表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/53

三日目・3

 真部社長がその日のうちに様子を見に来ることになったので、アヤは残業せずにまっすぐ帰宅した。




 台所をのぞくと、権兵衛は相変わらず寝ていた。


 アヤは、権兵衛の脇にしゃがんで、声をかけてみた。

「ただいま。社長に連絡したよ。もうすぐ来るから」


   ありがとうございます


「早く治ってくれないと困るからね」


   ぜんしょ します


「善処するのは、社長でしょ」

 アヤは吹き出した。




 真部社長がやって来た。

 今日は、スーツを着ていて、髪も整え、別人のようにパリッとしている。

 本当に真部社長だろうかと、アヤは思わずじろじろ見てしまった。


「もう壊れるなんて、どういうこと? 困ってるんだけど」

「大変申し訳ございません。すぐに確認いたします」

「頼んだわよ」

「お任せください」


 社長は、権兵衛の横に座り込むと、権兵衛の顔の前で、指をせわしく動かし始めた。

「何しているの?」

「手話の一種です。高度なロボットなので、神経系統が無事か確かめる必要があります。これは、あらかじめプログラミング済みの意思疎通法です」

「ふうん」


 権兵衛の両手がぐぐぐと上がって、真部社長に応えるように素早く指を動かした。

「あら、腕は大丈夫みたいね、よかった」

「そうですね……もうちょっと詳しく知る必要があるので、続けます」


 真部社長と権兵衛の手の動きを見ることに、アヤはすぐに飽きた。すぐには終わりそうにない。

 そういえば、見たい動画があった。同僚たちの話についていくためには、チェックしとかないと。

「わたしは向こうで、ちょっと用事をしているから」

「どうぞ、どうぞ」





 手話は、二人だけの暗号にと、一路が考案したものだ。

 なんと、わずか六歳の頃だった。


 左は五本の指のいずれかを立てて、あいうえおの母音を表す。

 右手は、あかさたなはまやらわん、の子音だ。たとえば、あ行なら、アヒルのくちばしのような形にする。か行はこぶしを作る。


 話すのと同じ速度で操れるようになるまで、血のにじむような特訓をした。

 主に、慈良が。

 薬指も独立してピンと立てられるようになった。

 おかげで、敵に囲まれていても非常になめらかな連携プレーができて、恐れられたものだった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