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22話 ゴーレム部の見学

 前回のあらすじ。


 リトルナイトの所持が原因でゴーレム部部長である刻石先輩から入部を却下されたが、私の祖父がゴーレム職人の大村岩次郎であると知った途端に態度が急変した。


『あんなに慌てるなら、最初からあんな態度取らなかったら良かったのにね』


「まあ、うん……」


 私に対してあまり友好的でない態度を取っていた彼は今はすっかり大人しくなり、逆に体調不良を起こしてしまった。

 真っ青にして汗をダラダラ流す彼の姿はもはや可哀想であった。


「まあ、ゴーレム部に入部できるみたいだし、それはそれで良かったけれども……」


「いや、まだオームラへの謝罪が足りない。刻石は散々オームラを乏したんだ、奴にはそれ相応の報いが必要だ」


「報いって……まあ、今の刻石先輩ならすぐに謝罪してくれそうですけれども」


 なんて会話を部室の外でしていると、長い廊下を歩いて新たな新入生がやってきた。


 この廊下の先にはゴーレム部以外何もないので、どうやらあの新入生もゴーレム部が目当てのようだ。


「あ、オームラさん……だよね?」


「うん。若葉さんもゴーレム部の見学?」


「うん」


 若葉さんは私と同じクラスの同級生だ。優しい印象を持つ明るい茶髪の男子生徒で、彼の隣には使い魔であるマンドラゴラが立っていた。


『……緑色のダイコン?』


「あの子はマンドラゴラだよ、ピント。若葉さん、今ゴーレム部は取り込み中らしいから、見学まで少し時間かかるみたいだよ」


「そうなんだ……あの、ゴーレム部で何かあったの?」


『あ、僕が説明するよ。あのね、さっきはリトルナイトの持ち込みが原因でカエはゴーレム部に入れなかったんだよ』


「えっ? そんな厳しかったの……?」


『うん』


 ピントが事情を語り始めると、若葉さんは床にいるピントの前にしゃがみ込んで視線をピントに合わせた。


『でもね、カエがお話ししたら部長が弱腰になって「やっぱり入部していい」って言って、あと副部長の座も貰えることになったんだよ』


「オームラさん、一体どんな脅しをしたらそんな話に……」


「違うって。ピント、話を端折りすぎだよ」


 ピントの説明が簡潔すぎたせいで若葉さんが勘違いをしてしまった。あながち間違いではないが、私は副部長の座をしっかり断っている。


「私は別に脅したりなんかしてないよ。お爺ちゃんの話はしたけど……」


「お爺ちゃん?」


「おーい、見学の準備できたよ」


 脅しはしてないと若葉さんに釈明していると、ゴーレム部の部室から部員が顔を覗かせた。どうやら部室の準備が完了したらしい。


「あ、そっちの君も見学しに来たのかな?」


「あ、はい! ゴーレムに興味があって……」


「分かった。じゃあ2人まとめて入っておいで」


 私達は先輩に促され、ゴーレム部の部室に案内された。


「あ、君。オームラだったか?」


「はい?」


「あの……オームラはマジで何も悪くないからな。それだけは言っておく」


「あ、お気遣いいただきありがとうございます」


 私が入室する前に部員に呼び止められ、わざわざ謝罪までしてくれた。なんて優しい部員なのだろう。


「失礼します」


『石がいっぱいあるね』


 私達は改めて部室に入室した。室内には作りかけの小さな石像が置かれていたり、石組式ゴーレムの素材が隅に置かれていた。


「石像作られてる……!」


「こっちは石を組んでゴーレム作るところかな?」


「この部活動では様々な種類の小型ゴーレムを制作しています。毎日活動するわけではありませんが、部員の皆さんは意欲的に取り組んでいます」


「へぇ、結構本格的に……」


 部活動の説明に関心しながら、私は声の主である刻石先輩に顔を向け、想定外の光景に私は思わず固まってしまった。


『あれ? 刻石先輩、頭どうしたの?』


「ピント、頭じゃなくて頭髪だよ……」



 刻石先輩が坊主になっていた。



「あの……刻石先輩、頭髪はどうしたんですか……?」


「なんてことありませんよ。邪魔になったら散髪するなんて、よくあることですよね?」


「だからって部活動中にそんなバッサリいったんですか?」


 ここでふと、部員の発言を思い出した。


(オームラはマジで何も悪くないからな。それだけは言っておく)


