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二日目・1

「うう~ん」

 アヤが目を覚ますと、コーヒーを載せた盆をささげ持って、権兵衛がベッドわきにやってきた。

「あら、なかなかグッドタイミングじゃない」


   べーこんえっぐ たまごは ひとつ? ふたつ?


「一つよ。覚えておいて」


   はい


 じゅうじゅうといい音と匂いがしてくる。

 アヤは、コーヒーを一口飲むと、コーヒーカップをもったまま、テーブルについた。

 温かいトーストと、ほかほかの上手に焼けた目玉焼きと、カットしたリンゴと、ヨーグルトが並べられる。


 うん、まあ、期待以上かな。

「料理の腕は、良いようね」

 ロボットだけど、一応ほめておこう。言葉はタダだし。


   ありがとうございます


 ふとスマホを見る。アヤは、がたっと立ち上がった。

「ええっ、もうこんな時間?! 急がなきゃ。出かける支度しないと」


   ちょうしょくはどうしましょうか?


「あああ、そんなこと言ってる場合じゃない! 捨てるかどうかしといて!」



 アヤは洗面所に走り込んだ。

 メイクと髪のセットを大急ぎで済ませると、寝室に駆け込んだ。

 ばっとパジャマを脱いで、クローゼットをがっと開けて、ささっと服を取り出すと、すごい速さで身に着けた。

 頭の中は、十時からの会議に間に合うように、どうやって行こうか、ということでいっぱいだ。

 トートバッグの中身をさっと確認してから、

「じゃあ、行ってくる」





 玄関ドアのカギが、がちゃっと閉まった。



 なんだ、あの女は。


 朝早くからがんばって作ったのに。

 汚い台所をなんとか使える状態にするところから始めたんだぞ。

 冷蔵庫の中に入っているものでよくこれだけ作れたと、我ながら自分をほめたいほどだ。

 道具はまあまあそろっていたが、慣れない台所で炊事することがどんなに大変なことか。



 慈良は、テーブルの上の食事をビニール袋に放り込んだ。いい匂いがして、胃袋がきゅううと鳴るのだが、残念ながら今の慈良には食べられない。


 慈良の頭は、余計にかっかとしてくる。

 SDGsって言葉を、あの女は知らないのか?

 こんなもったいないことをしていたら、絶対バチが当たるぞ!


 大体なんだ、目の前でいきなり脱いだりして。あの女には、羞恥心ってものがないのか?

 まあ、なかなかいい体だったのは認めるが。


 慈良は、頭の中でアヤの着替えシーンを巻き戻しては再生した。

 このくらいは、代償で許されるだろう。








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