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10話 準備運動

 リトルナイト専門店『ナイト工房』のフードコートで初心者狩りをする相手と遭遇し、フレアは大激怒。


 フレアは相手にまんまと乗せられ、結局フレアと私で男子2人とリトルナイトバトルをすることになってしまった。


「カエ、トール、本当に申し訳ない……」


 しばらくしてようやく落ち着いたフレアは、私とハクギンさんに頭を下げて謝罪してきた。


「相手がバカにしてきたから私、どうしても許せなくて……!」


「いや、フレアは私を思って対抗してくれていたみたいだし……かなり激しかったけども」


『だからと言って、わざわざカエもピントも巻き込む必要はなかった筈だ。2人を巻き込まず、1人で1体ずつ相手すれば良かったものを……』


「うっ……」


 ゴウカに咎められ、フレアは目に見えて落ち込む。


「何はともあれ、今は落ち込んでいる暇はない。急いでオームラさんとピントさんにバトルの感覚を教えないと」


「そうだね。とりあえず私達もバトルエリアに行こうか」


「分かった」


 私達は大急ぎで2階へと駆け上がりバトルエリアへと移動……せず、ハクギンさんの指示により謎の通路を通って個室へと案内された。


「到着」


「うわ凄っ!? 個室のバトルスペースかよ!」


 到着した個室はとても広く、周りにはリトルナイトのパーツや武器、あとリトルナイトに関係ありそうな道具が綺麗に置かれている。

 私達は急いで荷物を置き、中央にある大きなリトルナイトのテーブル型フィールドへと集まる。


「さてと……まずはピントさんについて知るところから始めましょう」


 私はピントが着ていたチョッキを外し、改めてハクギンさんに向かい合う。こうして、ハクギンさんによる簡易なリトルナイト講座が幕を開けた。


「オームラさんのリトルナイトはウサギ獣人型のハッピーサンラビット」


 草原が再現されたフィールドの上にピントが入り、それに合わせてハクギンはピントの解説を始める。


「ペット用リトルナイトのハッピーサンラビットと、バトル用のサンラビットを組み合わせて改造したオリジナイトで、脚から放たれる凄まじい威力のキックが魅力的」


「……ペット?」


 解説にだいぶ気になるワードが入り込んできた。


「あの、ペット用って……」


「ん? カエ知らなかったのか?」


「ハッピーサンラビットはペット用リトルナイト。本来は戦わない、愛でる為のリトルナイト」


「そうだったの……?」


 知らなかったが、思い当たる節は所々にあった。生まれた時からやけに距離が近くて私に好意的で、それでいてかなり温厚……


「でも、バトル用に改造されてるから戦えるよ」


「うん。目立った特徴はないけれど、とても素晴らしいオリジナイト」


「えっ?」


 ペット用では戦えないであろうに、フレアとハクギンさんはやけにピントを褒め称えている。


「性格はペット、身体はバトル用にカスタマイズされてる。人懐っこい性格だからすぐに主人に慣れるし、主人の指示にも素直に従ってくれる」


「勝手な判断で時に主人の指示を無視する奴もいるし、従順なのはすごく助かるな」


「それでいて、温厚だから他のリトルナイトとの喧嘩が発生しづらい」


「そうなんだ……」


 どうやらピントはバトルにも対応できるタイプだったようだ。


「サンラビットは優れた聴力と脚の強さが魅力。それと、腕に装着しているサンサークルの腕輪で魔法陣を出して魔法攻撃もできる」


「魔法陣を出す手間があるけど、武器無しで魔法出せるのはいいな。遠距離攻撃できるし、魔法陣に魔力流せばバリアの役割も果たせる」


『これだね〜』


 ピントは腕を前方に突き出し、オレンジ色の魔法陣を空中に出現させた。一瞬であの複雑な魔法陣を出せるとは、流石はロボットゴーレム。


「あ、これって……ピントが足場に使ってたやつだ」


 ピントが初めて戦ったあの日。空中で方向転換して地面に飛ぶ際、この魔法陣が見えていたような気がした。


「この魔法陣って色々と使えるんだ……」


「足場に使うのはいいかもね。空中で進行方向を変えて避けられそうだし」


「これは便利そう……」


 なんて話をしていると、ハクギンさんは部屋の棚からシンプルなリトルナイトを1体取り出してフィールドにそっと置いた。


「オームラさんにはこれを」


 ハクギンさんは手に持っていたリトルアイを私に手渡した。


「これは……」


 草原の光景が広がっているのを見るに、どうやら視界はピントと繋がっているようだ。


「折角なので貸します。このリトルアイは操作ハンドルの役割も持つので指示も出せる」


「ありがとう!」


 操作ハンドルとは、リトルナイトに心の声で直接指示を出せる道具だと説明に書かれていた。

 例えば、私が操作ハンドルのボタンを押しながらキックしてほしいと脳内で思えば、ピントにすぐさまキックの指示が届くとのこと。


「試しにフィールド内を、指示を出しながら走り回ってみて」


「分かった!」


『いっくよ〜!』


 私はリトルアイに付いているボタンを押し、ピントに指示を出してみた。


(右に曲がって!)


『右〜』


(今度は左!)


『左〜』


(ここでジャンプ)


『それっ!』


 ピントは私の指示通りに右へ左へと進路変更し、自慢の脚で高く飛び上がった。どうやら指示出しは上手く出来ているようだ。


(あの気に向かって魔法発動!)


