……』
ゴウカがそう語る中、ピント達のいる行き止まりの通路にも変化が起こる。
『なんか周りが光ってる』
『これは……』
通路の四隅から青色の光が棒状に伸びたかと思うと、棒と棒を繋ぐようにネットのような光が発生。
細かいネットは四方八方を囲み、リトルナイト達を包囲。ピント達を完全に取り囲んでしまった。
『囲まれちゃった』
『これはリトルナイトフィールドか……!? なっ!?』
カイエンは突如現れたネットの壁に目を向け、ネットの壁に表示された文字に驚き目を見開いた。
『エフェクトバトル!?』
『あ、壁に出てるね。これってどういう意味?』
『早い話、オモチャの武器しか使用できんバトルじゃ! ワシらの武器は一切使えん!』
『えーっ!? 僕のキック使えないの!?』
『当然使えん……! ゴウカの魔法も、ワシの武器も使えん……! そして恐らく、相手の持つ銃はエフェクトバトル用の武器……』
『あの武器から出てくるのはエフェクト弾、当たっても痛くはない。だが、当たりすぎるとリトルナイトの機能が停止する、つまり行動不能になるわけだ』
『そんなぁ!?』
ピント達が話し合っている間にも、浮遊型リトルナイトはピント達の元へとじわりじわりと距離を詰めてくる。
『じゃあ急いでフィールドから出ようよ!』
『ピント、無理だ。フィールドの壁に脱走禁止のマークが浮かんでいる。リトルナイトが勝手にリングアウトできない仕様になっているようだ』
『仮に強引に出ようとしても、身体が拒絶するからどう足掻いても出られん……!』
『逃げ場ないじゃん!』
ゴウカとカイエンの説明にピントは不満の声を上げる。
『僕らここから出られないの……?』
『無理じゃ……このフィールドを立ち上げた者が操作せん限り、どう頑張っても出られん……!』
『……完全に嵌められたな。あの不審な奴の狙いは恐らく、追いかけてきた俺達を追い詰めることだったんだろうな』
ピント達の前には、無駄に寡黙な浮遊型リトルナイトの群れ。
結構な数がいるようだが、追い討ちをかけるかのように遠くから複数のリトルナイトの足音が聞こえてきた。
足音は次第に大きくなっていく。どうやら足音の主達はこちらに向かってくるようだ。
『どうやら更に増援が来てるようだな……』
フィールドに閉じ込められ、ピント達の武器は封じられた。そんなピント達の目の前には、明らかに敵対的なリトルナイトの群れ。
『これってもしかして……僕達ピンチ?』




