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20話 リトルナイト倶楽部

 ハクギンさんは空き教室の中央に移動し、新たに作る予定である部活動について説明を始めた。


「リトルナイト倶楽部は文字通り、リトルナイト関連の部活動。リトルナイトで遊んだり、バトルしたり……つまり、リトルナイトで気軽に遊ぶ為の部活動」


「緩い集まりでリトルナイトを遊ぶ部活動なんだね」


『すごく楽しそうだね』


 リトルナイト初心者でも気軽に入部できそうな素敵な部活動だ。


「楽しい部活動にする予定。所で、話は変わりますが……」


「?」


「どうした?」


「お2人は入る部活動は決めた?」


(……もしかしてハクギンさん、私達をリトルナイト倶楽部に入部させようとしてる?)


 ハクギンさんの目がやけに輝いている気がする。そんなハクギンさんは私達を見つめ、更に言葉を付け足した。


「もしも入部する部活動が無いのならば、オススメしたい部活動がございます」


(やっぱり……ハクギンさん、私達をリトルナイト倶楽部に入れるつもりだ……)


 私の気のせいではなかった。ハクギンさんは確かな意志を持って私達をリトルナイト倶楽部に誘い込もうとしている。


「あ、私はもう決めてるよ! リトルファイト部に入部する予定!」


 フレアさんは企み顔のトールに向かい、元気よく入部する部活動を宣言した。


「リトルファイト部……リトルナイトで戦うだけの部活動とかあるんだ」


「すごく人気だよ。しかもこの学園のリトルファイト部は入部テストがあるくらいに真剣だからね」


「本気だね」


「そりゃもちろん! リトルファイト大会もあるからね!」


 大人気真っ只中のリトルナイトならばきっと、大会の規模も想像以上に大きいのだろう。


「しかもこの学園には、リトルナイトの大会にも出ている有名なリトルナイト使いがいるからな!」


「えっ? そうなの?」


『どんな人?』


「アラン・レイコード先輩だよ。前にテレビでやってたリトルナイト大会にも出てたんだよ」


「あっ、なんか聞いたことあるかも……」


 アラン・レイコードは確か、前にテレビで放送されていたリトルナイトの大会を1位で入賞した人物だったと記憶している。

 それにしても、まさかこの学園に大会の出場者がいたとは。


「入部テストはあるけど、よほど酷い腕前でなければ入部可能」


「でも、酷い腕前で仮に入部できたとしても2軍に入れられるんだよな」


「2軍?」


『野球みたいだね』


「正確には『練習組』と呼ばれる仮メンバーに入るだけ。大会には出られないけど、仮メンバーの部員も最新機器を使用した高度なリトルファイトの練習ができる」


「へぇ、じゃあリトルファイト好きな人は入るだけでも価値があるってことだね」


「ザッツライツ」


 どうやらこの学園のリトルファイト部は相当本気を出しているらしい。


「そうだ、折角だからカエも入部してみたら? カエの実力なら絶対に入部できるよ!」


「いや、私は遠慮しとくよ。他の子と比べてそこまでリトルファイトに熱があるわけじゃないし……」


「あー、カエはまだリトルナイトにハマったばかりだったね。分かった、リトルファイト部は私だけ入部することにするよ」


 フレアはリトルファイト部に入部することが分かった。

 ハクギンさんは少し表情を曇らせたが、また元の無表情に戻り私に顔を向けてきた。


「オームラさんは?」


 ハクギンさんは私に駆け寄り顔を近付ける。無表情だが妙に圧が強い。


「もしも入りたい部活動が無いのなら……」


「あ、私はゴーレム部に入るよ」


「…………!」


 私が入る予定である部活動を宣言した途端、ハクギンさんの表情が一瞬で歪んだ。まるでこの世の終わりを目の当たりにしたかのような、そんな酷い顔をしていた。


「うわっ!? トールどうした!?」


 あまりの表情に、フレアが心配してハクギンさんに駆け寄った。


『主人、お気を確かに』


『大丈夫?』


 ハクギンさんのリトルナイトであるハクヤはハクギンさんに寄り添い、ピントは心配そうにハクギンさんに言葉をかける。


(この反応から察するに、もしかしてハクギンさん……私は確実に入部すると踏んでたんじゃ……)


「えっと……私、昔からゴーレムが好きだったから……ゴーレム関連の部活動があったら入ろうかと思ってたんだよ」


「そっか……」


 ハクギンさんは相変わらず暗い表情のままだ。暗い上にしんどそうにも見える。


「でも、前に部活動について調べてみたら、ゴーレム部はそんな頻繁に動かないみたいで……」


「そっか」


 ハクギンさんの表情が一瞬で明るくなった。心なしか顔色が良く見える。

 

「私、リトルナイトにも興味を持ち始めてたからさ。ハクギンさんが作るリトルナイト倶楽部は丁度いいなって思って」


「オームラさんの入部、心から歓迎する」


 私が入部を仄めかすと、ハクギンさんはすかさず私の両手を掴んで歓迎した。そんなに私に入部してほしかったのだろうか。


「カエとトールはリトルナイト倶楽部に入るんだね。じゃあ、その倶楽部の数合わせも兼ねて私も形だけでも入部しておこうかな」


「ゴーカイさん、ありがとう」


 ハクギンさんはフレアの手も掴み、お礼を述べた。


「あ、所で……リトルナイト倶楽部って正式な部活動なの?」


「リトルナイト倶楽部は同好会。部活動にするつもりはない」


『緩い集まりですから。それに、同好会ならば無理に部員を集める必要はありません』


「へぇ〜」


「むしろ部活動にしたらそれなりに実績出さないといけなくなるから大変。そうなったら緩い部活動じゃなくなる」


 どうやらハクギンさんはとことん緩い部活動を作り上げるつもりらしい。


「リトルナイト倶楽部はすぐに立ち上げる予定。立ち上げたらすぐにオームラさんに連絡する」


「ありがとう! 楽しみにしてるね!」


 そんなこんなで私は、「リトルナイトに興味があったから」という軽い気持ちで、ハクギンさんの立ち上げたリトルナイト倶楽部に入部することにした。



 だが、後に私はこのリトルナイト倶楽部が原因で、想像を超える様々なトラブルに巻き込まれることになるのだった。



(リトルナイト倶楽部、楽しみだなぁ)


 未来にそんな運命が待ち受けていることなど知る由もなく……当時の私は、呑気に倶楽部の完成を待ち望んでいたのだった。

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