タイトルの話(中編)
前話で作ったタイトル、『淑女のふりをした悪女、王太子のお飾り婚約者になりました』で使われている単語は5つ。
ランキング上位のタイトルを分析してみた結果、そこで使われている単語は平均5つという結果が出たのでそれに合わせてみた。
ただ、タイトルの傾向などは時間経過と共に変わってくるので、分析はこれからも続いていくだろう。
だが、「ランキングに入っているタイトルは単語を5個使っているから、私もその通りにしないと!」と焦る必要はない。それ以下、もしくは以上の単語を入れたタイトルでもきちんとランク入りすることは検証済みだ。
外してはいけないのは、「定番要素」「準定番要素」「新要素」の組み合わせを意識することである。ただ、さじ加減が難しいので私もよくミスはするのだが。
この「分解法」で問題になってくるのは、ランキングに載っているのが毎回同じ単語のせいで、タイトルも似通ってくることだ。「マイページの作品一覧が『類は友を呼ぶ』な状態になってる!」と頭を抱えてしまいたくなるのである。
なので、以下の解決法を考案した。
①「定番要素」「準定番要素」の言い換えを考える。
②何かのパロディにしてしまう。
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①「定番要素」「準定番要素」の言い換えを考える。
前述の「類は友を呼ぶ現象」の首謀者は、「定番要素」「準定番要素」であることが多い。そこで彼らには、その単語が持つ意味合いは変えずに、ちょっとばかり変身をしてもらうおう。
例えば「溺愛」を「君って最高」と言い換えてみた場合はどうだろう。
タイトルを見た人は「最高? 主人公は愛されているの? 溺愛ものかな?」と考えるだろうが、見た目の印象は変えられる。
大福も赤福も同じお餅とあんこが使われたお菓子なのに、別物として扱われているのと同じ理屈だ。
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②何かのパロディにしてしまう。
これは目くらましの戦法である。読者様の目を既視感たっぷりの単語から、「あっ! このタイトルってもしかしてあれのオマージュ!?」という気付きの方に逸らすのである。
例を挙げよう。以下のタイトルを見て真っ先に何を思っただろうか。
『婚約破棄されそうでされない、少しされるかもしれない令嬢の話』
「ラー油だ!」
となっただろう。大正解だ。「婚約破棄」というワードよりも、よく知っている何かのパロディであるという事実の方が強いインパクトとして訴えかけてくるのである。
それに、普通に『婚約破棄されそうな令嬢の話』と書くよりも楽しそうに見えないだろうか?
パロディには別の良い面もある。
パロディは、相手が元ネタを知っていることが前提の楽しみ方だ。つまり、言い換えればこれも「定番要素」なのである。
それでいて、そこには元ネタとは違う性質も組み込んでいるのだから、「定番要素」でありながら「新要素」も兼ねているという美味しい役回りを果たしてくれているのだ。
例えばこんなタイトル。
『聖女、処刑されるってよ』
実は、これはタイトルの作り方の手順④で説明した「登場回数0の自分の入れたい単語を一つ加える」を完全に無視している。
それでもランキング入りしたが、これはパロディが「新要素」の側面も持ち合わせていたからなのだ。