一日目・1
インターフォンが鳴った。
「アレコレ、インターフォンをつないで」
「カシコマリマシタ」
「あの、マーベラスAIテクノロジー社の真部と申します」
カメラ越しに見えるのは、メガネをかけた若い男だ。おとなしそうな感じ。
時間ぴったりだし、大丈夫そうだけど。
アヤは念のために、護身用のスプレーを手のひらに隠し持った。
「はい、どうぞ」
「おそれいります」
「アレコレ、お客さんにドアを開けて」
「カシコマリマシタ」
エントランスのドアが開くのが、モニターに映し出された。
真部は大きな箱を載せた台車を押しながら、エントランスに入ってきた。
あれね。
少々面倒に感じ始めていたところだったが、急に興味がわいてきた。
「このたびは、弊社のモニターに応募くださって、誠にありがとうございます」
「ええと、家事ロボットよね?」
「はい。
そもそもロボットは、決められた仕事のみをすることしかできません。溶接なら溶接のみ、組み立てなら組み立てのみ。
人間のように、一つの体でいろいろな種類の仕事を、しかも省エネルギーでこなすことができる機械は、存在しませんでした。
たとえば料理で言えば、食材を洗うことと切ること、火を通すこと、盛り付けることを全部一体でこなすことは、人間には難しくありませんが、ロボットにはまずできません。
いえ、できませんでした。これまでは。
これは、弊社が開発した、業界初の、マルチタスク用ロボットです。
つまり、この一体で、炊事に洗濯に掃除、家事一般を全てこなすことが可能となったのです……」