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勇者(俺)いらなくね?  作者: 弱力粉
第四章(中)
92/115

カフェに行こう!

前回のあらすじ、病院にて男を尋問。



引き続き病院の一室の一画にて、リリーが男から話を聞き出そうとしている。



「いやその... 怪我をさせちまったダチとはめちゃくちゃ仲が良くてよ、好みも合うし、もうクビになっちまったが、仕事も一緒だったんだ」 


「そうですか。で、なぜその仲の良い友人に暴行を?」


「まあちゃんと説明させてくれ。その共通の好みってのはよ... 女の好みも合っているんだ」



これはもしや... 女性の取り合い?



「あるカフェの店員の女の子に、二人して一目ぼれしててよ... 毎日のように二人でそこに通ってたんだ」



… っ!?リ、リリーの顔が... 暗くなっている?まだこの男、嘘をついているのか?いや、これは疑いの目というより... 男に呆れている目?



「で、その事件の日もそのカフェに行ってたんだが... 偶然、偶然見ちまったんだよ。その子が、客ではない他の男と仲良さそうに話してるのをよ。そりゃああんだけ可愛ければ男の一人や二人いるのも納得だろうと思ったんだが... 」



… 俺の方が先に好きだったのに展開か?



「その男、どうやら俺たちと同じように無職みてえでよ、しかも全く頼りにならなさそうな言動してたからよ、ダチと二人でちょっと喝入れてやろうと思ったんだ。こんなんじゃ

諦めるべきものも諦められねえってよ」



なんか良い奴ぽいな... 男の繋がりみたいな感じで。



「そしたらその男、ちょっと揺さぶったらヒイヒイ言いやがって。向こうに行けとか言って塞ぎ込みやがった。そしたら... それが始まったんだ」


「それ?」


「勝手に体が動いた。俺の腕が勝手にナイフを取り出し、ダチを刺し、俺自身を刺した」


「... なるほど」



リリーが疑っていない、なにかを真剣に考えているようだ。



「あなたとあなたの友人、どちらの方がその男に近づいていましたか?」


「は?ああ... 俺の方だったかな?」



それを聞くとリリーは何かをキリをつけたように立ち上がり...



「はい、ご苦労様でした。最後にそのカフェの場所と名前だけお願いします。私たちで実際に行ってみますから」





**********



そろそろ日が傾き始めるであろうこの頃。俺たち三人は、人けの無い路地に来ていた。


俺たちが道の角から覗きこむように見ている先には、落ち着いた外観を持つ、お目当てのカフェがある。



「あのカフェに店員がいるようですね。スズ、あの店から魂絡みのなにかを感じますか?」


「い、今のところは何も... もしかしたらその店員さんの近くに行けばなにか感じるかもしれません」



ええと確か、さっきの男の好みの女性は、銀色の髪、控えめな太ももと控えめな胸、そして年下だと...


スズの言葉を聞くとリリーは道の角から体を出し、カフェまで歩いていく。



「さあ、行きましょう。ここで待っているより、店員と接触する方が早いです」



まあ、それが確実か...


リリーの後についていき、カフェの前まで来る。


木材で出来たフラワーポットや扉がおしゃれで、外観からは落ち着いた雰囲気が漂う。


さてどんな店なんだろうか。


リリーが扉を押して内観を露わにすると同時...



「おかえりなさいませご主人様!お嬢様!」



生暖かいカフェの中の空気とは裏腹に、俺たちの周辺の空気がぐんと下がるのを感じる。


メ、メイド喫茶... ?いや、なんか色々なものが混ざっている感じか?出迎えてくれたのはフリフリのメイド服だが、他の店員の女の子はドレスとか、不思議の国のアリスみたいなワンピースを着ている店員さんが接客をしている。



「こちらへどうぞ!」



異様に高い、勢いのある声で話すメイドさんに、四人がけのテーブルに案内される


スズは興味深そうに辺りを見回しているが、リリーの顔からは生気が抜け... 目からハイライトが消え、真顔で現実と向き合っていた。


多分俺も同じ顔をしている。



「ご注文は何になさいますか?」


「えっと... コーヒー」



コーヒーってあるんだ。でもリリーが飲むところはあまり想像できないな...



「な、何か甘いものはありますか?」


「今ですと、アップルパイ、プディング、タルト、あとはトライフルがご用意できます!」


「であアップルパイをお願いします」


「じゃ、じゃあ俺は適当な果実水を... 」


「はい!うけたまわりました!」



注文を聞くとメイドさんはバックに下がる。


なんというか... 店員さんに一目ぼれしたっていう男の人の印象が変わってくるな。今のところ銀色の髪を持つ店員さんは見かけないが、多分同じように物語のキャラクターのように振舞うのだろうか。



「面白いお店ですね。こんなお店は王都では見かけませんでした」



キラキラとした目でスズは店員さんを見つめる。するとおもむろに立ち上がり...



