13話 窮鼠猫を噛む
逃げるピントを追いかけていたリトルナイト2体は、突如飛んできた高威力の火炎魔法の餌食となった。
この攻撃によりカマイタチは脱落。ウルフマンは辛うじて助かったようだがボロボロだ。
『なっ……!?』
『ゴウカ!』
火炎魔法が飛んできた方角を見ると、鎧が全て開き真っ赤に輝くゴウカの姿があった。
『何で……!? バリアで妨害されたお前が何故こんな短時間でチャージ完了してんだ!?』
実は約1時間前、ピントとの特訓をしていた時のこと。
「ピントの立ち回りはこれでいいとして……お次はフレアのゴウカ」
ピントの回復をしている間に、ハクギンはフレアとゴウカの方を向いた。
「恐らく相手はゴウカのチャージアーマーには気付いてる。ゴウカを孤立させ、なおかつチャージさせないよう『ブルームバリア』を使うはず」
「ブロッサムフェアリーの腕輪で使えるバリアか……確かに、アレをゴウカに使われたら厄介だな」
「そんなに厄介なの?」
「普通のバリアでも厄介だけど、ブルームバリアは更に厄介だよ」
フレアはゴウカを台に乗せながら話を続ける。
「ブルームバリアは、バリア内にいるリトルナイトの魔力を吸い取って効果時間を伸ばすんだよ」
「チャージアーマーへのチャージも吸い取られるから、バリア内にいたらゴウカはチャージできない」
どうやらハクギンさんは、ゴウカの強みを封じる作戦に出ると予想したらしい。
「バリアの中にしばらく閉じ込められるのは痛いな。足にバリアアンチ付けて対処するよ」
『バリアを破壊したら速やかに魔力を蓄え、鎧を解放して敵の背後から奇襲を仕掛ける。ピント、それまで相手を引きつけておいてくれ』
『分かった!』
と、いうわけで……ピントはゴウカのチャージが完了するまで、とにかく相手の注意を引きつける役割を担ったのだった。
ピントがゴウカから少し離れたのも演技。相手はこちらの思惑に見事かかり、ゴウカを放置してピントを追いかけ始めた。
その間にゴウカはバリアを破壊し、チャージに専念。
結果、相手の邪魔もなくあっという間にチャージが完了し、すぐさま現場に駆けつけられたというわけだ。
『相手が派手な音を散らして追いかけてくれて助かった』
『後はあのオオカミくんだけだね〜』
形勢逆転。相手は仲間を失い、こちらは無傷のリトルナイト2体。
一方相手はゴウカの大技を受けて大怪我を負っている。
(私達にかなり有利な場面……でも、ウルフマンを残して2対1の状況は油断できない……)
と、いうのも……
「オームラさん、相手の動向について私が分かる範囲で教えたい」
避ける特訓を切り上げた後、ハクギンさんは最後のアドバイスを口にした。
「2人とも注意しておくのは当然として、一番警戒すべきなのは……」
「一番はやっぱり黄髪のリーダーだろ」
ゴウカのカスタマイズを終えたフレアはハクギンさんの話に参加する。
「アイツが指揮ってるみたいだし。だからこそ真っ先に潰すならアイツだろ」
「黄髪の人を先に潰すのは私も賛成、だけど理由はそれじゃない」
「違うのか。まあどちらにせよ先に潰す相手は同じみたいだからいいか。黄髪の奴を潰せば、リーダーを失った下っ端の黒髪は何もできなくなるだろうし……」
「黒髪の人もしっかり警戒した方がいい」
「えっ? あの下っ端みたいな方を?」
「あの人は世渡り上手。黄髪の人をうまくコントロールして利用してる」
「!?」
ハクギンさんの指摘にフレアは驚く。
『……どこで分かった?』
「あの言い合いの時、フレアを上手く唆して勝負に持ち込んだのは黒髪だった。後は何となく憶測しただけだけど……あの人は多分かなり賢い」
ゴウカの問いにハクギンさんは丁寧に答える。
「そんなとこまで意識向けてたんだ……」
「ちょっとした癖。で、黄髪の人は多分意気地なし、初心者狩りを企てたのは多分黄髪の方」
