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30話 リトルナイトカフェ

 ゴーレム部を見学した次の日。


 リトルナイト倶楽部の活動再開日だが、部室を荒らされたばかり。なのでしばらくの間は野外で活動するとのことだ。


「ねぇねぇトールちゃん」


「スミさん、どうしたの」


「今日のリトルナイト倶楽部は何するの〜?」


「少なくとも暴力はない」


「そりゃそうだろ」


 今は第3グラウンドで体育の授業中。魔力を体内に循環させる目的で、飛行棒を手にグラウンドを周りながらジャンプして空を飛ぶ。

 因みに今現在、リトルナイトは学園で待機中だ。


 私を含む魔女のグループは余裕で空を飛ぶが、人間の同級生は飛行棒での飛行はしんどそうで、時折地面に降りてはグラウンドの周りをゆっくり歩いていた。


 だが、私達魔女なら余裕で飛んでられる。飛行棒を片手に空を飛び、グラウンドの上空でのんびり会話をしていた。


 今の話題は放課後の野外活動についてだ。


「今回の野外活動はとても平和。リトルナイトカフェに行こうと思う」


「リトルナイトカフェ?」


「カエ知らないのか? 前に駅の近くにできた、文字通りリトルナイトと気軽に入れるカフェだよ」


「へぇ〜、前に行ったハンバーガー屋さんみたいな?」


「それよりももっと凄い場所。なんと私達の席とは別にリトルナイト専用の席もあるんだよ」


「ハンバーガー屋の席は一緒になってたけど、このカフェはしっかり分けられてるんだよ」


「へぇ〜、楽しそうだね」


「お値段もリーズナブルで学生さんにも人気。更になんとカフェのクーポン持ってる。日付は今日まで」


「それ消費する為だったのかよ……まあそれでも、リトルナイトカフェに行くのは大賛成だな。クーポンあるなら尚更行かないとな!」


「私も賛成、是非ともリトルナイトカフェには行ってみたいね」


「ありがとう。これでクーポンも安らかに成仏できると思う」


「そのクーポンは化けて出た物なのか?」


「そんなわけない。フレアさん何言ってるの」


「分かってるっての、物の例えだよ。言った私も意味わかんねーけども」


 リトルナイトと入れるカフェはさぞ楽しいことだろう。私達は同意し、放課後にリトルナイトカフェに向かうことになった。




「うわぁ、アイツら余裕ぶっこいて空飛びながら会話してやがる……」


 私達が呑気に会話をしている中、隣のグラウンドで飛行棒を手に地上を走る男子の会話が聞こえてくる。


「はぁ、魔女はいいよな〜。何もしなくても馬鹿みてーな力出せるし……」


「生きてるだけで怪力出せるとかゴリラかよ」


「お? ゴリラに喧嘩売る命知らずの声が聞こえるなぁ?」


「うわっ! ゴーカイに聞かれてやがった!」


「違いまーす! 俺達は魔女を称賛していただけでーす!」


 グラウンドへとじわじわと迫るフレアに対して男子グループは慌てて飛んで逃げるものの、高度も速度も大したことはない。


「ははは! 逃げ惑え魔法使い!」


「ひでー! 魔法使いいじめだ!」


「暴力反対!」


 対するフレアも本気ではないので、ヤジを飛ばすだけで本気で追いかけようとはしない。




 そんなこんなであっという間に時は流れ、放課後……




 リトルナイトカフェに向かう為に、門の前にリトルナイト倶楽部の部員3名+スミが集まった。


 クーポンを余らせていたトールがスミを誘い、スミは「暇だし楽しそうだから行きたい」とのことで同意。スミも一緒に行くことになったのだった。


「リトルナイト倶楽部の時間でございます」


 部室は荒らされたものの、これから皆んなでリトルナイトカフェに向かうということでトールは上機嫌。


「わーい、楽しみ〜」


「だね、どんなカフェだろうね」


「ね〜」


「カエとスミは相変わらずのんびりしてんな……」


「カエはマイペース、スミはのんびり」


 フレアには半ば呆れられ、トールからは細かくカテゴライズされた。


『カフェ楽しみだね』


『これから向かうカフェの名はヴァルハラ。店内にはリトルファイトできる環境もあり、まさにリトルナイト好きの為のカフェです。私も主とよく通っています』


『俺も行ったことはある。あの店のマカロンは美味いぞ』


