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勇者(俺)いらなくね?  作者: 弱力粉
第四章(上)
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第0話

夕暮れ時。路地裏にて、一人の男が顔から血を流していた。


血を流していた男の色素は薄く、銀色の髪、そして不健康そうな肌の色が特徴的だった。



「なあ、良いから早く金出せよ」


「これっぽちじゃあ酒も買えねえよな?」



三人のゴロツキのうちの一人に顔を殴られ、銀髪の男は情けなく地面に転がり込む。



「な、なあ... 僕に近づかないでくれよお... うぅ!」



次は腹を蹴られ、うずくまる。



「いいよ。出すもん出してくれたらとっとと離れてやるから、早く出せよ」


「無いんだよ!もう無いんだよ!」



必死に叫ぶ銀髪の男を前に、ゴロツキの一人はポケットから何かを取り出す。


夕日に照らされたそれは、折りたたみ式のナイフだった。


かちゃっと音を立て刃の部分を出すと、それを自身の顔の前に持っていき...



「へへへ、あれっぽちなわけ無えだろ?とっとと出さねえとこのナイフで... 」



心底楽しそうな顔で、それを突き出した舌に持っていく。


瞬間、 なんの前触れもなく、ゴロツキの影だけが少しだけ揺らぐ。



「レロォ... っ!?」



そしてそのナイフを舐めたかと思えば、いきなり全身を震わせ、ナイフから手を離してしまう。


カランカラン...



「あっ... あああ!てぃ... 血が!?」


「馬鹿っすねえ兄貴、刃の方を舐めるだなんて... そんなことしたら危ないじゃないですか」



ひざまずくゴロツキを横目に、別のゴロツキがナイフを拾う。


すると一瞬、ナイフを拾ったゴロツキの影が少し揺れる。



「だ、駄目だ!それを拾うな!」


「ナイフがおっかないのか?じゃあとっとと出すものを出して... 」



言いながらゴロツキは色素の薄い男にナイフを向けるが... その腕はとても不自然な動きで逆戻りをし...


ゆっくりとゴロツキの喉にナイフが刺さっていく。



「ひぃぃいい!いででででいでえええぇ!?」


「な、ナイフを捨てるんだ!」


「お、おい大丈夫か!?」



もう一人のゴロツキが駆け寄る。すると喉にナイフが刺さったゴロツキの影が少し揺れ...



「う、うわあああっ!?」



駆け寄ったゴロツキの腹にナイフを刺す。



「いいぃぃ!?な、何をしやがる!?」


「い、いや... 俺そんなつもりじゃ... 」



ナイフを持ったまま、腹に傷を負った仲間を介抱しようと駆けつけるが...


その勢いのまま、仲間の胸のあたりに、とどめを刺すようにナイフが刺さる。そしてそれは勢いよく引き抜かれる。



「いいいぃぃっ!?はっ... し、死ぬう!」


「おお、落ち着け!違うんだ。体が勝手に... 」



ナイフを持ったゴロツキは額に汗を浮かべ、起こっている状況を理解しようとする。


まるで何者かに操られているような錯覚を覚え、自身の身体のあちこちを見回すが、何も異常な所は伺えない。



「ナイフを... ナイフを下ろして逃げるんだ... 」


「黙ってろっ!」



瞬間、地面に映った自分の影に気を取られる。夕日と反対方向にある自分のシルエットは、ナイフを持った腕を、天高く掲げていた。


慌てて自身の右手を確認すると、確かに、自分の右腕はナイフを握ったまま空中に掲げられている。


その様子に目を見張るや否や、そのナイフは自身の心臓に向かって下ろされ、胸部を突き刺す。



「う、ううぅ... うわあああぁっっ!?」



最初に舌を切ったゴロツキは、仲間の無残な姿をしっかり見ていたが、二人を助けるわけでもなく、ただその場にうずくまっているだけだった。うずくまったままのゴロツキは、ただ両手で自身の首を思い切り絞め、気を失わないよう意識を保っているのに夢中だったからだ。



「お、おい!?今すぐ手を解いて... 」



色素の薄い男が必死にゴロツキの手を解こうとするが、努力虚しく、ゴロツキは気を失ったようで、足から力が抜け、地面に突っ伏す。



「お、おいあんた!?」



だがゴロツキの様子がおかしい。気を失えば普通、手からも力が抜けるはずなのに、ゴロツキのては未だ自身の首を絞めたままだ。


再び色素の薄い男が手を解こうとするが、力が足りない。程無くして、ゴロツキの両手は緩む。






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