「あの偉そうな方が?」
「フレアが爆発した時、黄色髪の人は特に怯えてた。多分かなり臆病だと思う、だからこそ注意が必要」
「臆病な奴なのにか?」
『なんで?』
「臆病な人が窮地に陥った時、助かるためにとんでもない行動に出る可能性がある。ウルフマンにもその特性が引き継がれているとしたら、かなり危ないかもしれない」
『だから注意すべき、というわけだな』
「でも黄髪の人は多分、次で勝負が決まるという大事な局面で調子を崩す。それでも最後に残すのは危険」
ハクギンさんは私達に向き直る。
「だからウルフマンは先に倒した方がいい。カマイタチは主人の頭が良くても本体は怒りっぽいから、警戒しつつ煽ればきっと勝てると思う」
ハクギンさんは先にウルフマンを倒した方がいいと言っていた。
ゴウカも恐らくウルフマンを優先で倒しに向かったのだろうが、ウルフマンは咄嗟に俊敏になり攻撃を幾つか避け、結果として生き残ってしまった。
恐らくハクギンさんの言う通り、ウルフマンは臆病だったからこそ、怒りで我を忘れても奇襲に咄嗟に反応できたのだろう。
『ピント、油断するな』
『うん』
真っ赤に輝くゴウカとピントは、構えながらウルフマンにジリジリと躙り寄る。
『ぐぅう……!』
対するウルフマンは耳を下げて憎らしそうに唸り声を上げている。
『トドメだ!』
『くそっ!』
ゴウカは強力な火炎魔法を両腕から交互に幾つも飛ばす。
が、ウルフマンはすぐさま自身の周りにバリア展開した。武器を捨て、魔力チャージをしてバリアを長持ちさせて火炎魔法を防ぐ。
魔法は防がれたものの、頑丈そうなバリアはゴウカの高威力魔法によりあっという間にヒビが入った。
『出てこい!』
ゴウカはすぐさま足で相手のバリアを破壊するも、相手はその隙を見て足に魔力を込めて全力疾走。その場からすぐさま逃走した。
『待てっ!』
ゴウカは逃げる相手に魔法を飛ばす。ピントも魔法陣を出して加勢するものの、武器も何もかも捨てた相手は非常に身軽で、複雑に動いてゴウカとピントの攻撃を全て避けてしまった。
『何っ!?』
『あばよっ!』
そのまま私達の前から逃走した相手は、遠くに見える森林地帯へと避難してしまった。
『逃げちゃった』
『追うなピント、奴は恐らくあの森林の中で待ち伏せするつもりだ。俺の魔法で焼き払って外に誘き出すぞ』
ゴウカが先頭に立ち、森林へと向かおうとしたその時。
『ア……』
地面に倒れていたカマイタチがほんの少し動いた。
『えっ?』
『!』
「しまっ……!」
ゴウカとフレアが反応するも、既に手遅れ。
なんと口を大きく開けたカマイタチから巨大なミサイルが飛び出した。
『わわっ!』
妙な音に気付き反応できたピントはすぐに回避できたが、ゴウカは反応し切れずミサイルに直撃してしまった。
『ぐうっ……!』
「ノロイミサイル……!」
「えっ? 何で相手は倒れたままなのに攻撃が飛んできたの?」
「装備するリトルナイトが倒れた時に発動する武器なんだ……! 1発だけだが高威力で、アーマーを開いたゴウカには大ダメージ……!」
フレアの言う通り、攻撃を受けたゴウカはすぐに停止。戦闘脱落となってしまったようだ。
「尻尾を取ってるから体内も空だと思ったら……! しかもギリギリで生きてやがったせいでタイミングが……くそっ! 油断した!
とんでもないことになった。2対1で戦況は有利だと思ったのも束の間、倒れた1体が最後に繰り出した技によりゴウカは脱落してしまった。
「カエ、後は頼んだ……!」
「……分かった」
正直不安だったが、ここで憂いていても戦況は変わらない。ピントが戦わなければ勝負に勝てない、ならばやる事は1つだけ。
(ピント、ウルフマンを倒しに行くよ)
『レッツゴー!』
ピントは元気よく駆け出し、ウルフマンが逃げた先にある森林へと向かった。




