第7話 聖者の休日
シンの命を狙う影は休日も静かに休ませてはくれない。
だがあまりに影との遭遇率が高いとそれを不審に思うレン。
そしてそれはシンにとって辛い答えを突き付ける。
シン「今日は休みです」
レン「そうですね」
シン「外はとても天気が良いです」
レン「そうですね」
シン「よし!出掛けるぞ!」
レン「どこへ」
シン「……外!」
レン「ようは暇なんだね」
シン「ソウルブレイカー」
レン「第7話、聖者の休日」
SE(外に出た二人、とりあえず道を歩く)
シン「はぁ…いい天気だな……青い空…白い雲…さえずる鳥……俺大好き(ほぅ)」
レン「(本を読みながら)住宅地でもそんな台詞が言えるシンは天才だと思うよ」
シン「歩きながら本を読めるお前も大概だと思うがな」
レン「それはどうも」
シン「にしてもホントいい天気だなぁ…こんな日は何かが起こりそうだ…」
聖「あーっ、シン♪」
シン「……起きてしまったな;」
レン「そのようだね」
SE(前方からやってきた聖、二人に駆け寄りシンだけ見て)
聖「偶然ーっ、どうしたの?買い物?」
シン「や、天気がいいからちょっと、散歩?;」
聖「ふーん」
SE(レンを見る、が、すぐにふいっとシンに目線を戻し)
レン「?」
聖「…ねぇシン、私も一緒に散歩していいかな?」
シン「あぁ、別にいいけど」
聖「やったぁ♪」
SE(あえてシンとレンの間に入る聖)
シン「……オイ、なんでわざわざ狭い方来るんだよ…こっち側くれば?;(反対側を指差す)」
聖「いーの、私狭い方が好きだからー」
シン「はぁ…変な奴」
SE(歩き出す3人、聖はもう一度レンを見る)
レン「……」
SE(本を読むレンを見て少し目が座る、すぐにシンに向き直り)
聖「ねぇシン、次のR-0のライブはいつやるの?」
シン「さぁー…まだ未定だな、体育館も来月まで使えないし」
聖「そっかぁー」
シン「まぁ、レンもギター練習しなきゃなんねーから、時期的には調度良いのかも」
聖「…何度も言うけど、なんでこの子R-0に入ったの?」
シン「え?まぁ…なりゆき?…だよな、レン;」
レン「うん、まぁそうかな」
聖「ふーん…」
シン「つーか聖さ、なんでレンへの態度がそう厳しいんだ?」
聖「えっ!?;(ドキッとする)」
シン「なんかこう……やけに塩?対応みたいな…」
聖「そ、そんな事ないって、あはは;」
シン「あ!もしかしてアレか?好きな奴ほどいじめたくなるって奴か?(ぽんと手を叩く)」
聖「………は?」
シン「ほらっ、よくあるじゃん、気になる子の気を引きたくてわざといじめちゃうってやつ」
聖「……」
シン「実は意外とレンの事好きだったりするんじゃー…」
SE(シンの台詞を遮るようにパァンと軽快な音がする、聖は思い切りシンの頬を殴っていた)
シン「……ってぇな!;イキナリ何すんだよ!;」
聖「最っっ低!!;」
SE(泣きそうな目でシンを睨むとすぐに背を向け走り去る)
シン「あ、オイ!………なんなんだアイツ;」
レン「……今のはシンが悪いね(本を閉じてシンを見る)」
シン「ええ?…俺、何したよ…;(頬を押えてぽかんとする)」
レン「……やれやれ」
SE(泣きながら全速力で走る聖)
聖『ひどいよ…ひどいよっ、シン!』
SE(立ち止まるとすぐ傍の塀に寄り掛かる)
聖『…アイツが来たから…シンも………みんなアイツのせいだ…嫌いっ…嫌いっ……大っ嫌い!』
レン「!?」
SE(はっと立ち止まり、顔を上げる)
シン「?どうした、レン」
レン「いや…なんだか今、凄い殺気を感じて…」
シン「殺気…?」
SE(とたんにキィンと耳鳴りがし、一瞬で影の世界に変わる)
二人「っ!!」
レン「来るねっ…」
シン「っ…これ慣れねぇなぁっ…ホントっ;」
SE(レンが本を閉じ地面に置く、そしてロザリオ手に取るとそれを銃に変えて軽く構える)
シン「…俺、離れた方がいいか?;」
レン「いや、別に離れなくていい」
シン「でも…いつも思ってたけど邪魔じゃね?;」
レン「離れてたら逆に守りにくい」
シン「…さいですか;」
レン「来たっ」
SE(突然シン達の周りを囲むように影が無数に現れる)
シン「なっ、多っ!?;」
レン「数でやる気か………っ?」
SE(何かに気付いて銃を下ろすレン)
