18話 夜の散歩おしまい
ギルドで魔獣の落とし物を換金した後、僕らは改めてギルドの外に出た。
フリルは家に乗り物を取りに行ったから、フリルが来るまでしばらくはここで時間を潰すことになった。
「さて、折角だから何か食うとするか……ピントは何か気になる店はあるか?」
「うーんとね」
僕はあちこちを見回して気になるお店を探してみる。
「あ、コンビニあるんだ」
「コンビニの商品は種類豊富だが、割高な物が多いな。だが見て回るのは楽しいぞ」
「へぇ〜。あ、ラーメン屋さん」
「ラーメンか、古き良きラーメン屋台がいい味を出しているな」
見た目からいい味出てるなら、これは絶対に行くべきだね。
「じゃあラーメン屋さんにする」
「決まりだな。では、あのラーメンの屋台に入るとするか。店主、失礼する」
僕らはラーメンの暖簾をくぐって店主のガイコツ型リトルナイトに挨拶をした。
「いらっしゃい。何にする」
「えーっとね」
ぶっきらぼうな店主を前に、僕らはお店の丸椅子に座った。目の前にあるお品書きには色んな種類のラーメンの名前が書かれている。
「何にしようかな」
「俺は醤油ラーメンをいただこう」
「あいよ」
「えーと……じゃあ僕は味噌ラーメンお願いしまーす」
「あいよ」
僕が注文したタイミングで店主はお冷を出してくれた。綺麗なコップに綺麗なお水が入っている。
僕らが待ってる間、店主は目の前でラーメンの準備を始める。
どんぶりを2つ出して、片方には醤油っぽいもの、もう片方には味噌っぽい物を入れて、それぞれに調味料を色々と入れていく。
沸騰しているお鍋に麺を入れて、その間に別の鍋に入ってるいい香りのするスープをどんぶりに注いでいく。
しばらくしたらお鍋から麺を出して、お湯を切ってどんぶりに入れてお次はトッピング。
大きなチャーシューと卵の角切り、ネギと海苔を飾りつける。
「お待ちどうさん」
店主は完成したラーメンにレンゲを入れて、目の前にいる僕らの前に出してくれた。すごく美味しそう。
「では、いただきます」
「いただきま〜す」
箸入れに入ってた頑丈なお箸を取って、いざ実食。僕はレンゲでスープを掬って飲んでみる。
「美味しい!」
「ああ、ここのラーメンは美味いな」
アラジオもこの屋台のラーメンが気に入ったみたいで、麺を持ち上げては口に運んで食べていく。
僕もスープに絡まっている麺を箸で持ち上げて食べてみる。うん、味が濃くてすごく美味しい。
僕らは夢中でラーメンを食べて、あっという間に完食してしまった。
「会計は俺が支払おう」
「いいの?」
「助けてくれた礼だ。それに、偶然とはいえお前の住む家の庭に落ちてしまったからな。迷惑料も兼ねてる。ここは俺に払わせてくれ」
「分かった。ご馳走様でした」
「ああ」
ラーメンの代金はアラジオが支払ってくれた。屋台にあった謎の装置にカードを置くと、屋台の装置から音が鳴った。
「ご馳走様。とてもうまかった」
「店主さん、ラーメンすごく美味しかった!」
「そりゃよかった。またおいで」
「うん!」
僕らがラーメン屋台から離れると、新しいお客が屋台に入っていくのが見えた。あの屋台、すごく人気みたい。
「お待たせ! 2人とも待った?」
「いや、今ちょうど出たところだ」
ラーメン屋台から出たタイミングで、フリルが再びこの場所に戻ってきた。フリルは手のひらサイズの鍵を手に僕らに駆け寄る。
「アラジオさん、ここでやり残したことはない?」
「ない。それよりも、主の靴下をすぐに持ち帰らなければ……」
アラジオは丸めて小脇に抱えた靴下に目配せをする。ずっと大事に持ってたんだ。
「じゃあすぐに出発しましょ! ピントも乗ってく?」
「うん」
