二日目・2
これからひと月、オレはあの女に絶対服従することになるのだろうか。
絶対憂鬱になるはずだった。それなのに、まあひと月くらいなら、と思っている自分がいて、慈良は呆れた。
オレも、メス犬のケツを嗅ぎまわる、いやしいオス犬だったってことか。
慈良は、前日のことを思い返していた。
麻酔針のせいで、記憶が途切れ途切れなのだが、一度目の目覚めのときは、一路がいた。
まだはっきりしない頭で、一路についてマンションの一室に入って……汚い部屋だと思った。
掃き溜めに鶴、という言葉がぴったりの美人がいた。以前見た写真の女だった。
ああ、しばらくここにいなければならないのだな、と思った。
それからようやく、またも一路にしてやられたことを思い出したが、その場の成り行きに興味が湧いたので、ひとまずは我慢することにした。
一路に皿洗いを命令された。
流しには、汚い食器や、使い捨ての食品パッケージが山と積まれていた。
女は、皿洗いなんてしないし、ゴミの分別方法も知らないのだろう。悪臭が漂い始めているのに、よく我慢ができるものだ。
洗い始めて、ロボットの指先から、繊細な感覚が自分の指先に伝わることに驚いた。水の温度や圧力がわかる。グラスや皿を持ち上げスポンジで洗うのに、自分の手でしているのと同じような、力加減ができる。
それにそういえば、臭いも感じていた。
前にロボットを着こんだときには目と耳しか感覚が無かった。
料理したものを食べることができないので、味覚は期待できないが、感覚が増えたことにほっとした。一路は確かに改造したようだった。
床の上も、汚かった。紙くずや何かのパッケージのビニール類、髪の毛や綿埃、ボールペンやよれよれのストッキングが散乱していた。見かねて、皿洗いの後片づけ始めたはずだったが、そこでまた意識が途切れた。
次に目覚めたときは、その汚い床の上に寝そべっていて、ぎょっとした。