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第五十四話

私には、専属で護衛も付くようになった。

まだ王太子殿下の婚約者でしかない私だが、訳あって、近衛騎士団の三番隊が交代で私に付いている。


その中には、ミシェル殿下の護衛を務めてくれていた、バーレク様の顔があった。

私としては、顔見知りの方がいた事にホッとする。

しかし、バーレク様以外の近衛の方々には、なかなか厳しい目を向けられている事も間違いなかった。


クリス様は王太子になる前から、この国の軍部の要、第一騎士団の団長を務めている。


最初私の護衛にその第一騎士団の方々を使うとクリス様は言っていたが、王城内で、これ以上第一騎士団に大きな顔をされては困ると言ったのは、近衛騎士団の方であった。


では、どうすれば良いのか?


ミシェル殿下の場合を引き合いに出した結果が今のコレだ。


バーレク様は、


「モンターレ嬢、これも何かの縁ですね。これからもよろしくお願いします」

と笑顔で手を差し出してくれたのだが、他の方々は、私の事を歓迎していない事が丸わかりだった。


そりゃそうだろう。

私がこのまま王太子妃になれば、ゆくゆくはこの国の王妃だ。

今までこのベルガ王国で、人間が王妃になった例はない。

自分達が身を盾にしてでも守らねばならない存在が人間である事への反発は、理解出来なくもない。


敵意のある侍女に、守る事に納得のいってない護衛。

私の周りは私の味方じゃないようだ。

なかなか、刺激的な状況だな…と溜め息の数も増えてしまった。



そんな私が王城内を歩いていると、


「シビルちゃん!どういう事?」

と私の背後から大きな声を掛けてくる人物が迫って来た。


…この声はキャンベル医師だ。

出来る事なら、護衛達を無駄に緊張させないで欲しい。

護衛達は声の主がキャンベル医師だと見ると、その緊張を解いた。


キャンベル医師は、周りにゾロゾロと控える護衛を無視し、私に近づいて来た。


護衛も、流石に宮廷医師であるキャンベル様が私を害する事はないと分かっている為、近づいて来る彼には警戒を解いていた。


近付いて来たキャンベル医師に私は、


「キャンベル医師。どうされました?」

と尋ねる。


「どうしたも、こうしたもないよ!どうしてシビルちゃんが、クリスティアーノの婚約者なのさ?!」


「どうして…と言われましても、私には分かりかねます。理由は王太子殿下にしかわからないかと…」


「断れば良かったじゃん!嫌なら嫌って!」


…私、断ったんですよ。でも、受け付けて貰えなかったんです…なんて、このたくさんの護衛の前で言うのは憚られる。


「キャンベル医師…そう言えば久しぶりですね」


「あ!今、話しを逸らしたよね?」

…バレてる。


「いえ。最近お見かけしていなかったな…と思いまして」


「ずっと、実家の領地に戻ってたんだよ。父の具合が良くないからって。

でも、シビルちゃんをクリスティアーノに盗られるぐらいなら、行かなきゃ良かった!」


…お父様の具合が悪かったのなら、行って正解です。


これまでの会話を聞いていた護衛達が、若干ざわついている。

これって不味いんじゃない?

私とキャンベル医師との仲が疑われたりしないよね?


「それで…お父様は?」


「状態は落ち着いたよ。まだ後十年は大丈夫さ。そんなことより!僕が先にシビルちゃんに目を付けたのに…クリスティアーノの奴!」


目を付けたって言われても…私、それも断りましたよね?それに、お父様の事を『そんなこと』なんて言っちゃダメですよ。


「お父様が大事なくて、何よりです。

実は、私これからダンスのレッスンに行かなければならないので、この辺で失礼させていただきますね」

と私が話を切り上げようとすると、また別の方向から、今度は女性の声で、


「ちょっと貴女!それは私のドレスよ!?なんで貴女が着ているの?何処の誰かは知らないけど、すぐに脱ぎなさい!」

と聞こえると、ツカツカと近寄って来る女性の姿が見えた。


……確か、あの方はエクルース公爵令嬢のローザリンデ様だったかしら?と最近勉強したこの国の貴族の絵姿を思い浮かべていると、突然、私の頬に痛みが走った。


えっと…私、今、叩かれました?


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