三日目・8
「大丈夫です。お約束します」
真部は重々しく請け合ってから、
「それで、あなたはわたしに何をくれますか?」
「何をって……いやあね」
アヤはくすっと笑ってみせたが、真部は動じない。
変な沈黙が落ちた。
明らかに、アヤのことばを待っている。
えっ? 体だけじゃ足りないの?
「真部さんが欲しいのは、わたしの体でしょ?」
「まあ、そうですが。でも、あなたが求めるものに対して、それだけじゃつり合いがとれなくないですか?」
アヤはむっとした。
「あなただっていずれ年を取ります。その時に、体だけの関係だと、あなたもつらい思いをしますよ? さあ、あなたの手駒も見せてください」
なんて男だ。
アヤはだんだん腹が立ってきた。
「わたしの体に、あなたを一生満足させるだけの魅力はない、と」
「そんなの、どんな女性にだって無いでしょう?」
「まあ、それは……」
アヤはしぶしぶ引っ込んだ。
「でも、わたしは家事なんてできない。わかるでしょ?」
「わかります。でも、わたしはあなたに家事なんて求めない。そんなの、アウトソーシングすればいいだけの話だ」
アヤは、ちょっとほっとした。
理屈は通じるから、そこはいいのかもしれない。
「子どもだって、もう年齢的に無理と思う」
「そうかもしれませんね」
「わたしができるのは……」
アヤは忙しく考えた。
会社での業務なら、人並みよりはちょっとできるようになったつもりではある。
でも、他人よりもずば抜けているわけでもない。
つまり、アヤ程度の仕事人なら掃いて捨てるほどいるのだ。
そして、アヤには、体の他にはそれしかなかった。
アヤは愕然とした。
真部が、そんなものを欲しがるだろうか?
「じ、じゃあ、真部さんはわたしに何を求めているのよ? わたしの体以外で」