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隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました   作者: 初瀬 叶


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第三十一話


私は早速、アーベル殿下が育てている薔薇を図鑑で見つけ、殿下に図鑑を見せながら報告した。

殿下はあまり花などに興味はないので、


「ふーん」

とは言っていたが、図鑑を手に取ろうともしなかった。


なら何で私に調べて来いと命じたのか…とため息が出そうになるが、グッと堪える。


今度こそ、アーベル殿下とのお茶会で話が弾みますようにと祈りながら、当日を迎えた。


はっきり言って、あと一ヵ月半もすれば、この『お試し期間』は終わる。

もしかしたら、クビ…ここを辞めさせられる前にアルティアに帰国する事になったりして…なんて笑えない想像をしてしまう。



しかし、私はその大事なお茶会の日に体調を崩してしまった。

五年に一度あるかないか…前に体調を崩した時など、とうに覚えていないぐらい昔だ。

それほどまでに私は頑丈だったのだが、流石にベルガ王国に来ると決まってから、ずっと休みなく働いてきたのが祟ったと見える。


私は殿下の部屋の隣では、殿下に病気を感染すかもしれないとの事で、医務室のベッドに横になっていた。


キャンベル医師が先程から嬉々として、私のお世話を焼いてくれている。

最初は申し訳ないと断っていた私も、熱が上がり、体を動かす事さえも億劫になってしまってからは、されるがままになっていた。


さっき飲まされた苦い薬のせいだろうか、だんだんと眠気に襲われる。

私が寝入る直前、誰かが部屋へ入って来たが、瞼が重くて目を開けられない。


きっとキャンベル医師だろう。

確認したいが、どうにも無理そうだ。

私が目を閉じている事を確認するかの様に、その誰かが私の顔を覗き込んでいる気配がする。

すると、その人物は、私の頭を撫でながら、何かを呟いた。

究極の眠気に抗えなくなった私は、その呟きが何だったのかわからないまま、眠りに落ちた。



私の熱は結局その後二日続き、仕事に戻れるようになったのは、三日後の事だった。


キャンベル医師は、


「シビルちゃん、本当に大丈夫?

本来なら、もう一日、二日は休養を取って貰いたかったんだけど。

熱が下がったってだけで、体力的にはまだまだなんだし」

と私が仕事復帰をする事に渋っている。


しかし、


「いえ。もう全然大丈夫です。薬はきちんと飲みますし、元々じっと寝てるのも飽きちゃう性格なので。働いてる方が、性に合ってます」

と、私はこれ以上休む必要はないとアピールする。


レジーとユリアにも迷惑をかけてしまった。出来るだけ早く仕事に戻りたかった。


「じゃあ、仕方ないから仕事復帰を許可するけど、もし少しでも、違和感があったりしたら、直ぐに此処に来る事!分かった?」

と私にしつこく確認してくるので、


私は、


「もちろんです。その時は、直ぐに来ます」

と元気よく約束した。


「あ、それと、この花。持って行ってよ」


私が寝ていた二日間、何故か私のベッドの横には花が飾られていた。私はてっきりキャンベル医師の気遣いかと思っていたのだが、


「僕が、って言いたい所だけど、僕じゃないよ。お見舞いみたいだけど、付いてたカードはどっかに失くしちゃったから、誰からか、僕も覚えてないや」

と言われた。


じゃあ、誰から?

……まぁ、ミシェル殿下ではない事だけは確かだろう。



私は元気に職場復帰した。

しかし、三日ぶりの殿下は…荒れていた。

とにかく機嫌が悪い。何があったんだ?!


私はユリアに何があったか訊こうとするも、じっと出来る暇がないほどに殿下からの要求が多い。


「髪型が気に入らないから変えろ」

「お茶の味が気に入らないから淹れ直せ」

「足が痛いから揉め」

「肩が痛いから揉め」

「喉が痛いから、ハチミツを持って来い」

「カーテンの色が気に入らないから代えろ」

等々。


命令の度に、私もユリアも右に左に大忙しだ。


夕方になってレジーがやって来たが、レジーの顔色が悪い。

聞きたい事が山ほどあるのに、殿下がその隙を全く与えてくれなかった。


私は、殿下が寝た後に、やっとレジーと話をする事が出来た。レジーの顔色が悪い事も気になる。


「レジー、大丈夫?顔色が悪いわ」

と私が訊ねると、レジーはしくしくと泣き出した。


レジーの話はこうだ。


アーベル殿下とのお茶会に、ミシェル殿下が着たいと言ったドレスは、お茶会には相応しくない物だった。


レジーは元々平民だ。お茶会には縁はない。

しかし、ミシェル殿下が選んだドレスがお茶会には些か派手である事はわかっていたので、ミシェル殿下にそれとなく進言するも、聞き入れては貰えなかった。


多分、口煩い私が居ないのを良い事に、自分の思い通りの装いをしたかったようだ。それに香水も山のようにつけて。


お茶会で、その姿を見たアーベル殿下は明らかに不愉快そうだったらしい。

しかも、その香水の香りにあてられてアーベル殿下は気分が悪くなってしまった。


いつもにも増して早く終わったお茶会の最後にアーベル殿下は、


「お茶会だというのに、お茶の香りもわからなくなる程の香水をつけてくるなど…。それに、そのドレス…夜会でもそこまで露出はしないのではないか?申し訳ないが、俺にはその振る舞いが理解出来ない』

と言って、その席を後にしたらしい。


レジーは


「私のせいです。私が殿下をお止めしなかったから」

といって泣いている。

一介の侍女が、王女に意見するのは困難だ。

私ですら、一応言葉を選んでいるのだ。

まだ、殿下の侍女になって間もないレジーには無理だ。


「レジーのせいじゃないわ。はっきり言って、殿下の自業自得よ」

と私は言うが、レジーは自分を責めていた。

寝不足になり顔色が悪くなってしまったらしい。


私がいつもダメだと言っている事が、何故ダメなのかを理解していない、ミシェル殿下が悪い。


多分、殿下も自分が悪い事に気づいているのだが、認めたくないのだろう。八つ当たりだ。


機嫌が悪くて扱いにくいが、私にはもうどうする事も出来ない。


ここから殿下は、名誉挽回できるのだろうか……。







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