雅子とNTR(前編)
「すいませんー、同じのおかわり!」
「あ、俺も!」
珍しく地下のBARが賑わっている。
「はーい。次に作りますから、少々お待ちくださいね。」
雅子も珍しく慌てているようだ。
「雅子、落ち着いたらお会計ね。」
「はーい。」
「こっちもお会計ねー。」
「はーい。」
カウンターのおじ様達は、店が忙しい時は空気を読んで次の店に行く。
街のイメージに違わない、品の良い客の多さに助けられる。
カウンターの客が帰り、テーブル席の客だけになる。
「ふぅ。。。」
シンクに溜まったグラスを洗いながら一息つく。
カランカラン。ドアの音が鳴り、階段を降りる音が聞こえる。
細身ながらも、しっかり鍛えられた身体が薄手のシャツから透け、夜中なのに真っ暗な大きいサングラスをかけた30代後半の男。
「いらっしゃいませ。あら?凄い久しぶりですね!」
雅子が笑顔で迎える。
「ご無沙汰しててすみません。ちょっと、ゴタゴタしてまして。。。」
カウンターに掛けながらサングラスを外す。
サングラスを外すと、某フィギュアスケーターにそっくりのイケメンである。
「あら。。。少し痩せました?いつも焼酎、水割りでしたよね。」
心配そうな表情で雅子が顔を覗く。
「すいませんー!お会計!」
テーブル席の客が帰り、客はカウンターの男だけになった。
「実は離婚しまして。。。。」
男が切り出す。
「えっ!?」
びっくりして洗い物の手が止まる雅子。
「凄い美人な奥様でしたよね。。。一度一緒に来て下さいましたもんね。」
泡のついた手を流し、話を聞く体勢を整える雅子。
「僕、職業柄、出張が多くて。。。」
焼酎には手をつけず、話を続ける男。
「有名な商社にお勤めでしたよね。」
「半年くらい前、出張と息子の父親参観日が重なりまして。。。」
「小学1年生のお子様がいましたよね。」
「はい。本来は出張だったんで、父親参観は不参加の予定だったんですけど、商談が思ったより順調に進んでいたので、1日だけ東京に帰れる事になったんです。」
「それは息子さん、喜んだでしょう。」
「結局、父親参観には行けなかったんです。」
「え。。。」
気まずそうに話を聞く雅子。
「参観日当日、嫁に連絡しないで、サプライズで家に帰ったんです。」
「あ。。。」
何かを察する雅子。
「午後の授業を観に行く予定だったので、午前中に家に帰ったんですよ。」
「そしたら、家に知らない男がいて。。。。」
「え。。。その。。。見ちゃったって事ですか。。。?」
息を飲む雅子。
「はい。まさに最中でしたよ。」
男は吐き捨てるように言った。
「え〜。。。。なんで家で。。。。それは酷いですね。。。」
手をつけて無かった焼酎をグイッと一気に飲み干す男。
「そのまま、修羅場になったんですか。。。?」
男の顔を伺いながら話を続ける雅子。
「それが。。。いざ目の前で見ると、怒りも出て来なくて、自分の家なのに自分が逃げちゃったんです。」
呆れたように笑う男。
「その男は、奥様の愛人だったんですか?」
水割りを作りながら質問を続ける雅子。
「知りません。その事は聞いて無くて。。。顔も見たく無いので、その後は弁護士さんにお任せして。。。」
「親権の事で揉めて、なかなか決着がつかなかったんですけど、親権は母親が持つ事に先日決まって、全部終わったって感じで。。。」
少し手を振るわせながら、グラスをギュッと握る男。
「それは。。。大変でしたね。。。」
かける言葉が見つからず、ただただ男を見つめる雅子。
「こんな話ですみません。しばらく来れて無かったので、報告も兼ねて来たんですけど、やっぱり口に出すとしんどいですね。今日は帰ります。」
「あ。。。今日は来て下さって、ありがとうございます。あの。。。愚痴ならいつでも聞きますので!」
