イケメンに出会おう!
前回のあらすじ、謎のローブの男。
昨日は夜遅くに町に着き、適当な宿屋に泊まった。荷台に座りっぱなしの体を横にするとすぐに休む事ができ、気持ちの良い朝を迎える事が出来た。そんな気持ちの良い朝に...
「ふ、ふわああああああぁぁぁぁ... 朝ですね... あれ、もう起きていたんですか?へっぽこ」
俺はベッドのそばに勢いよく起きて立ち上がり、身構える。
リリーが俺の寝ていたベッドの上の空気を蹴ったかと思うと、部屋の扉まで向かっていく。
「私はお手洗いへ行きます... とっとと着替えて、朝ごはんを食べて... くそったれ王子に会いに行きますよ... 」
と、言いたい事だけ言って部屋から出ていくリリー。
リリーの起きる音を目覚ましに、すばやく起きているからか、俺の体はまだ少しだるい。
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「みいぃい、めっごご... もあおおなあ...」
「落ち着いてください、タイランお嬢様」
リリーと一緒に一階の食堂に下りる。スズと婚約者の男はまだ来ていなかったが、タイランがすでに口いっぱいに食べ物を詰めていて、メイがそれを注意していた。
「リリー!どうせ朝ごはんを注文しにいくんだろ?俺のおかわりの分も頼むぜ、ちっとトイレ行ってくるからよ」
「その位自分で... はあ、人の話を聞きませんね。へっぽこは適当でいいでしょう?」
「ああ、ありがとう。座って待ってるよ」
すでに食べ終えているのか、木のコップから水を飲むだけのメイと二人きりになる。
「おはようございます勇者様。昨晩は、良くお眠りになられたようですね」
「ああ、タイランほどではないけど、ずっと座りっぱなしだったから、横になったらすぐに意識が飛んだよ」
まだ少し体がだるいが、まあそのうち改善するだろう。
すると、こんなほのぼのとした朝のひとときに、乱入者が...
「君、少し首の筋肉が強張っているね。枕が合っていないか、無理な姿勢を取っていたんだろう?」
そのまま二人で話そうと思ったら、なぜか俺の隣に座り、割り込んでくるのは食堂の客だ。
男なのに長い髪を持っており、金髪をポニーテールに結んでいる。俺より十センチは身長が高く、真っ白なタキシードのような服を着ていて、どこかの貴族のような振舞い方をしている。
話に割り込まれて少しイラっとするが、それよりも、柔らかい笑顔や身振りからどこか違和感を覚える。
くっ... イケメンだ。
「ええと... そうなんですよ、宿の枕が少し硬めで」
愛想よく返したつもりが、その男は笑顔のままこちらを見て、そのまま口を閉じたまま固まってしまう。
「あの、何の用ですか?雑談なら他の人に... 」
「人の筋肉の動き、喋り方、目線、これらは全て、人が人を見る時に判断する材料だ」
なんだこいつ。イケメンの癖に頭がいかれてるのか?なぜかメイもこのイケメンに目線が釘付けになってるし... は!?まさかメイがイケメンに惹かれているのか?いや、メイはタイラン一筋だと思っていたんだが...
「というわけで、それを踏まえ、そこのかわい子ちゃんは、この男の事をどう思う?」
やっぱり頭のおかしい男だこいつ... メイもずっと真顔だし、よく分からない話をするし...
「あの、この子は連れなので他の人に... 」
柔らかく追い払おうとするが、瞬間、おれの耳の横を何かが通り、その男はどこから取り出したのか、二本の指でナイフの刃の部分を挟んで持っている。
それは良く見慣れたナイフで、後ろを振り返ると、男を睨むリリーがいた。
マジか... この男、リリーのナイフを止めたぞ。
「リリー様、カズ様、ここは食堂でございます。誠に無礼な事とは存じますが、お戯れはお控えいただけますようお願い申し上げます」
メイが注意を促すと、カズと呼ばれた男はナイフを捨て、両手を広げ、肩をすくめ、おどけたポーズを取る。
それはどこかで見たようなポーズで... ふと男のベルトの方に目がいくと、剣を収める鞘はあるのに、そこに刺すはずの剣がない。
しかもよく見ると、男は顔を含め至る所にまだ新しい怪我を負っていて...
こ、こ、こいつ...
「勇者君、良く見るっていうのはそういうことだよ」
すると男は懐から仮面を取り出し、それをつける。その真っ白な仮面は、右半分はニッコリ笑顔、左半分は悲しそうな顔をしていて、どこか不気味なものだった。
「お、おはようございますリリーさん。勇者様も... あ、お久しぶりです、お兄様」
「スズぅう!愛おしの美しい妹よ!」
妹よ!?
そして男は、起きてきたスズの所へ駆け寄り、仮面をつけたまま抱きつく。
この男... 昨日襲ってきたローブの男で、しかもスズの兄だ...
第三章(上)完!明日から第三章(中)が始まります。




