27話 ゴーレム部へ再見学
リトルナイト倶楽部が発足した次の日に部室を荒らされ、しばらくは部室を使用できなくなった。
「リトルナイト倶楽部、大丈夫かな……」
「カエちゃん、これくらいのことでリトルナイト倶楽部はきっとダメにはならないよ」
教室に戻った後のこと。私がリトルナイト倶楽部を心配すると、隣の席に座ったスミはそんな私に励ますように返事をした。
「でも、今日の放課後は暇になっちゃったね。カエちゃん、放課後はどうするの?」
「今日はゴーレム部を見学する予定だったから、どちらにせよ暇にはならなかったよ。部室が荒らされたのは残念ではあるけど……」
「リトルナイト倶楽部と一緒にゴーレム部にも入るの? いいね〜」
「ゴーレム部はあまり活動しないとは聞いてたから、折角だからトールの作った部活動にも参加してみたんだよ。そういえばスミはどの部活動に入ったの?」
「探偵部だよ〜。私、小説の探偵さん好きだから〜」
「へぇ、そんな部活動あったんだ……その部活動って、実際に謎を解いたりするの?」
「うん! だから放課後になったらすぐに探偵部に行って、朝起きた『部室荒らし事件』について報告するつもり〜」
「えっ? まさかその事件を起こした犯人を探すつもり?」
「あ、犯人を見つけても晒し上げたりしないから安心してね〜。あと、事件についてはトールちゃんに許可を得てから探偵部にするよ〜」
どうやらスミは部室を荒らした犯人を探偵部に報告し、事件の解決を目指すつもりのようだ。
(……まあ、犯人の意図が分からない中でリトルナイト倶楽部を続行するより、少しでも荒らした理由が分かった方がいいよね……)
その日の放課後……
「じゃあ探偵部に行ってくるね〜」
「行ってらっしゃ〜い」
「ねえカエさん」
帰りのホームルームが終わったその瞬間、スミさんは即座に席から立ち上がり教室を後にした。
お昼休みの時にトールから許可を得られた『部室荒らし事件』の話を探偵部に報告する為だ。
そしてスミと入れ替わるかのようにトールが私の元へと駆けてきた。
「今日、カエさんはゴーレム部の見学しに行く日……で、合ってる?」
「うん、そうだけど……トール、どうしたの?」
「私も一緒にゴーレム部を見学したい」
「トールも行くんだ。いいね、一緒に行こっか」
「やった、楽しみ」
なんと今日のゴーレム部見学にトールも参加することに。なんとなく1人で見学し辛かったので、友達が来てくれるのは非常にありがたい。
「ピント〜、部活動見学しに行くよ」
『はーい!』
私は自分のロッカーを開け、ロッカーの中で犬のぬいぐるみと共に寛いでいたピントを回収した。
因みにリトルナイト用のロッカーは中に個人で持ち込んだ家具を置いておける。
ピントのロッカーにはタオルの敷物と机とテーブル、そしておもちゃ複数が置かれている。
「ハクヤ、おいで」
トールもロッカーを開けてリトルナイトを回収する。
そんなハクヤのロッカー内は超豪華、リトルナイト用の敷物に豪華なテーブルと椅子が置かれ、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の三種の神器まで揃っている。
そんな豪華なハクヤのロッカーに時々ピントも遊びに行くらしい。逆にハクヤがピントのロッカーに遊びに行くこともあるそうだ。
「じゃあ、改めてゴーレム部へ……」
「れっつごー」
「おーい! カエ!」
トールと共にゴーレム部に移動しようと教室から出たその時、偶然同じタイミングで隣のクラスから出てきたフレアに声をかけられた。
『あ、フレアだ』
「フレア、どうしたの?」
「あ、トールもゴーレム部を見学しに行くのか?」
「うん。もしかしてフレアも?」
「そうそう! 昨日の話を聞いていたら私もちょっと気になってきてさ。私もゴーレム部の見学についてっていい?」
「勿論いいよ、一緒に行こうよ」
「よし!」
こうしてフレアも仲間に加わり、3人と3体でゴーレム部へと移動した。
「あ、若葉さんだ」
「オームラさん!」
道中で先を急ぐ若葉さんを発見。若葉さんは私達に気がついてその場で止まり、足元で歩いていたマンドラゴラは私達をじっと見上げる。
「と、同じクラスのハクギンさんと……」
「私はフレア・ゴーカイ、よろしく」
「よろしくお願いします! もしかして2人もゴーレム部に興味が……!?」
「いや、私はゴーレム部を見に来ただけ」
「私もただ純粋にゴーレム部が気になっただけだよ」
「興味を持ってくれるだけでもありがたいよ! 最近はロボットゴーレムばかりで、ゴーレムはあまり注目されないから……」
「ね〜。石坊主とか完全に老人の趣味扱いされるから話しづらいんだよね」
「そうなんだよ!」
若葉さんは私の話に共感する。
「僕の家に手のひらサイズの石坊主がいるんだけど、あいつの良さを誰にも理解されなくてさ」
「手のひらサイズもいいよね〜。若葉さんはその石坊主は育ててるの? それとも現状維持に近い状態?」
「育ててるよ! 小学生の頃に誕生日プレゼントに貰って、少しずつ成長してるんだ! 携帯の待ち受けにしてるんだけど……ほら、これだよ」
