二日目・6
洗濯物をベランダに干していると、大きな箱を抱えたドローンが飛んできた。
思わず手を振って、目に入ったその手に違和感を抱く。
ああ、オレはロボットだった。
ドローンは、ベランダに箱を置いて、去った。
慈良は、箱を室内に運び込んだ。
米、味噌、肉や魚、野菜、調味料。ゴミ袋。洗濯ネット。洗剤。
これでとりあえずは何とかなりそうだ。
冷蔵庫に食品を入れていると、目の前に、一路の顔が映った。
「慈良、調子はどうだ」
まあまあ
「彼女は、刺激的だろ?」
どういう意味だ?
怒りのツボはびんびん刺激されているが。
一路を無視しようかと思ったその時、天啓が降りてきた。
そうだ。こいつに、アヤをぶつけたら、どうだろう。
そうだ。
昨日、ここで見た一路は、不自然なほどどぎまぎしていた。
あれは、ひょっとすると、脈があるかもしれない。
一路の恋愛体験など、聞いたことが無い。オレが知らないくらいだから、あいつはきっと童貞だ。
ウブな一路が恋に一喜一憂する様子を想像して、慈良はにたりと口元をゆがめた。
一路とアヤをくっつけたら、オレはとんずらだ。
わがままな女に振り回されて、苦労してみればいいんだ。オレの苦労がわかるようになるだろう。
いいおんなだ
「えっ? なんだなんだ、彼女の体でも見たのか?」
おうとつが くっきりしている きれいなはだ
「そ、そうか。さわったのか?」
まだ だけど さわりたい
「だめだ、訴えられるぞ。頼む、こらえてくれ」
どりょく してみる
初めは、この程度でいいだろう。
奥手な一路には、この程度でも刺激が強すぎるかもしれない。
恋は妄想から始まるものだ。
いろいろと妄想して苦しめばいい。