タイトルの話(前編)
タイトルに関しては、恐らく一番試行錯誤が多かった部分かもしれない。そして、その末に自分に合っていそうな方法を見つけることができた。その名も「分解法」。
文章というのは、単語が集まってできたものだ。それなら、タイトルも分解して小さな単位にしてみたら研究がしやすくなるのでは? というところからの発想である。
その手順について話そう。
①ランキングの1位~10、20位くらいまでで、タイトル、キーワード、あらすじにどんな単語が使われているのかを確認する。
②その中から、7回以上使用されていた単語を2、3ピックアップ。それでタイトルを作る。
③登場回数6回以下の単語を一つ、②で作ったタイトルに入れる。
④登場回数0の自分の入れたい単語を一つ、③で作ったタイトルへ入れる。
以上だ。
もう少し詳しく説明していこうと思うが、その際には分かりやすいように、私が実際にこの手順を踏んで作ったタイトルも例として記載していく。
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①ランキングの1位~10、20位くらいまでで、タイトル、キーワード、あらすじにどんな単語が使われているのかを確認する。
「1位~10、20位くらい」なのは、あまり数が多すぎても少なすぎても分析がしにくいからだ。
「確認」と書いたが、やっていることを正確に言うなら「集計」であろう。たくさん使われている単語を探るのだ。
注意したいのは、「女主人公」や「R15」などの、よく出てくるけどタイトルにはまず付けないような言葉は除外しておく必要があるということである。
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②その中から、7回以上使用されていた単語を2、3ピックアップ。それでタイトルを作る。
人が物を覚えるまでに何回の接触が必要かは諸説あるだろうが、「7回」という意見が多かったので、「7回以上使用されていた単語」にしている。「たくさん出てくる見慣れた単語=人気=入れると読み手が反応してくれる」という仕組みだ。
「7回以上使用されていた単語」と毎回書くのは長いので、以降は「定番要素」と記載する。
私が選んだ定番要素の例も出しておこう。「悪女」「王太子」「婚約者」だ。
次に、この定番要素を使ってタイトルを作っていく。私が作ったタイトルは『悪女は王太子の婚約者になりました』だ。
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③登場回数6回以下の単語を一つ、②で作ったタイトルに入れる。
実は人気のワードばかりを盛ったタイトルは、あまり見る者の食指を動かさない。「こってりしすぎ! 箸休めが欲しい!」ということである。
そこで、その「箸休め」として「登場回数6回以下の単語」を盛り込んでいく。この「登場回数6回以下の単語」も分かりやすく「準定番要素」と命名しておこう。
なお、「登場回数6回以下」と書いたが、集計した単語一覧に載っていなくても、ちょくちょくランキングで見かけるような要素なら「準定番要素」としてOKだ。
ただこれができるのは、定期的にランキングの単語集計をしている人だけなので、初回からいきなり実行するのは厳しめである。
話をタイトル作りに戻す。私が「準定番要素」として選んだ単語は「お飾り」だ。
これを②で作成したタイトル『悪女は王太子の婚約者になりました』に混ぜる。
するとこうなる。
『悪女は王太子のお飾り婚約者になりました』
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④登場回数0の自分の入れたい単語を一つ、③で作ったタイトルへ入れる。
これは読者様を書き手のオリジナルな世界観へ誘うためのステップである。簡単に言えば、王道に添える個性だ。
この「入れたい単語」を、以降は「新要素」と呼ぶことにする。
「定番要素」は読者様にとって「私、これ大好きなの!」なら、ここで出す「新要素」は「これは何かしら……? でも他のが美味しそうだったから、きっとこの子も悪くないはずね」である。
同じように表現するなら「準定番要素」は「あら、これは少し見たことがあるわ。何だか興味を引かれるわね」となる。
③で「準定番要素」を入れたのは、見たこともない単語をいきなり出す前に、少しだけ知名度で劣る言葉を出して読み手の困惑を薄めるためだったのだ。
私はこの「新要素」を「淑女のふりをした」とした。
「単語じゃないじゃん!」
とツッコミを入れた方、まったくその通りである。
実は「単語」と表現したのはあくまで便宜上のことで、正確に言えば「一纏まりとして捉えるべき言葉」の方がニュアンスとしては近かったりする。
だが、長いので以降も「単語」と呼んでいく。
さて、タイトル作成だが、③の『悪女は王太子のお飾り婚約者になりました』に、今回「新要素」として選んだ「淑女のふりをした」を入れよう。
『淑女のふりをした悪女、王太子のお飾り婚約者になりました』
これでタイトル作りは完了である。