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第五十七話

私の驚きを余所に、バーレク様は、


「私はモンターレ嬢の警護の責任者です。今回の責任を取り、近衛騎士を退職する事になりました。誠に申し訳ありませんでした」

と頭を再度下げる。


私は慌てて、

『少し待って下さい!それは殿下の決定ですか?』

と急いで文字にすると、その紙を見せる。


バーレク様は、


「いえ。これは私の意思です」

と答えると、再度頭を下げ、


「では失礼いたします」

とバーレク様は部屋を出ていった。


私は呆然と立ち尽くす。

何だか物凄く大変な事になってしまった。

確かに私に危害を加える人から守る立場の護衛にとって、今回の事は大チョンボだ。

しかし、バーレク様が近衛を辞める事には納得出来ない。それに、私は怪我はしたが元気だ。


護衛達、まさか処刑された訳じゃないよね?あの言い方なら、処刑まではされていない……と思いたい。

私のせいで誰かの命が失われるなんて、考えただけでも怖すぎる。


私は居ても立ってもいられず、部屋を出る。目指すはクリス様の執務室だ。


私が外に出ようとすると、廊下の護衛から、


「どちらへ行かれるんですか?今日は部屋を出ないよう、殿下に申し使っております。部屋へお戻り下さい」


「あにょ。でんかのしちゅむしちゅに…」


「はい?何と?」


紙とペンを忘れた事を私が痛烈に後悔していると、


「シビル!大丈夫なの?お見舞いに来たの」

とイヴァンカ様がやって来るのが見えた。天の助け!


私は急いでイヴァンカ様の手を引いて部屋に戻ると直ぐに筆談を始めた。

イヴァンカ様に椅子を勧めると、イヴァンカ様は私の勢いにギョッとしながらも腰を落ち着かせた。


『バーレク様が近衛騎士を辞めてしまうらしいのです。私の護衛を辞めてしまうのは、バーレク様のご自由ですが、近衛を辞めてしまうのはどうしても納得出来なくて、殿下にお願いに行きたいのですが、護衛が部屋から出してくれません。イヴァンカ様お願いします。殿下の所に連れて行って下さい』


その文字を読んだイヴァンカ様は、


「ちょ、ちょっと待って。どうしたの?喋れないのかしら?ごめんなさい、私、貴女が怪我をしたとしか聞いてなくて。バーレク卿がどうしたの?どうして辞めるの?」

イヴァンカ様は混乱している。今日の事の顛末を知らなければ、何が何やら分からないだろうが、私には時間がない。バーレク様を止めなければ本当に辞めてしまう。


『とにかく、殿下とお話がしたいんです!』

という乱れた私の文字を見て、イヴァンカ様は、


「…何だかよくわからないけど、わかったわ。殿下に私が話してくるから、少し待っててね」

と言って、クリス様の元へ向かってくれた。


イヴァンカ様が部屋を出てから少しして、キャンベル医師が部屋へ訪れた。


「シビルちゃんどう?痛み止めは効いてる」

と訊かれ、私は頷いた。

痛くないわけではないが、呻く程ではない。


「多分、明日の方がもっと痛くなると思うんだ。痛み止めを飲むなら、時間は四時間以上空けてね。

それと、口の中が切れてるし、頬も腫れて口を開き難くなってるから、食事が食べにくいと思う。

痛み止めを飲むなら食事してからの方が胃に負担がかかりにくいけど、あまり食べれないようなら、胃薬と一緒に痛み止めを飲むんだよ?はい。これ、胃薬。置いとくね」

とキャンベル医師は、胃薬をテーブルに置いた。


私はついでに、

『キャンベル様とエクルース公爵令嬢様とはお知り合いですか?』

と紙に書いてキャンベル医師に見せた。


多分親しい間柄なのだと思うので、訊いてみたかったのだ。

キャンベル医師は紙にさっと目を通すと、


「あぁ。ローザリンデと、僕とクリスティアーノは歳は違うが幼馴染みみたいなもんだ。

親の関係もあるが、小さな頃からの知り合いでね。

子どもの頃はよく一緒に遊んだが……見ての通りローザリンデは性格がキツくて。

僕達の方が歳上だが振り回されてばかりで、それが嫌になって自然と離れていった。まぁ、今でも会えば話しもするし、お茶ぐらいは一緒に飲むがね」


なるほど。気安い感じがしたのはそのせいか。

幼馴染みねぇ。そう聞いて私はオーランドを思い出した。

オーランドは何処へ行ったのだろう。

愛の逃避行なんて、全然オーランドからは想像できない。

私と同じように恋愛初心者だと思っていたのに、先を越されたようで、なんだか悔しい。

まぁ、オーランドの奥さんにしてみれば、旦那が自分の所のメイドに手を出して、その上駆け落ちされたなんて、たまったもんじゃない。


そういえばオーランドとキャンベル医師ってファミリーネームが一緒ね……なんて関係のない事を考えていると、イヴァンカ様がクリス様を連れて部屋へ戻って来た。


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