 もしかするとあの部員は、このことについて謝罪を入れた可能性がある。


「えっ? オームラさんどういうこと? 先輩は元から坊主じゃなかったの?」


『さっき見た時は髪あったよ。あのね、あの人が刻石部長なんだよ。さっきまでカエをいじめてた人』


「えっ? オームラさんが脅したのはあの人?」


「脅してないよ」


「でも、部長で年上の筈なのに敬語使われてるけど……しかもわざわざ頭まで丸めるなんて……」


 相手の立ち振る舞いからそういう結論に繋がるのも仕方がないとは思う。だが私は断じて脅しはしていない。



「そうだ。外に作成したゴーレムがいるから、それも是非見てってくれ」


「そうそう! 特に刻石部長の作ったゴーレムはすごいよ!」


『刻石部長ノ祖父モ『ゴーレム職人』ダカラナ!』


「へぇ……!」


 と、ここで私はとある人物を思い出した。実家で時折出会った、刻石の苗字を持つ祖父の友人。


「あの……もしかして、刻石部長の祖父って刻石切こくせききりさんですか?」


「おっ? オームラさん部長の祖父を知ってるのか?」


「私の祖父が友達なんですよ」


「えっ」


 私の返事に、刻石先輩が過剰に反応した。


「刻石先輩、どうしたんですか?」


「オームラ。多分だが刻石はまだ、オームラの祖父が大村岩次郎かどうか曖昧だったんじゃないか?」


 固まる刻石先輩を前に、大地先輩は独自の推測を語り始めた。


「曖昧だった……と言うより、刻石がずっとオームラに祖父について詳しく説明を求めなかったところからして、刻石はオームラの祖父が大村岩次郎でないことを願ってたところがあったんだろうな」


「あー、思い返してみたら確かに……刻石先輩、私の祖父について全く触れてなかったような……」


「だが、オームラのあの一言でオームラの祖父が大村岩次郎だと確信に至ったんだろうな」


 大地先輩の推測をよそに、刻石先輩はギクシャクと身体を動かしながら私に視線を向ける。


「あの、オームラ様」


「……刻石先輩、様付けはやめてくれませんか?」


「あ、申し訳ございません。あの、つかのことお伺いしますが……オームラさんの祖父は『大村岩次郎』というお名前で間違いございませんか?」


「あ、はい。刻石先輩、祖父のことご存知だったんですね」


「……祖父は大村岩次郎の弟子なんです」


「そうだったんですか? 確かに酔っ払った切さんがよくそんなこと言ってたような……刻石先輩?」


 刻石先輩の顔が青を通り越して土気色に変色している。


『刻石先輩大丈夫?』


「……オームラさん」


 刻石先輩は私の前で即座に正座し、そのまま流れるように土下座の姿勢へと変化した。


「うわっ!? 刻石先輩!?」


「こっ、この度は……誠に申し訳ございませんでした……!」


 刻石先輩は頭を床に擦り付け、全力の謝罪を披露した。


「ようやく謝罪したか……カエへの謝罪はとりあえずそれで許してやる」


「大地、それはお前が決めることじゃないだろ。そもそもそんなこと言ってる場合じゃないだろ」


「部長、これは流石に擁護しきれないっすよ……」


『自業自得ダ』


 刻石先輩は部員達から呆れられ……


「オームラさん……」


 私は若葉さんから白い目で見られた。


「いや、違うからね若葉くん。脅しは一切してないからね」


「いや、刻石先輩を追い詰める原因がなんとなく分かってたのなら、それを避ける言動はできたんじゃないかなって思って……」


「いや、まさかお爺ちゃんが原因でここまで大事になるとは思ってなくて……お爺ちゃんは割とマイナーな存在だからさ」


 このあと私は、土下座を続ける刻石先輩をなんとか落ち着かせて土下座解除をさせ、今回はとりあえずお開きという流れになった。


「オームラ、若葉、申し訳なかったな。また後日、改めて来てほしい」


「僕はめげずにまた来ます! では僕はこれで失礼します!」


 若葉さんとマンドラゴラは元気よく頭を下げ、ゴーレム部から退散した。


「さて……オームラ、刻石が申し訳ないことをしたな」


「いえ、大丈夫ですよ」


「……あいつは中学校の頃に入部していたゴーレム部を、1人の女子によって壊された経験があるらしくてな。それが原因で、オームラについあんな態度を取ってしまったんだそうだ」


「そんなことがあったんですね……」


「まあ、だからと言って見ず知らずの相手にする態度ではなかったが……」


 何はともあれ、原因が分かって一安心。とりあえずゴーレム部には入れるようで良かった。


「では、私達はこれで……」


「ああ。そうだオームラ」


「はい」


「また後日に刻石が改めてオームラの元に謝罪しに行くそうだ」


「いや、もう大丈夫ですよ……」

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