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勇者(俺)いらなくね?  作者: 弱力粉
第三章(下)
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第三章を終わらせよう!

前回のあらすじ、スズが正気を取り戻す。



荷車に乗っているのは、俺と健康状態のスズ、リリー、メイとアン... そしてボロボロのシャツの両腕両肩の部分に血のシミを残し、顔が大きく腫れあがったカズ王子。


そんなカズ王子は意気消沈しているといった様子で、覇気が抜け切り、顔を俯かせている。


それもそのはず...



「お兄様。私は、お兄様が裏切った事に対して怒っているわけではないのです」


「はい... 」



スズにめちゃくちゃ怒られていた。



「一人目の四天王のチャームに、二人目の四天王のパルスとの戦い。これらの戦いに、私はほとんど関わる事はありませんでした。そして今日の、三人目の四天王のアンさんとの戦いにも!私は何一つ関わる事はありませんでした!!」



いえ、しっちゃかめっちゃかに戦場をかき乱してくださりましたよ、とは言えず...



「はい... 」


「おかげで今回も、私はこうやって皆さんから話を聞き、物語を書き記す事しか出来ません」



と、スズは革のおしゃれな本を取り出して言う。



「あれ?そんな本持っていたっけ?」


「いえ勇者様、一昨日リリーさんに頂きました」



見ると、リリーが少し誇らしげな顔を浮かべているのが分かる。



「とにかく!せっかくの私の戦闘の機会だったというのに、私を眠らせるだなんて、なんて勿体ないことをしてくれたのですか!」


「はい... 」



更に項垂れるカズ王子。



「そもそもカズが誕生パーティーを欠席した時点で何かを疑うべきでしたね」


「それもそうですね、でもよりによってなんで私を... 」


「スズお姉ちゃんが強いからだよ」



アンは突然立ち上がると、スズの膝の上に座る。



「能力を使われたら、スズお姉ちゃんには手も足も出ないよ。もちろん能力が無くてもね」


「能力が無くても?」



あ、だめ。お口チャックでお願いしますアンさん...



「でも最後にお姉ちゃんたちと遊べて楽しかったよ。タイランお姉ちゃんとメイお姉ちゃんたちだけじゃなくて、リリーお姉ちゃんとスズお姉ちゃんと、あとへっぽこのお兄ちゃんとも」



あぁ、スズの顔がきょとんとしている...



「ちゃんと遊べたし、もう未練はないかな?スズお姉ちゃんは私に、別れは潔くって教えてくれたし、そろそろ私は行くね」


「アン... さん?」



アンは振り返り、スズと目を合わせる。アンがどんな表情を浮かべているのかは分からないが、スズが少し驚いているのは分かる。


アンの両腕右足に巻いた包帯から、なにか赤黒い霧のようなものが漏れ出し... それは発散し始める。



「アン、俺は泣かないぜ!ちゃんとお前と遊べて楽しかったぜ!」



タイランは振り返らず、前を向いたまま荷台を引っ張り続ける。



「アンさん... 私もアンさんと遊びたかったです... 」


「え?一緒に遊んだし、物語もたくさん聞かせてもらったよ?」



段々漏れ出てくる霧の量が多くなっている気がする。これは... アンの魂なのか?



「行くんですね、てっきりあのジジイのように残るものかと思いましが... 」


「え?リリーお姉ちゃん、パルスお爺ちゃんは生きているの?」


「え?ええ、王都の研究所に... え... 」



するとなぜか発散したはずの霧は包帯に逆戻りし... 吸い込まれる。


え?



「ちょっとそれだと話が変わってくるかな?パルスお爺ちゃん一人だと寂しいだろうから、見送ってから成仏する」



と、なぜかガッツポーズを浮かべ、嬉しそうな声色でアンは言う。


え... 完全に成仏する流れだったじゃん...





