五十年後・4
ガボットは、外見をオーダーメイドできる。
まるで仮装パーティー張りに、アニメやゲームのキャラクターや、魔女、戦隊ヒーロー、ゾンビ、神さま、動物、植物、魚、虫、変ったものになると船や灯台やビルやタワーなんかを模した注文も入った。
自分の発明が、世間にこんなにも受け入れられたことに一路は喜んだ。
思えばあの頃が、人生で最良の日々だったのかもしれない。
初めてそのことを知ったのはいつだったか。
ガボットが、老人に使われているというのだ。
そしていつのまにか、通称「ナラヤマランド」なる、ガボット専用の広大な施設ができているという。
介護を必要とするようになった老人が、ガボットを着せられて、ナラヤマランドに送られるそうだ。
シェルターを着せて保護しているということで、虐待には当たらないらしい。
アヤは急いでそのことを一路に知らせた。
しかし、一路には、なぜアヤが深刻な顔をしているのかわからない様子だった。
「ガボットの中は、快適だよ。改良に改良を重ねてきているから。暑くもなく寒くも無いし、視聴したいコンテンツはいつでも無制限に視聴できる。どこへ行くにしても、装備が何にもいらない。人とのコミュニケーションだって、ほとんど不自由がなくなった。金も使わずに済むし」
「でも、出たくなることがあるんじゃない?」
「一度入ったら、出たくなくなるみたいだよ。それは、マーケティング部が調査済みだ」
「それって、人間らしいの……?」
「人間らしいって、なんだろう?」
「自分のしたいように生きること、かな?」
「それなら、ガボットに入っていても、人間らしく生きられるんじゃないの? むしろ、生活にあくせくしないだけ、好きなことを思う存分できるんじゃないかな」
アヤには、もうよくわからなかった。