若葉さんは黄緑色の携帯を開き、待ち受け画面に映る鉢植えサイズのゴーレムを見せてくれた。
とても可愛らしいゴーレムの頭には、これまた可愛らしい松の木が育っている。
「盆栽型だ! 頭の松もゴーレムもバランス良く育っていい感じじゃん。かなり芸術点高いよ」
「ありがとう! まさかこの子の良さを分かってくれる人が身近にいるなんて……!」
私達がゴーレムで盛り上がる中、フレア達はその光景を笑顔で眺めていた。
「おぉ〜、ゴーレム好き同士で盛り上がってるな!」
『フレアもああいった落ち着いた趣味でも持ってみたらどうだ?』
「おいゴウカ、私がそんなお淑やかな趣味に興味を持たないことくらい分かってんだろ?」
「2人ともゴーレムに熱中してる、フレアとゴウカは相変わらず仲良さそう。ハクヤ、私達も負けてられない」
『我々は元から仲良しです。わざわざ勝負に乗るまでもございません』
『みんな楽しそうだね』
フレアとゴウカ、トールとハクヤが語り合い、ピントはそんな光景を眺めながら微笑んでいた。
そんなこんなで、目的地が同じである若葉さんも加わり4人+4体でゴーレム部へとやって来た。
「失礼しまーす」
「おっ! オームラと若葉、来てくれたんだな。他に新顔が2人も増えて賑やかだね」
ゴーレム部の部室に入ると、部員の1人が気付いて出迎えてくれた。
この先輩は昨日、私に気遣う言葉をかけてくれた心優しい先輩だ。
「私はカエからゴーレム部の話を聞いて、それで少し興味を持って見学だけ来てみたんです。なんか冷やかしみたいですいません」
「いやいや、興味持って来てくれただけでも嬉しいよ。俺は大海、みんな宜しく」
フレアは予め断りを入れるも、むしろ先輩は大歓迎の様子だ。そして先輩は私達を前に改めて自己紹介をしてくれた。
「とりあえず今は、部員全員外でゴーレムいじりをしてるよ。ゴーレムの手入れしたり、坊主合戦……つまりゴーレム同士のバトルをしてるよ」
「坊主合戦……! 私、それ見てみたいです!」
ゴーレム同士のバトルと聞いた途端、フレアがすぐさま食いついた。
「私も見たい」
「僕も気になります!」
「やっぱこういう派手なのが1番人気あるよな。よし、坊主合戦の場に案内しよう」
こうして、この場にいる新入生全員で坊主合戦を見学することになった。
外が森に囲まれたそこそこ広い庭に出てみると、中央でゴーレム同士を競わせている部員の姿があった。
「そこだ!」
「いけー! 押せ押せ!」
今は丁度試合中らしく、大地先輩の操る力士型の石坊主と、刻石部長の操る山型の大きなゴーレムが競い合っていた。
「おぉ〜! 小柄でも中々かっこいい!」
若葉さんはマンドラゴラを持ち上げ、仕切られた輪の中で動き回るゴーレムを楽しそうに眺めている。
「へぇ、あれが坊主合戦か。ゴーレムはそこまで大きくないんだな」
「もっと大きいゴーレムを使ったりすることはあるけど、基本的に膝辺りの大きさのゴーレムを使うことの方が多いよ。すぐに修復できるからね」
「そっか」
フレアは素っ気ない返事をしながらも、ゴーレム同士の戦いをじっと見つめている。
「……カエ、どれが部長?」
「右手側でゴーレムを戦わせているあの人がそうだよ」
「へぇ、あれが例の部長かぁ……」
「フレア……?」
どうやらフレアはゴーレムではなく部員を眺めていたらしい。フレアは刻石部長をじっと睨みつけている。
「フレア、大丈夫だからね。刻石先輩はもう……」
『あ、ゴーレムこけた』
フレアに訂正を告げようとしたその時、坊主合戦の戦況が大きく動いた。
大地先輩操る丸いゴーレムが、刻石先輩の操るゴーレムの大きな腕に薙ぎ倒された。
「しまった!」
丸いゴーレムは転がって場外へと飛び出していき、大地先輩は驚き声を上げている。
「うわっ! 力強いな……」
「とても乱暴。これぞ坊主合戦の醍醐味」
『素晴らしい試合でした』
フレアは転がるゴーレムを目の前にして驚き、トールとハクヤは目の前で繰り広げられた坊主合戦に大満足している様子だ。
そんな合戦を目に、大海先輩は楽しそうに頷く。
「やっぱ部長は強いな! みんな、せっかくだから坊主合戦を体験してみるか?」
「いいんですか!?」
「ほぉ……」
ここで大海先輩から坊主合戦体験を提案される。若葉さんは目を輝かせ、フレアは何か含みのある声を漏らす。
「ねえカエ」
「ん?」
「カエは坊主合戦はやったことあるんだよね? 折角なら参加してみたらどう?」
「私?」
「私もカエさんがゴーレム戦わせてるとこ見たい」
『私も興味があります』
フレアに坊主合戦の参加を促された。トールとハクヤも私の参加に乗り気な様子だ。
「いいよ。でも私はそれなりに戦えるから、対戦相手は経験者の方がいいかな」
「おっ! オームラさんは坊主合戦の経験者なのか! なら部員の誰かと戦った方がいいかな……」
「出来れば強い人でお願いします」
「強い人……なら、丁度いい相手いるじゃん」
フレアは坊主合戦が繰り広げられていた現場を見つめ、とある1人を指差した。
「カエ、折角なら部長と勝負してみたら?」




