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隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました   作者: 初瀬 叶


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第二十六話

私は動揺しながらも、殿下の部屋に戻る。


ちょうど区切りが良かったのか、フェルト女史が、


「今日はこの辺りにしましょうか?」

と殿下に声をかけている所だった。

私はすぐにお茶の用意をする。


フェルト女史はお茶を飲みながら、


「殿下もたまには、庭をお散歩してみてはいかがですか?客人であっても入れる庭園が御座いますのよ?」

と提案してくれる。


確かに、この国に来てからの約一ヶ月、殿下が体を動かしたのは、ダンスのレッスンぐらいだ。


元々、アルティアに居る頃から、殿下は外に出る事を億劫に感じており、あまり庭を散策するタイプの令嬢ではなかった。花にも殆んど興味はないらしい。


薦められた殿下は、


「気が向いたら、行ってみます」

と、気のない返事だ。


フェルト女史は苦笑いする。


きっと、今まで殿下を教えていた家庭教師なら、

『なんですか?その話し方は。貴女は高貴な身分。そんな平民のような口調では、どこにも出せませんよ』

ぐらいは言われていただろう。

まぁ、はっきり言えば、その教師の言う事が正しいのだが。


フェルト女史は、あまり頭ごなしに殿下を責めない。心が広すぎて神様じゃないかと思う。


フェルト女史は、どうやってこの国で、自分の立場を確立していったんだろう。


しかも、ランバンで辛い目にあって、その上、国を出されてからは平民としてベルガ王国にやって来たと言っていた。

それが今や、宰相夫人。


クビになるかもしれない今、私は、フェルト女史のように、宰相夫人になりたいなんて言わないから、この国でも働ける職業婦人になりたい。

後で、フェルト女史に相談してみようかしら?


私はさっきの廊下で聞いた話をまた思い出し、悶々としてしまう。


そんな私に殿下が、


「ねぇ、さっきは何処に行ってたの?」

と訊いてきた。


私は、フェルト女史も居るし、今の内に話をした方が良いだろうと判断し、


「実は、殿下に侍女をあと二人付けるというお話をされました。その二人は…人間です。獣人の方ではありませんので、殿下としても、側に置きやすいかと。

私一人では、何かと殿下にご不便を掛ける事も御座いますので、私としては、有難い話だと思うのですが。もちろん、殿下のお気持ち次第で御座います」

そう私が報告すると、


「ふーん。まぁ、いいんじゃない?シビルだけだと、私の仕度に時間掛かるし」

と言われた。


…この状況にしたのは、殿下ですよ?と言いたい。


「では、侍女長へお返事して参ります。明日から此方へ来て頂きましょう」

と私が言うと、フェルト女史が、


「シビルさんも、少し楽になりますね。お休みもなかなか取れなかったでしょう?」

と私を労ってくれた。やっばり神!


そう私が感動した矢先に、その言葉を聞いた殿下は、


「この娘、ちゃっかりサボるから、大丈夫よ。勝手に休んじゃうんだから」

と憎々しく言う。


……サボった覚えはない。全部クリス様のせい。



翌朝、レジーとユリアが殿下の部屋にやってきたのだが…。


「あの…大変申し訳ありませんが…まだ殿下は…その、起きられておりませんので、まず、私が今使っている、侍女の控え室にご案内します。どうぞ、こちらへ」

と、まだ眠っている殿下に配慮したヒソヒソ声で、私は今、自分が私室のように使っている部屋に案内する。

廊下からも、殿下の部屋からも入れるようになっている為、いつもは殿下の部屋から出入りしているが、今日は廊下側の扉から二人を案内した。


そこは元々三人くらいで使えるぐらいの広さの部屋に、一人用の寝台が三台。

鏡台が一つとクローゼットが一つに、小さなテーブルと椅子が二脚、それと部屋の隅に扉があり、侍女専用のご不浄が付いている。


今までは、私一人で使っていた為、かなり贅沢な使い方をしてきたが、今後は本来の使い方に戻る事になりそうだ、そう思っていたのだが…。


「あの…シビルさんごめんなさい。私達は此処ではまだ、通いの侍女なの」

と赤毛のレジーが申し訳なさそうに私に告げた。


「え?あ、そうなんですね。失礼いたしました。てっきり常駐だと…」


「昨日、はっきりとは伝えていなかったものね。でも、交代で夜間も控える事は出来るから、シビルさんの負担は減らせると思うわ」

とユリアが微笑んでくれた。


私は、思いきって気になっている事を訊いてみる事にした。


「お二人は…ゲルニカには…?」


アーベル殿下のゲルニカ行きは、王城に勤めている使用人は知っているようだった。

もちろん、ミシェル殿下はまだ知らないのだが。

二人がもし私の後任であるなら、その事も、もちろん承知しているのではないかと私は考えた。

しかし、此処で通いなら、流石にゲルニカには付いて行けないのかもしれない…そうすれば、私のクビはなんとか免れるのでは?という期待を込める。


レジーは、


「ええ。もしミシェル殿下が私達をお認めになれば、ゲルニカにもお供する予定よ。

通いなのは、その…此処王城に殿下が滞在している間だけなの…その…なんて言うか…私達もどうしてか分からないのだけれど」


通いであるのは、二人の都合という訳ではなさそうだ。レジーの少し困惑した様子がそれを物語っている。


もしかしたら、ミシェル殿下の性格を考えて、殿下が二人に慣れるまでは程よい距離を持たせる為なのかもしれない。


しかし、ゲルニカに行く可能性も二人は了承してる事がわかった。その事実に、ますます私の後任なのかもという思いが胸を締め付けた。



誤字報告ありがとうございました。

助かっております。

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