短編の文字数を削る話
私はかつては長めの作品ばかり出していたが、色々な実験をするに当たっては短編の方がコスパがいいので、最近は短い話ばかり書いている。
しかし、「短編初心者」だった頃は、短編と長編では勝手が違うということを分かっていなかった。そのため、初めて書いた異世界恋愛の短編は長編と同じノリでプロットを立て、結果的に1万7千文字近くになってしまった。
この数字、多いと取るか少ないと取るかは人によって異なるだろう。それを象徴するかのように、「短いのにまとまっている」という、ありがたいと同時に猛者の風格が出ている感想もいただいた。
だが、私からすればこの文字数は「多すぎ!」だった。長い短編がいけないのではなくて、せめて1万文字くらいには収めたかったがゆえの嘆きである。
事実、この短編がコミカライズした時には、話が前後編に別れることになった。やはり1万7千文字は多いのだ。少なくとも、30ページ前後の読み切りマンガという枠に収まる分量ではなかったのである。
前置きはこのくらいにして、本題に入ろう。短編の文字数を削減する話だ。
結論から言うと、以下の方法がある。
①プロットの立て方に気を配る。
②暴露される真実を少なくする。
③ヒーローのバックボーンはあっさりめに。
④外野を黙らせる。
⑤問題が解決するのは主人公のみ。
順番に見ていこう。
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①プロットの立て方に気を配る。
連載小説のプロットの立て方について話すともう一本別のエッセイができるくらい長くなりそうだが、短編はもっとあっさりとした説明が可能だ。シンプルに「起承転結」を意識しながら書くのである。
ただ、1万文字に収めるためには気を配るべき事柄がある。起承転結、それぞれのパートに入れる場面数の管理だ。
具体的には
起 → 1、2場面
承 → 2、3場面
転 → 1場面
結 → 1場面
にすると、1万文字以内で収まりやすい。
私が以前に投稿した話を具体例として挙げよう。
『婚約破棄されたから、悪役令息と契約結婚して悪女となりました』(約7700文字)
起(2場面)
・「主人公の現在の境遇を説明する」場面
・「ヒーローとの出会い」の場面
承(3場面)
・「花嫁修業」の場面
・「ヒーローの過去についての説明」の場面
・「主人公が悪役令嬢になる決意を強くする」場面
転(1場面)
・「初夜」の場面
結(1場面)
・「ざまぁ」の場面
こんな具合である。
文字数がかさむ時は、「承」の部分が長くなっていることが多い。プロットを立てる際は、それぞれのパートに場面数がいくつ入っているのかに注意が必要だ。
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②暴露される真実を少なくする。 & ③ヒーローのバックボーンはあっさりめに。
長編なら色々な謎を物語に盛り込んでいって、それを一つずつ解決していくのもありだが、そういった展開はどうしても文字数を食う。なので、短編では主人公が解き明かす謎や発覚する事実は一つくらいの方が良い。
「謎? ミステリー小説じゃないから、そんなのないでしょ」
というご意見もあるかもしれないが、例えば「初対面のはずなのに、何故かヒーローが主人公にベタ惚れしている」といった展開だって、惚れている理由が分からないんだから立派な謎の一つである。
また、③の「ヒーローのバックボーンはあっさりめに」するのも「発覚する事実を少なく」したいからだ。
これは主人公の物語。たとえヒーローであっても、出しゃばるのは(文字数的には)許されないのである。
ただ、主人公の物語であるという前提に立ってみれば、ヒーローのバックボーンが主人公と関係しているようなものなら、詳しく書いてもOKだ。それはヒーローの話であると同時に、主人公の描写でもあるのだから。
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④外野を黙らせる。
「外野」というのは主人公でもヒーローでもない第三の人物である。その辺にいるモブなどがこれに当たる。先ほども書いたが、これは主人公の物語だ。余計な人たちに多くのセリフを与えている暇は(文字数的に)ないのである。
ただ、後々に復讐される敵などは少し多めに喋らせても構わない。黙って出てきて黙って退場、なんてシュールすぎるではないか。
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⑤問題が解決するのは主人公のみ。
「主人公は何らかの問題や目的を持っていて、それを適切に処理しようと動くことで物語が進んでいく」
というのは小説の基本だ。連載小説では、主人公だけではなく周囲の人も困り事を抱えており、それらが解決される展開が入れられることもある。
だが、そんなサブストーリーは文字数的には負担でしかない。なので、問題が解決するのは主人公だけにしておこう。仮にヒーローであっても、彼の目的達成のために場面を割く余裕はないのだ。
だからといって、「問題を抱えまくっているヒーローですが、物語が終わっても同じ状況でした」では読者様がモヤモヤしてしまう。だから、ちょっと工夫が必要だ。例えば、ヒーローには悩みを作らないとか。
その他、主人公と同じ目的を持っていて、「主人公が目的を果たす=ヒーローの目的も達成できた」という状態にしてしまうという手もある。