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29話 ゴーレムとピント

 坊主合戦で刻石先輩に勝利した後。


「いや〜凄かったなぁ〜! カエのゴーレム捌き!」


 ゴーレム部の見学を一通り終えた私達は部室を後にして、玄関へと続く廊下を私とフレアとトールの魔女3人+リトルナイト3体で歩いていた。


「カエ操るゴーレムが相手のゴーレムの上で逆さになって、そこからのヒップアタックは痺れたなぁ〜!」


「うん、私もフレアさんに同意。あの技は凄かった。カエさん流石」


『カエが操ったゴーレムは生きてるみたいだった! すごくかっこよかった!』


「いやぁ、それほどでも……」


 フレアとトール、そしてピントから純粋にゴーレムの腕を褒められ、私は素直に照れる。


「ゴーレムの扱いがあんなに上手いからこそ、カエのリトルナイト捌きも上手いのかな? 私もゴーレム操作の練習とかしてみようかな」


「フレア、もし真面目に練習するなら色々教えるよ」


「よっしゃ! プロから教えてもらえるなら百人力だな!」


「別にプロってわけじゃないよ」


「謙遜するなって! 折角なら私もカエと一緒にゴーレム部に入部しちゃおうかな〜」


「フレアさん……そんなこと言って、また先輩をからかいに……」


「もうしないって」


『いや、執念深いコイツならやりかねん』


「おい、ゴウカは私のことを何だと……トール?」


 フレアが話している途中でトールが唐突に立ち止まった。トールは無表情のまま辺りを見回している。


「トール、どうした?」


「……誰かに見られてた気がする」


「気のせいじゃないのか? まあ、リトルナイト倶楽部の部室を荒らされて少し警戒心が上がるのは分かるけどさ」


『呑気に構えている場合か。その部室荒らしが今この場で見ている可能性もあるだろ』


「大げさだって」


『フレア、自分が魔女だからと侮るな。魔女が相手ならまともな攻撃は通用しないと、過剰に攻撃するやつがこの世にはいるんだ』


「ゴウカの言う通り。魔女を恨んだ人が、魔女目掛けて車で突撃した事件があった」


 油断するフレアに対し、ゴウカとトールの2人は真面目な顔で反論する。


『魔女は軽傷だったそうだが、それでも一歩間違えば大怪我だったんだ。魔女だからと気を抜くな』


「分かったよ……」


 謎の視線がトールの気のせいだったとしても、今日のところは大事をとりホウキで真っ直ぐ家に帰ることになった。




『家に到着〜』


「よいしょ」


 ホウキで無事に帰宅した私は、いつものように家の庭へと着地した。

 私が地上に足を置くと、それを見たピントはすぐさま鞄からピョンと飛び出して地面へと降りた。


『カエ、今日のゴーレム捌きは見事だったね』


「ピントが来るまではずっとゴーレムいじってたからね」


『そうなんだ。ってことは、僕が来てからはずっと僕一筋?』


「そうなるね」


『えへへ〜』


 ピントは両手を後頭部に回し、分かりやすく喜んでいる。


「そうだ。家の庭にもゴーレムいるんだけど……ピント、会ってみる?」


『会ってみたい!』


「分かった。ちょっと待っててね」


 私は家の縁側に自分の荷物を置き、玄関内の靴箱の上に置かれていたゴーレムの操作石を4つ手に取り再び中庭へと戻る。


『おかえり〜』


「ただいま〜」


 中庭の縁側に座り脚をぶらぶらさせていたピントは地面に飛び降り、戻って来た私を歩いて出迎える。


『ゴーレムどこ?』


「これから呼び出すよ。見てて」


 私は両手に持った4つの操作石全てに魔力を通し、中庭の奥へと視線を向けた。


 すると、中庭の奥に設置されていた小屋から小型のゴーレムが列をなして姿を現した。

 ゴーレムは規則正しい動きでゾロゾロと歩き、私達の前で停止する。


『4人も出て来た!』


「多く動かすほど動きは単純にはなるけど、私は最大まで4体ゴーレムを動かせるよ」


『1人で大勢動かせるの? すごい!』


「実際に動かしてみせるよ。見てて」


 私は4体のゴーレムを操り、ジョウロやシャベルなどの庭道具をゴーレムに持って来させた。


『おぉ〜』


「簡単な動作ならできるし、大勢で重い物を持ち上げて運んだりできるよ」


『すごく便利だね。こんな大勢で来られたら、きっと相手のゴーレムは手も足も出ないね』


「それでも余裕で躱せるゴーレム使いはいるんだけどね。それにお爺ちゃんは8体余裕で動かせるから、2対1で押し負けるし」


『すごいなぁ』


 持ち込んだ庭道具を再び元の位置へと戻しに向かうゴーレムを、ピントは興味深そうに見つめる。


「ピント、1番前のゴーレムにはあまり近づかない方がいいよ」


『えっ、何で?』


 私がピントに注意するも手遅れだったようだ。荷物を運び終え、再び中庭へと戻って来た1番目のゴーレムがピントと鉢合わせてしまった。


「…………」


 ゴーレムは視線をずらしてピントを見ると、大きな腕を真っ直ぐピントの頭へと振り下ろした。


『わぶっ!?』


 ピントの頭から「ゴン!」という重い音が鳴り響く。かなり痛そうな音だ。


「ピント大丈夫!?」


 ピントは頭を抑えたまま後方へと倒れ込む。私は慌ててピントへと駆け寄った。


『いったぁ〜! 何するんだよ〜』


「多分だけど、ゴーレムがピントをモグラか何かと勘違いして殴りつけたんだと思う……」


『えぇ〜!?』


 私の説明に、ピントは納得いかないような不満の声を上げる。


「長く生きたゴーレムは、時折自我が芽生えたりするらしいんだよね。まだ10年そこらだから自我は薄いんだと思うけど……」


『僕モグラなんかじゃないのに』


「まあ、顔を覚えてもらえば……ピントも仲間として認識されれば、殴られることはなくなるんじゃない?」


『うーん……つまり、あの1番目ゴーレムに毎日会いに行けばいいんだよね?』


「そぅだね。挨拶するだけでも対応は変わってくると思うよ」


『分かった!』


 ピントはすっくと立ち上がると、その場で停止する1番目ゴーレムに殴られない距離まで近付いた。


『初めまして、僕ピント』


「そのゴーレムの名前はダイくんだよ」


『ダイくん、僕の名前はピントだよ。カエの家族だよ、よろしくね』


 この後ピントは、事あるごとにゴーレムの元へと移動しては熱心に自己紹介を繰り返したのであった。

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