「ちょっと... トイレに行ってきますね」



と、適当な店員さんを捕まえてトイレの場所を聞きに行ってしまう。



『えっと... 皆あっちの方に行くよ!お姉ちゃん』



応対した店員さんは、かなり背の小さいピンクのドレスを着た人で... スズを裏の部屋に案内する。



「こんな店だと知っていれば... タイランやメイに任せるべきでしたね... 」


「え?ああそっか、あの二人なら可愛いものや綺麗なものに目が無いもんな」


「... 意外ですね、あなたも冷めているとは」



いつものリリーからは考えられない感じに縮こまっていて... 少し新鮮だ。


冷めていると言われても... 前世から興味はあったとは言え、いきなり連れてこられればそりゃ誰だってびっくりする。



「さっきの男の好みであった店員も今はいないようですし、スズも何も感じていなかったようです。飛んだ無駄足でしたね」



「ま、まあ... 宿に戻る前に一服したと思えば... 」


「今日は遊びに来てくれてありがとう!お兄ちゃん!お姉ちゃん!」



テーブルに近づき、会話を割って入ってきたのは、ピンクのドレスを着た背の低い店員さん。


リリーと同じくらいの身長だが、年齢とか大丈夫なのだろうか。



「ねえ、お兄ちゃんとお姉ちゃんはカップルなの?すごい仲良しさんだよね!」



俺が... リリーと?いや、そんな事は天地がひっくり返っても起こらない。


リリーを見ると、俺の顔を睨み、そして俺が応対しろ、という合図を目で送っているのが分かる。



「いやあ、カップルじゃないよ。ただの友達なんだ」


「へえ... そっかあ。友達なんだあ... 」



その言葉を聞くと、店員さんはドレスのポケットに手を入れ、何かを取り出そうとする。



「じゃあお兄ちゃんたちと私で... 」


「ねえあなた、お姉ちゃんと遊んでくれませんか?」



するとなんの気まぐれか、いち早くリリーが言葉を遮り... 店員さんに顔を寄せる。


俺に応対しろと言ったのに...



「良いよ!何して遊びたい?」


「にらめっこです。ちょっとこっちに移動してください」


「え?」



そして少し強引にリリーは店員さんの肩を掴み... 俺から少し遠ざける。すると二人で向かい合うようになり、俺からはリリーの顔が見えない位置関係になる。



「それでは行きますよ。はい、あっぷっぷ」


「ぷ!」



突然始まったにらめっこだが... さすがはコンセプトカフェ?らしきカフェの店員さん。こんなおかしな客にも対応してくれるとは。


店員さんがどんな顔をするかと思いきや、まるでふぐのように頬を膨らませ、その可愛らしいキャラクターを崩さないようにしていた。


だがそんな状態は長く続かず...



「ぷっ... !」



リリーの顔を見るとすぐに吹き出してしまう。多分だが素で吹き出したような...



「お姉ちゃんの勝ちですね」


「すごーい!お姉ちゃんの顔すごかったよ!」



い、一瞬で勝負がついたぞ... 一体どんな顔をしていたんだ?



「はーい、ミラちゃーん。今からご主人様とお嬢様、忙しくなるから他のご主人様に遊んでもらってね」


「うん!」



だが疑問に答えてくれる者は当然誰もおらず。後ろからぬっと現れたメイド服の店員さんに止められ、ドレス姿の店員さんは他のお客さんを対応しに離れて行く。



「ご主人様、お嬢様、お飲み物とアップルパイをお持ちました!」


「はい、ありがとうございます」



ぬ... アップルパイ美味しそう... 格子状に組まれた生地がおしゃれだ。俺も頼めば良かったかな...


などと考えながらコップに手を伸ばすと...



「あ、お待ちくださいご主人様、お嬢様!美味しくなる魔法がまだです!」



リリーもコーヒーを飲む手を止め、メイド服の店員さんの顔を見ると... 急に顔をひきつらせる。


美味しくなる魔法ってまさか...


メイド服の店員さんはおもむろに胸元に両手を持っていき... ハートの形に組む。



「美味しくなあれ、美味しくなあれ!」



その言動に、俺たち二人の視線は自然と各々の飲み物に落ちる。



「ご主人様とお嬢様のお飲み物、美味しくなあれ!」



コップの水面に映った俺の顔は、自分でもびっくりするほどの無表情で...


き、気まずい...


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