どんな主人公が好まれるかの話
小説の中の最重要人物、主人公。そのキャラクター性は作品の数だけあると思うが、読者様に好感を持っていただくには、どんな人でもいいわけではないようだ。
そこで今回は、どんな主人公が好まれやすいかの話をしていこう。
なお、異世界恋愛は基本的に女性主人公が主流なので、その前提で話を進めていく。
皆から好印象をもたれやすい主人公とは、以下の条件を満たす存在だ。
①積極的に動く。
②自分に原因があったり、今までの頑張りを否定したりするような欠点を持っていない。
それぞれ解説していく。
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①積極的に動く。
主人公には積極性がいる。何かが起こってから対応する、というような反応の仕方ばかりしているのは良くない。受動よりも能動が好まれるのである。
極端に言えば、殺人が起こってから犯人を見つけるよりは、誰かが死ぬ前に怪しい人にタックルをかますくらいのアグレッシブさが必要なのだ。私の書く話(特に長編)に強気な主人公が多いのはそのためである。
だが、主人公が皆強気でないといけないわけではない。世話好き、責任感が強い、勉強熱心……。その辺りの性質の持ち主でも、物語をグイグイと引っ張っていってくれるだろう。
変化球として、初めは受け身だったが、作中で起きる何らかの事件により積極性を身につけるというパターンもある。
ただ、その「事件」もなるべく早く起こすべきだ。読者の皆様に見限られない内に、素早く変身した主人公とお引き合わせするのだ。
短編などの短めの話なら、起承転結の「転」の部分で変貌ぶりを見せるのもいい。話の流れを一気に加速させることもできるので、物語が盛り上がる。
けれど主人公には積極性がいるといっても、何でもかんでも進んでやらせていいというものでもない。
主人公が積極性を見せるのは、建設的な行為に対してであるべきだ。例えば人助けとか、友人の恋を応援するとか。
では、建設的ではない行為とは何かと問われれば、困り事から逃げ回ったり、復讐したりすることが挙げられるだろう。
してはいけないわけではないのだが、エピソード数は「建設的な行為>建設的でない行為」にする方がいい。
なお、復讐……いわゆる「ざまぁ」についても色々と発見があったので、次話ではその話をしていきたいと思う。
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②自分に原因があったり、今までの頑張りを否定したりするような欠点を持っていない。
今度は欠点の話だ。
まず、「自分に原因のある欠点」は例として挙げるなら、理由もなくワガママだったりすることだ。こういう人物には読者様もムッときてしまい、感情移入できないのだろう。
次いで「今までの頑張りを否定するような欠点」。こちらも例を出すなら、主人公が人の役に立ちたかったのは、自己肯定感の低さを誤魔化すためだった、というような状況だろうか。
きっと読み手の方は、今まで応援していた主人公に裏切られた気分になってしまうのかもしれない。恐ろしいことに上記の例のような描写した途端に、バリバリとブックマークが剥げてしまったことがある。
だが、完全無欠な人物は主人公には向いていないので、悪いところが何もないというのも良くない。
「意地悪な家族に苛められている」とか「本当は有能なのに分かってもらえず冷遇」とかの主人公が多いのは、この辺に理由があるのだろう。
「欠点はあるけど、それは主人公のせいではありません! 周りが悪いんです! ですから、今後ともどうぞこの子をお引き立てください!」
そんな作者の心理が現われているのである。
このように、「欠点」はないのも良くないが、作る時には神経を使わなければならない非常にデリケートな事項なのである。