『それっ!』


 ピントは前方に魔法陣を出し、魔力を込めて球体の魔法弾を放った。


 脳からの指示出しは、過去にゴーレム操作で散々やっていたのでこれくらいは楽勝だ。

 むしろ指示に対してかなり正確に対応してくれるのでゴーレムよりも遥かに扱いやすい。


「いい感じ。じゃあ次は、試しにこのリトルナイトと戦ってみて」


「分かった!」


 そしてお次はいよいよリトルナイト相手にバトルの練習。


「これはバトル練習用のリトルナイトだから、気にせずガンガン技仕掛けても大丈夫だな」


「つまり初心者向け。緊張せず好きに動いてみて」


「自分の好きなように……」


 と言われても、リトルナイト始めたてて右も左も分からない中、リトルナイトでどう動くべきかよく分かっていない。


(……とりあえず、ゴーレム操作でよくやってた動きで戦ってみようかな)


 祖父の地元に遊びに行くたび、祖父はよくゴーレムを触らせてくれた。


 ゴーレムの作り方を見せてくれたり、作ったゴーレムの操作の仕方を教わった。そしてゴーレム同士を戦わせる遊び『坊主合戦』で、祖父や地元の人達とよく遊んでもらっていた。


(リトルナイトと比べものにはならないかもしれないけど、最低限の基礎は役に立つはず)


 そうと決まればやるべきことは決まった。


(まずは身構え、相手の出方を伺う……)


 練習用リトルナイトから少し離れ、相手の動きを観察することにした。

 相手が動き出したらいつでも回避できるよう、ピントにしっかり身構えてもらう。


『じーっ……』


 ピントは指示に従い、相手の全身をじーっと見つめながら出方を伺っている。リトルアイには練習用リトルナイトがばっちり映っている。


『…………』


 練習用リトルナイトはピントが来ないと判断したのか、ピント目掛けてゆっくり歩いてきた。

 ピントの前に来たリトルナイトは、上半身を捻りながら重心を変えて……


(右ストレートが来る、だいぶ大振りだからすれ違いざまに顔面にキック入れられる!)


 パンチが飛んでくる寸前、私はすかさずボタンを押した。ピントはすぐさま大地を蹴り、相手リトルナイトの顔面を目掛けて右寄りに飛び込んだ。


『てーいっ!』


 右ストレートとすれ違いざまにピントの右脚キックか炸裂、相手は後方へと思い切り吹き飛んでいった。

 一瞬思考しただけだが、ピントに私の指示は正確に届いたようだ。


「うわっ!? すげぇ! カエ、本当にリトルナイト始めたばかりなのか!?」


「後の先、お見事」


「ありがとう、何とかなったよ」


 フレアとハクギンさんは素直に私を褒めてくれた。


『ほう……』


『素晴らしい。初めての動きとは思えません』


 リトルナイトのゴウカとハクヤさんもいい反応をしてくれている。


『やった! リトルナイトに初勝利!』


「動きも遅めだし大したことなかったから大胆な攻撃に出られたね」


 倒れて動かなくなった相手を前に、ピントは喜びのジャンプを披露している。


「相手を見て攻撃できると判断したわけか……いや、本当にすごいなあれは」


 リトルナイト経験者であるフレアからこれほど褒められるのならば、少なくとも戦力外にはならないだろう。


「……」


 そんな中、ハクギンさんは無言で私をじっと見つめている。何やら考え事をしているようだ。


「トール、なに難しい顔してんだ?」


「考え事……ねえオームラさん」


「ん? どうしたの?」


「坊主合戦したことある?」


「えっ?」


 ハクギンさんからのまさかの指摘に私は思わず驚く。


「あ、うん。お爺ちゃんの家でよくやってたけど……何で分かったの?」


「憶測」


「えっ? 坊主合戦って……ゴーレム同士を戦わせるあの?」


 どうやらフレアも坊主合戦のことは知っていたらしい。


「そうそう。リトルナイトにハマる前はずっとゴーレム一筋だったから……」


「へぇ、じゃあ勝負の基礎みたいなのは既にあったわけだね。強いわけだよ」


 ある程度は戦える。しかし、私がリトルナイト初心者であることに変わりはない。


「ゴーレム相手ならまだしも、リトルナイトはどんな戦い方をするか分からないからなぁ……」


「私なら、少なくとも相手がどんな攻撃をしてくるのかは分かる」


「分かるの?」


 流石はハクギンさん、リトルナイトオタクを自称するだけのことはある。


「相手が使用する武器や攻撃方法は何となく分かる、相手がどう動くのかも何となく分かる」


「私も、相手がどんな動きをするのかはなんとなく分かる……」


 私が初心者だと理解した上で戦いを挑んでくるような相手だ。真っ先に何をするか、どう動くかは私でも分かる。


『この場にはあらゆるタイプの練習用リトルナイトが置かれています』


 ハクヤさんは白い翼を広げて空を飛び、着地した先にあった棚の扉を開けた。棚の中にはさまざなタイプのリトルナイトのボディが収められていた。


『対戦相手をこの場に再現し、シミュレーションすることも可能です』


「そんなことができるんだ。じゃあ、再現した相手でやって欲しいことがあるんだけど……」


 とりあえず今回のバトルで私がやるべきことはただ一つ。


 それを少しでも可能にするため、私はハクヤさんとハクギンさんにとあるお願いをした。

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