表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/53

五十年後・11

 アヤは、目の前のガボットとにらみ合っていた。

 黒で描かれた、サロメ。

 ビアズリーの、サロメ。

 決して美しくはない。むしろ、女の業があらわれた、醜い顔。アヤの嫌いな顔。

 なぜわざわざ目の前に立ちはだかっているのだろう。

 中身の人間は、頭がおかしいのかもしれない。



 にらみ合うことに疲れて、腹も立つし、よけてもらおうと手を伸ばすと、サロメも手を伸ばしてきた。

 驚いて、手を払いのけようとすると、サロメも手を払う仕草をした。

 サロメの顔に手を伸ばすと、固いつるりとした表面に遮られた。

 鏡だ。




 

 いよいよガボットに入る時、アヤはかなり抵抗した。暴れて、虎三郎とあかねにおさえつけられた。

 急に意識が途切れて、その後覚えていない。

 一路がアヤのために、前もって準備してくれたガボットがあると、虎三郎が言っていた。

 それに入ったはずだが、まさかサロメだったとは。



 なぜ?

 わたしが、男に恋慕した挙句、ふられて、義理の父親に男の頭を所望するような女だというのか?


 むしろ、そんな愚かな女からは一番遠いところにいると思うのだが。

 こんな姿の中に、わたしを閉じ込めるなんて。



 アヤは、猛烈に腹が立ってきた。


 一路を見つけて、聞きただそう。

 思い切り詰って、平手打ちの一つや二つくれてやらねば気が済まない。



 歩き始めると、体が軽いことに気が付いた。

 まるで若かったころのように、思い通りに体が動く。

 それに、ずっと苦しめられてきた、腰や胸や、体中の関節の痛みも全くなくなっている。



 少し進むと、鏡の迷路に入った。

 

 いろんな大きさや形の鏡が、前や横や後ろや、上から下から、砕け散ったサロメを映し出す。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