『ゴウカ、マカロンって何?』


 ピントはハクヤとゴウカと共に呑気にカフェについて話し合っている。


『ヴァルハラ……ワシらリトルナイトからしたら、なんとも不吉な名じゃ……』


 そんないつものメンバーに新たにゴツいリトルナイトが加わっている。スミのリトルナイトであるカイエンだ。


『大丈夫だよカイエン、カフェなんだから死なない死なない』


『ピントは呑気だな。店長にその気は無くとも、カフェに来店する客は血気盛んかもしれないだろ』


『え〜、ゴウカってば考えすぎじゃない?』


『どうでしょうね……入店したら、死角に隠れていたリトルナイトに突撃されて胴体が真っ二つにされる可能性もゼロではありません』


『んなわけあるかぁ! 物騒にも程があるわ!』


『えー、ハクヤとゴウカってそんな危ないカフェに通ってたの?』


 リトルナイトはカフェの話題で盛り上がっているようだ。


「では、早速ホウキに乗って移動します。私について来て」


「分かった!」


 こうしてリトルナイトを連れた4名で空を飛び、ヴァルハラのある街に向かってホウキを飛ばし始めた。



「友達とリトルナイトカフェ……楽しみ」


 ホウキでの移動中。トールはとても上機嫌で、いつになくソワソワしている。


「なあカエ、思ったんだけどさ」


「何?」


「カエはスミとはどうやって友達になったんだ?」


「席が隣同士だったのもあるけど、決め手はゴーレムだよ」


「そ〜そ〜、ケータイでカエちゃんの家にあるゴーレム見してもらった〜すごく手入れされてた〜」


 隣席のスミとは気が合いそうで何となく話しかけたが、そんなスミはなんとゴーレム好きだった。

 どうやら自宅に観賞用ゴーレムを置いているらしく、私が携帯電話で見せた実家のゴーレムにスミはいたく感動していた。


「で、その流れでトールとスミもすぐに友達になったよね。お金持ち同士だから、お金持ちあるあるで盛り上がってすぐ仲良くなってたよ」


「金持ちあるある……へえ、スミも金持ちだったのか」


「そんなことないよ〜」


「そうか……じゃあスミに質問、スミの好きな食べ物は?」


「キャビア〜』


「やっぱ金持ちじゃねーか」


 なんやかんやで話は盛り上がり、気がつけば私達は街へと到着していた。


「カフェの近くに到着」


『ヴァルハラだ〜』


 私達は駐車場にある着陸スペースでホウキから降り、お目当てのカフェに向かう為に路地裏を歩いて移動する。

 平日だからか人通りは少ない。何とも趣のある薄暗い路地を4人で歩く。


「ねぇトール、カフェってどんな感じ?」


「とても綺麗な洋風のカフェ、内装もとてもオシャンティ」


「へぇ〜、ますます期待が高まるね」


 リトルナイトと入るカフェ、とても楽しみだ。


「確かクーポンはケーキセット割引だったな」


「まず入店してからゆっくり注文を考えよっか」


「そだね〜」


 私達はのんびり会話しながらリトルナイトカフェのヴァルハラに近付く。


 しかし、そんなカフェへ続く道の先に、いかにも不良な雰囲気を醸し出すチャラい学生の群れがたむろしていた。


(……あの学生達、私達を見てる?)


 私達を尻目に何やら会話をしている様子だ。物凄く嫌な予感がする。


(……とりあえず、気付かないフリして遠回りした方が良さそう……)


「ねえみんな、ちょっと……」


「ねえお姉さん達、ちょっといいかな?」


 気付かぬフリして進路変更しようとしたその時、不良の1人から声をかけられてしまった。


「……何ですか?」


「君達すごく可愛いね、ちょっと一緒にお茶しない?」


「お茶……?」


 まさかのナンパ。


 まさか耳を隠している魔法使いの群れに声を掛けるとは、なんて命知らずな不良なのだろう。


「なあ、俺達ともっと楽しいとこ行かね?」


「えっと……」


(学生さん早く気付いて……今話しかけている相手は魔女の群れだよ……!)


 この世においては不良の群れより、大きめの魔物を相手に肉弾戦を挑める魔女の群れの方が遥かに恐ろしい存在である。


 そんな魔女の群れと遭遇してしまった不良達の運命やいかに。

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