-七日目
「慈良、この女はどうだ?」
マンガと慈良の顔の間に、タブレットがずいと割り込んできた。
一路のこういう無遠慮なところは、時々無性に癇に障る。
「なんだよ、急に」
ソファーに寝転んでマンガを読んでいた慈良は、不機嫌に起き上がった。
「家事ロボットのモニターに募集してきた中に、こんな美人が紛れていたんだ」
一路は機嫌がいい。
「ふうん」
タブレットには、きりっと整った顔立ちの、ロングヘアの女性が大きく映っている。
「顔写真まで要求したのか?」
慈良は尋ねた。
普通、モニター募集にそこまでは求めない。顔写真もというのは、いかにも怪し過ぎる。
「そこはまあ、情報収集で」
一路が持っている怪しげなルートがあるのかもしれない。
「ロボットになったら、彼女と生活できるぞ」
慈良は、ため息をついた。
「まあ、いいよ。好きに進めてくれ」
彼女が好みだったというわけではない。
まあ、確かに以前はそうだったかもしれない。だが、失恋を経ると人間は変わるのだ。
フライパンで火傷した人間は、フライパンの扱いに慎重になるものだろう。
普通は。
好みがどうこうというよりも、一路に屈したという方が正しい。
実験に他人を巻き込むこともためらわない、一路の執念に屈したのだ。
そして、そうするしかないのなら、早めに屈した方が、被害が抑えられると割り切ったのだった。
白羽の矢が立ったモニターさんには申し訳ないけれど。
それから、一路はSNSで彼女と何度かやりとりをし、ロボットにまた改良を施していた。