「ありがとうございます。」
会計を済ませ、サングラスをかけ、帰って行く男。
「はぁ。。。。」
誰もいなくなった店で、椅子に座り込み、水をゴクゴクと飲む雅子。
出張が多い男と結婚し、寂しかったのか。。。理由は奥様にしか判らないが。。。
しかし相手の男が誰なのかも聞かないとは。。。
奥様が100%悪いとはいえ、言い訳のチャンスも与え無いのは可哀想に思うのは雅子が女だからなのか。。。
一流の大学を出て、一流の会社に勤め、美人の奥さんと有名私立小学校に通う息子をもち、毎日筋トレを欠かさず、食事はブロッコリーと鶏のササミ。ラーメンは何年も食べて無い。
完璧主義の潔癖男との結婚生活は、奥様にとって幸せなものだったのか。。。。
何故浮気したのかさえも聞かれず、どんな気持ちだったのか。
もう二度と店に来る事は無いであろう、奥様の気持ちは判らない。
バーテンダーあるあるの一つだ。
答えが判らないまま日々が過ぎて行く、何ともスッキリしない職業である。
カランカラン。
店のドアが開く音がする。トン。。トン。。遠慮がちに階段を降りる音が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ。どうぞー。」
階段の上まで届くように声をはる雅子。
「久しぶり。元気だった?」
業界人風の初老の男が階段から顔を出す。
「あ。。。。久しぶり。。。どうぞ、おかけ下さい。」
少し気まずそうな雅子。
「2年くらい?全然変わって無いね。元気だった?」
男は優しげな、落ち着いた声で懐かしむ。
「元気でしたよ。あ、好きな赤ワイン、ありますよ。」
ワインセラーの奥からワインを取り出す。
イスラエル産、ヤルデンのメルロー。
「覚えててくれたんだ。一緒に飲もう。」
嬉しそうな男。
「うん。美味しい。このワインも久しぶりだ。」
雅子をジッと見つめる男。
「いただきます。」
グイッとワインを口に含む雅子。
「どうしたんですか?あれ以来ですよね。」
気まずそうに聞く雅子。
「うん。。。やっぱり、雅子の事、忘れられなくて。。。もうあんな事お願いしないから。。。」
「また、前みたいな関係に戻りたくて。。。」
モジモジする男。
「離婚、して無いですよね?お子さん、もう高校生でしたっけ?」
薄ら笑う雅子。
「うん。離婚はして無い。でも、妻とはもう終わってるんだ。」
「子供達の事とか、お金の事とか考えると、離婚は現実的じゃ無いと言うか。。。」
歯切れが悪くなる男。
「実は別れた後、後悔したんです。」
雅子が切り出す。
「えっ!雅子も同じ気持ちでいてくれたって事?」
「いえ、もう以前のような関係に戻るつもりは無いです。」
「そっか。。。でも、後悔してくれてたんだよね?だったらさ。。。」
「後悔したのは、あの時にハプニングバーに行けば良かったって、後悔したんです。」
「あ。。。そっちに?」
〜2年前〜
長野県北部の山間にある、趣きのある老舗旅館。その一室。
「あっ。。。んぁあっ。。。やっ。。。!あぁっ。。あ。。。でちゃうっ!でちゃいますぅ。。。!あ。。。やぁっ。。。あああぁぁっつ」
浴衣の帯で目を覆われ、両手を後ろで縛られながら、だらしなく足を開き、股からダラダラといやらしい愛液を垂らす雅子。
畳の香ばしい匂いと、いやらしいメスの匂いが混ざりあった、頭がクラクラするような匂いと熱気が充満した部屋の真ん中に置かれた座卓の上に裸で座らされ、グジュグジュと音を立てながら膣口から溢れ出た愛液で、座卓に水溜りが出来ている。
「雅子、悪い子だな、こんな高そうな座卓汚しっちゃって。。。」
業界人風の男が、手をから垂れる、雅子の愛液を舐めながら囁く。
後編に続きます。