表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/53

一日目・3

 ドアに傷をつけたんじゃないだろうか。

 鈍くさい。

 ああもう、こんなやつ呼ぶんじゃなかった。時間の無駄だった。早く帰らせよう。

 

 マンションの共用廊下であたふたと立ったり座ったりしている真部社長の向こうに、ひっくり返った古い台車と、横倒しになった箱からはみ出した、金属製の青い二本の足が見えた。

 アヤは、ドアの傷のことも忘れて、そっちに近づいた。

「それがそのロボット?」

「はっ、はい! 『マジ魔人一号』です!」

「『マジ魔人一号』?」


 突如アヤは、発作に襲われた。

 こらえようとがんばったが、胸や腹のあたりから大きなうねりが押し寄せて、こらえきれず、アヤは吹き出した。

 お腹をかかえて、ひーひー苦しそうに笑い転げているアヤを憮然と見やり、真部社長はロボットを箱ごと抱き起こそうと奮闘した。

 

 真部社長の貧弱な肉体のあちこちの筋肉がささやかに盛り上がったが、ロボットはかなり重たいのだろう。びくともしない。


「ロボットに歩かせたらどうなの? 自分で起き上がることもできないの?」

 やっとのことではあはあと息をついたアヤの指摘に、真部社長ははっとして、いきなり箱をびりびり破いた。

 横倒しになったロボットの全身が現れた。

 

 膝を抱えてうずくまった状態で横倒しになっているロボットは、ひざ下と肘から先が青く、首から胸までと腰の部分が黒く、残りは銀色だ。頭は複雑で凝った形をしている。耳からは黄色のとがったものが出ている。


 まだ顔は見えない。しかし、どんな顔をしているかもうアヤには想像がついた。

 以前、昔のアニメに凝っている、オタクの男に見せられた画像に酷似していた。

「これって、著作権的にどうなの……?」

「いえ、頭の形状を少し変えているので大丈夫です。それに、この形のままで量産するつもりはありませんから。これはあくまで、私の趣味の延長で」

「ふうん」


 趣味、という言葉にちょっと引っかかったが、アヤは黙って見守った。

 真部社長は、頭頂に隠されるようについている、丸いボタンを押した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