ヒーローの話
短編においては、ヒーローには主人公とのんびり恋愛だけを楽しんでいただいているのでは困る。文字数も限られた短い話の中では、彼にも他の役目を背負っていただかねばならない。
その役目とは、「ヒーローには主人公の目的達成を助ける存在となってもらう」ことである。
もっと分かりやすく言えば「何か目的を持つ主人公が、その成就を手伝ってくれるヒーローと出会う」、もしくは「ヒーローと出会って目的を見つける」という展開を用意するとスムーズだということだ。
「出会う」と書いたが、前から主人公と顔見知りのヒーローだって構わない。「読み手」がヒーローと出会って主人公の目的を強く意識する、という捉え方をしていただくと分かりやすいだろうか。
連載小説でもヒーローにこういった役目を負わせることはよくあるが、短編だとほぼ必須だ。短い話ではたくさんキャラクターを出さない方がいいので、ヒーローにも恋愛対象以外の仕事もこなしてもらわなければならないのである。
なお、短編でも連載でもヒーローが初めて出てきたシーンで意識しなければならないことがある。それが、ヒーローが読者様に与える好感度の高さである。「中~高」辺りが推奨だ。
「好感度」と言っても理解しにくいと思うので、もっと別の言葉を使うと、「初対面でヒーローが主人公にどう接するかが重要」となる。
例えば、「気が置けない友人として」や「大切な恋人として」接するのは良いが、ケンカをふっかけるような展開はいけないということだ。
注意したいのは、あくまでも「読み手」がヒーローをどう感じるか、についてである。「主人公」が、ではない。
例を挙げるなら、主人公はヒーローを蛇蝎のごとく嫌っているが、向こうは好感度MAXで接してくる、というような状況は問題ない。ヒーローは主人公のことが好きなのだから。
読んでいる方も「主人公は嫌ってるけど、このヒーローは悪い人じゃないのかも」と思ってくれるだろう。
ただ、そうなると「こんな良い人を疎んじている主人公は何なんだ」となって逆に主人公の好感度が下がってしまうので、葛藤シーンや仲直りシーンを出来るだけ早めに入れることをオススメする。
では、主人公を嫌うようなヒーローは書かない方が良いのかというと、できるだけ避ける方が無難だが、絶対にダメということはない。
繰り返すが、大事なのはヒーローの初登場のシーンだ。ここでヒーローと主人公が仲良くしている場面を書けば良いのである。
「彼にも良い一面はあるようだし、もうちょっとだけ見捨てないでおいてあげよう」
と、しばらくの間なら読者様も耐えてくれるはずだ。そして皆様の忍耐力が持続している間に、関係修復を図るのである。
もちろん「初めは仲が良かったのに、何故後で険悪になってしまったのか」という理由は考えておく必要がある。
酔って判断力が鈍っていたとか、記憶喪失になっていたとか……工夫次第で色々なストーリーを盛り込むことができるだろう。