**********




張り詰めた空気の中、沈黙だけが辺りを漂う。日が暮れる少し前の時間、宿の下の階の食堂には客が一人もおらず、宿の人も空気を読んでか奥の部屋にいるようだ。


タイランが何か食べたいと言ったことで、メイとアンと一緒にどこか適当な他の食堂を探しに行った。というわけで、この重い空気をぶち壊してくれるはずのタイランがいない。


食堂の席には、俺の隣にリリー、スズ、傷だらけのカズ王子が座っており... 全員でクルミ王子と向かい合っている。


この真面目な顔をしたクルミ王子が何を言い出すのか、俺だけはなんとなく予想がついている。



「クルミさん... それで、お話というのは... 」


「まずは四天王の討伐、おめでとうございます」


「は、はい。ありがとうございます... 」


「それで話というのは、私達の婚約についてなのですが... 」



すると横目にも、リリーが怪訝な表情を浮かべているのが分かる。


やっぱりリリーに今朝話した内容が伝わっていないのか?



「その、色々あったので、婚約破棄を申し出たく... 」



その言葉に、表情は変わらないが、リリーから喜びの感情が漏れているのが感じ取れる。それはまるで鉛筆を削った時の、ピンととがった芯のような、爽やかで、曇り一つない喜びだった。


だが、スズの様子はどこかおかしく...



「ク、クルミさん... それって... 」



顔を鼻まで赤くさせ、涙を流していた。発した声はどこか潤んでいて、真っ直ぐと耳に届かないようなもどかしさを覚える。


そんなスズの状態に、先の尖った鉛筆の芯を折ったような、負の感情を露わにする人物が約二名...


相変わらず表情は変わらないが、どこか怒っているような、なにかを悔いているような感情をリリーとカズ王子から感じる。


や、やっぱりスズはクルミ王子の事が好きなのか?



「探し物を、見つけることが出来たのですね!?」


「はい」



二人の負の感情が収まる。


さ、探し物?



「何を見つけたのかは、やはり教えては頂けないのですか?」


「すみませんスズさん... これを教えることは出来ません。これを教えると、壊れてしまう気がして... 」



これは... スズとリリーの話なのか?



「自分勝手で申し訳ありません... 」


「いいえ!とても気になりますがそれは素敵な事です!その物語はしっかりと胸の奥におしまいください!」



なんだろう... リリーはフェードアウトし初めているが、カズ王子からはスズに対しての尊敬の意を感じるような...



「ありがとうございます。婚約破棄の申し出は後日私の付き添いの者からさせますので... 」


「はい、細かい事はお任せします」



ひとまずここは収まったようだが、一つ気になることが...



『な、なあリリー。クルミ王子の婚約破棄の話、覚えていないのか?』



リリーに耳打ちすると、なぜか眉を潜められ... 何言ってんだこいつ?とでも言いたそうな目を向けられる。



『はあ!?今朝俺の頬を思い切りぶん殴って、夢かどうか確認したじゃねえか!』



するとリリーは記憶の中を探るように目を逸らすが... 知らないと言いたげに首を振る。


ま、まさか寝起きの記憶を保持しないお方ですか...



「それではクルミさん。細かいことは置いておいて、私と一緒にアンさんとの戦いの話を聞きましょう!」


「ええと... お疲れでなければ、リリーさん、よろしくお願いします」



二人の物語狂いに声をかけられると、リリーは向き直り、誇らしげな顔で言う。



「ふふん、良いでしょう。ではクルミ王子殿下にも分かるよう、最初から話しましょう!」


第三章完です!ここまでお付き合いいただき、感謝の言葉も出ません。


なぜか主人公がリリーに操られたり、逆にリリーの考えている事を読み取ったり、スズがプラシーボ効果で豹変したり、妹に過度にべったりなカズ王子を登場させ、そんなキャラが裏切ったりと、やりたかった事をギュッと詰め込んだ回になりました!


戦闘シーンでは、店員の女の子のようなハサミキャラや、近接戦闘時のリリーのような両手にナイフを持ったキャラを、昔からかっこいいと思っており今回出してみましたが、いざ動かそうとすると武器の特性が生かしにくく、書いている途中でかなり悩みました。書き終わった後に見てみると、四天王であるアン対タイラン&メイより、カズ王子対リリーの方が長くて、少し複雑な気分にもなりました。


第四章では、取りこぼした事を軒並みやっていこうと思います!


最後に、評価やレビュー、感想などを残していってくださると、大変励みになります!


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