僕は特にやることが無かったから、アラジオと一緒にフリルの乗り物に乗って帰ることにした。
「この子が私の愛車よ! どう? 可愛いでしょ!」
「ピンク色で大きくて可愛いね」
「でしょ? 大型犬みたいな可愛らしいがあるわよね!」
「ず、随分とゴツいな……」
駐車場らしきスペースに駐車されていたフリルの乗り物は、ピンクボディの大きなオープンカーだった。
「はい、2人仲良く後部座席に乗ってね」
「はーい」
「失礼する」
フリルは後部座席のドアを開けて僕らを迎え入れる。
フカフカの座席に座って、シートベルトを装着している間にフリルは運転席に乗り込んで慣れた手つきで支度を整えた。
「じゃあ、いっくよー!」
フリルは鍵を差し込んで車を起動させた。車はブルルンと豪快な音を立てながら起動してライトを光らせる。
「発進!」
フリルがそう叫ぶと、車は広い駐車場をものすごい速さで走りながら空中に浮かび始めた。
「おぉ〜!」
「こ、これは流石に速過ぎないか……!?」
「そんなことないわ! これからもっと速度を上げるわよ!」
アラジオの疑問に答えつつ、フリルは車のスピードをぐんぐん上げながら空へと飛び上がった。
「…………っ!?」
「はやーい!」
車は物凄い速さで空中を走る。遠くに何かが見えたら速度を保ったまま避けて先へ先へと飛んでいく。
「あ、向こうに見えるお家が僕の家だよ」
「分かったわ!」
車は僕の指し示した方角に飛んで、あっという間にカエの部屋のベランダに到着した。
「はい到着!」
車はベランダの中に飛び込んで停止した。僕はシートベルトを外して車から降りる。
「もう到着しちゃった。フリル、ありがとう!」
「どういたしまして!」
「アラジオも色々教えてくれてありがとう、夜の散歩楽しくて、奢ってくれたラーメンすごく美味しかったよ」
「そ、それは良かった……」
アラジオは後部座席でぐったりしながら返事をした。大変そうだね。
「じゃあ、私はアラジオさんを送り届けてくわね! ピント、おやすみなさい!」
「フリル、アラジオ、じゃあね〜」
僕は2人に手を振って車を見送る。車は急発進して空に飛び上がって、軌道を描きながら夜の空へと消えていった。
「お家帰ろっと」
僕は大きなガラス窓から部屋に戻ると、僕の靴下とスリッパを回収して自分の家に戻った。
バスケットの家に戻る前に、身体の隙間からギルドカードを取り出して眺めてみる。
「楽しかったなぁ……」
カードを眺めていたら、今日の思い出が頭に浮かんだ。
アラジオが靴下持ってる魔獣に乗って飛んできて、家の庭に落ちたこと。
フリルと出会ってギルドまで案内してもらって、ギルドでカードを発行したこと。
持ってきた魔獣の落とし物をポイントに変えて、アラジオの奢りでラーメンを食べたこと。
フリルの車で家まで送り届けてくれたことまで思い返して、ギルドカードを体内にしまう。
僕はカゴに飛び乗って、蓋を開けて家に入った。
(また夜のお散歩したいなぁ……)
なんて思いながら、僕は眠りについた。
その日の晩、僕は夢を見た。
背丈が大きくなった僕が、カエにリトルナイトの世界を案内する夢。
僕は外で出会った友達や、ギルドやラーメン屋さんをカエに紹介した。カエは僕が外に出たことを危ないって言って怒ったけど、でもすごいねって褒めてくれた。
最後にカエにラーメンを奢った。一緒に並んで同じラーメンを食べて、美味しいねって言い合った。
ガイコツの店主にポイントを払ったら、カエにありがとうってお礼言われて……そこで目覚ましの音が鳴って目が覚めた。
少し残念だったけど、夢はとても楽しかった。
もう少し寝たらカエと一緒に魔法の学校に行く。カエと一緒に行く学校もきっと楽しいんだろうな。
次回から学園編に入ります。




