宇宙
「カタパルトのコントロールを薫に譲渡します。いつでもどうぞ!」
「了解。i have Control.薫、出るぞ!」
そういうと同時に、俺は操縦桿のレバーを奥に引く。
ガガガっと音が鳴り、少しのGが俺の体にかかる。
俺が進むのはこの見渡す限り黒と煌びやかな光で形成された空間。
宇宙だ。
俺は今このロボットに乗り宇宙を駆らんとカタパルトを射出させている。
ああ、今から行くぜ。
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AI
お前が言っていた星へよ! そう思いながら、俺は一気に加速し、宇宙へと飛び立った。
宇宙に飛び立つこと数秒。
俺は自分の体がふわりと浮くような感覚を覚えた。
そしてそのまま、俺は加速する。
薫は、いや薫と
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俺
名付けられた戦争をするためだけに作られた強化人間である俺は、その重力という拘束が無いことにどうも口角が上がってしまう。
「ああ、お前もこの感覚を味わったんだな。」
俺の脳裏に浮かぶは、友の顔。
かつての戦争で出会った友の顔。
孤児院で育ち、三歳になる頃軍に誘拐され、催眠と人体改造で国に絶対の忠誠を誓うパイロットにさせられた俺を哀れんだ友の顔。
あの時お前は俺にこう言ったんだ
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AI
『俺たちの国では、人を殺すことが当たり前だったけど、お前にはそんなことはさせたくない。』
ってさ。
でも俺はお前らの国の兵士として戦うことを望んだ。
お前らと肩を並べて戦いたかったからだ。
そしてお前は死んだ。
敵国に特攻して死んだ。
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俺
まったく、あいつは最期までお人よしだった。
敵国に特攻したのだって、早く戦争を終わらせたかったからだ。
俺を戦争に駆り出させたくなかったからだ。
だからお前は国の命令に従い、核を機体の腕に抱いて特攻した。
たった一機で。
「馬鹿だよ、本当にお前は馬鹿だ。俺はただの戦闘マシーンなのに、そんな俺を気遣ってどうするんだよ。俺に人の温もりを教えてくれたのはあんただろ?なのによ、お前がいなくなってどうする?」
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AI
俺はもう二度とお前に会うことはできない。
ならばせめて、この戦争だけは勝ってやる。
そしてお前の墓前に報告に行くよ。
俺がこの戦争を終わらせたってことを。
お前のおかげだってことを。
そう心に誓い、俺は目の前の敵を見据える。
「まずは
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俺
敵の守りを崩す。第三小隊、付いて来いよ!」
「了解!」
計4人で構成された第三小隊の仲間たちが俺の呼びかけに答える。
ああ、全く、元気だけはいっちょ前の奴らだ。
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AI
まあ、いいか。
こいつらは全員俺と同じ戦場で戦ってきた仲間だ。
それに信頼もできる。
よし、行くぞ! そう思い、俺達は一斉にミサイルを撃ち放つ。
すると相手側の機体は次々と爆発を起こし、無残にも破壊されていく。
その光景
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俺
を見るのはもう何度目だろうか。
これを見ると俺に与えられた使命を思いだす。
俺の使命は敵を消すことだけ。
国を脅かす奴らを消すだけ。
我が国の脅威となるものを消すだけ。
俺はその為に作られたのだから。
俺はその為だけに救済されたのだから。
あぁ、見ていますか。救世主よ。
俺の心はあなたたちにあります。
見ていてください。