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一日目・2

 アヤは、初めに受け取った、「マーベラスAIテクノロジー株式会社  真部一路」という名刺を指先でつつきながら、目の前の若い男を観察していた。

 ベンチャー企業の社長っていうから、もっとこう、熱気むんむんでエネルギッシュな男を想像していたが、こいつは、どちらかというと、かなりあたまでっかちな印象。つまり、オタク。自分の分野のことになると我を忘れて話をする人種。そう思えば、名前もオタクっぽく見えてくる。

 貧弱な体つきに、おしゃれとは無縁な、貧乏学生っぽい身なり。



 どう見ても怪しい。うさんくさい。いかがわしい。

 言っていることがまず変だ。飛躍がありすぎる。

 こっちのことを素人と舐めているのかもしれないが、素人だって、そのくらいはわかる。

 それに、部下にでも頼めばいいのに、社長自らロボットを運んでくるなんてのも変だ。



 アヤは、話を遮った。

「あら、すごいですねえ。今まで刻むなら刻むだけ、盛り付けるなら盛り付けるだけしかできなかったのに、料理と配ぜんができるようになっただけじゃなくて、いきなり、掃除も洗濯も? それって、ロボットの革命じゃないですか? 早く全世界に発表しないと」


 話を遮られて気分を害した様子だった真部社長は、口を開けたまま急ににこやかになった。

「まあ、だからこそ、モニターをお願いしているのです。つまり、まだ試作段階なので、きちんと消費者のみなさんに満足いただける程度に作動するかどうかの確認ですね。それに、ご不満がおありでしたら、ご意見をぜひ製品改良に活かしていきたいので……」

「まあ、不完全なものを使えと?」

「いえ、危険ではございません。安全装置は、のちほどご説明しますが、二重三重に設けておりますので。それに、いつでも返品には応じます。

 とにかく、使ってみてくだされば、良さが実感できること請け合います。それに、モニターさまには特別にわが社の株を分けて差し上げます。社長の私がお約束いたします。この製品がヒットしましたら、急騰することまちがいありませんよ」


 真部社長には、何が見えているのだろう。よだれを垂らさんばかりのうっとりした笑みを空中に投げかけた。

 アヤはちょっと引いた。



 「とにかく、まずは、実物を見てください」

 真部社長はいきなり跳び上がって、玄関ドアを大きく開けた。

 ドアは、すぐ外に置きっぱなしになっていた台車にぶつかった。台車がゆっくりと転がる音がして、重たいものが壁にぶつかり、横倒しになった気配がした。

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