ざまぁの話
前話でも宣言した通り、今回は皆大好き「ざまぁ」の話。
……と言いたいところだが、どうやら「皆大好き」なわけでもないようだ。どうも異世界恋愛においては、ざまぁはあまり重視されていないらしいのである。
以前にハイファンタジージャンルでお話を投稿した時に、キーワードに「ざまぁ」と入れた途端にPVとブックマークが跳ねたのだが、異世界恋愛では何度か試してもそんなことは起きなかった。
もしかしたら私の気付かないところで何かは変わっていたのかもしれないが、目立った変化はなかったので「ランキングを駆け上るためには、復讐要素を取り入れなくてはならない!」なんてことはないようである。
とは言え、主人公をひどい目に遭わせた人が野放しにされているというのも読者様的には面白くないはずだ。なので、ざまぁは入れない方がいいわけでもない。
きっと、異世界恋愛が好きな方は「復讐要素はあって当たり前のもの」くらいに捉えているのだろう。好んで摂取はしないが、必要な時にないと不満を覚えてしまうということだ。
だが、主人公をピンチに陥れた人が仕返しされない話がまったくウケないかというと、これも違う。要は描写の仕方の問題だ。
つまり、本来なら復讐の物語となってもおかしくはないが、そうはならない話を書きたければ、その「ひどい目に遭ったエピソード」を詳細に述べなければいいのだ。
例えば、主人公が国王に「お前を追放する!」と言われるシーンを入れたとしたら、読者様のヘイトは王に集まる。
けれど追放の瞬間のシーンを書かず、主人公に「私、陛下に出て行けと命じられました」と言わせて読んでいる人に彼女の身に起きたことを伝え、その後は追放先での話が続く……というような展開なら、大分読み手の感じ方も異なってくるはずだ。
キャラクターはセリフや名前を与えられた時点で命を吹き込まれるようなもの。だから、読者の皆様に特にどういう感情も与えたくない人物なら、ひたすら没個性化して背景みたいに扱うのが吉だ。
愛の反対は憎しみではなく無関心である。運良く復讐の運命を免れた悪役から、読み手の関心を逸らしてしまおう。