シン「って、お前なに銃下ろしてんだよ!!;」
レン「こいつら見かけ倒しだ、これなら銃を使うまでもない」
シン「だって、こんなにっ…;」
レン「そうだね、多い」
シン「だったらっ…!;」
レン「僕から絶対離れないように」
シン「〜っ…死んだらお前のせいだからなっっ!!;」
レン「あぁ、怨んでくれて構わないよ」
SE(影が一斉に襲い掛かる)
シン「ひっ…!!;(両手で頭を抱える)」
レン「…十字結界っ!!」
SE(二人を囲むように、足元から十字の光の柱が現れる、それにぶつかった影達は次々消えていく)
シン「………っ!?」
SE(影があっという間に全滅する、レンはシンを見て)
レン「…怨む?」
シン「…いえ;」
SE(影が全部消えて、あっさり世界は元に戻る)
シン「…!戻った」
レン「(銃を収めて地面に置いた本を取る)…それにしても妙だな」
シン「あ?妙って?」
レン「影との遭遇率が高すぎる」
シン「そうなのか?」
レン「あぁ、だってシンは神と言っても、まだ覚醒していない、だからはたから見たらただの一般人と変わらないんだ」
シン「…」
レン「なのにこんなに狙われるなんて…それも仕掛けてくるのは低級の奴らばかり…どう考えてもおかしい」
シン「…って言われてもな;」
レン「きっと、近くにいるんだ…奴らを使役出来るマスターグラウンドが」
シン「………おい、マスターグラウンドってなんだ?また聞いた事ない単語出てきたな;」
レン「まぁ、簡単に言えばよく現れるザコ影達のボスだよ、大体の場合は影に飲まれたか飲まれかけてる人間かな」
シン「こないだのとは違うのか?なんだっけあの、アン、アンサー…なんとか;」
レン「こないだ…あぁ、アンダーグラウンドは違う、アイツらは人じゃなくて物の影だ、古いアンティークだったり食器だったり…たまにあぁして意思を持って動くのがいるんだ」
シン「へー…;」
レン「話を戻すけどシン、周りの人間に影に飲まれてそうな人の心当たりはない?」
シン 「言い方……いやでもうーん……無いな;」
レン「そうか、仕方ないな……エル!」
SE(レンの声に反応してエルダが現れる、レンが腕を伸ばすとその上に舞い降りた)
エル「呼んだ?」
レン「あぁ、頼みたい事がある、シンの周りにいる人間で影を纏ってる奴がいるかどうか…調べて欲しい」
エル「わかったわ、10分待ってて」
レン「頼む」
SE(エルダが舞い上がりどこかへ消える)
シン「……(ぽかんとしている)」
レン「…これでよし、さ、行こうか」
シン「あ…あぁ…;」
SE(歩き出す二人)
シン「なんか…すげーな、エルダって…鳥なのにめっちゃ働き者…;」
レン「エルダはただの鳥では無いからね」
シン「つーかさ、なんでエルダって喋るんだ?」
レン「…さぁね、なんでだろう…彼女とはコンビを組んで5年になるけど、特に意識した事は無かったな」
シン「5年も喋る動物と何の違和感なく生活してたのか…;」
レン「ちなみに出会ったのは8歳の頃だけど」
シン「どちらにせよ喋る事を疑おうぜ;」
レン「や、彼女は元は人間らしいんだ」
シン「Σそうなのか!?;」
レン「なんでも悪い魔法使いに呪いをかけられて鳥の姿にさせられたとか…」
シン「や、それ嘘だよ、絶対嘘だよ」
レン「それで、運命の王子様にキスして貰わないと呪いが解けないらしい」
シン「だからそれ嘘だって!絶対嘘だって!!;」
レン「そうなの?」
シン「だってどこのグリム童話だよ!!;」
レン「でもグリム童話は大体残酷な話で夢もへったくれも無…」
シン「(遮って)夢っ!!!子供の夢っっ!!!;」
レン「…(ちょっと煩かったのか耳を塞いでる)…とりあえず僕は、エルからそう聞いて以来ずっとそれを信じてたけど…」
シン「お前意外と単純なんだな…;」
レン「失礼な」
SE(エルダが戻ってくる)
エル「レンー!」
レン「エル?」
シン「え、早くねーか?;まだ2、3分くらいしか…;」
SE(レンが腕を伸ばし、エルがそこにとまる)
レン「エル、早かったな、目的の人物は見つかったのか?」
エル「えぇ一人…それも、とびきりドス黒い影の持ち主よ」
レン「間違いなさそうか?」
エル「勿論、あそこまで澱んだのはなかなか無いわ…まるで今にも影に飲まれてしまいそうだったもの…」
レン「…可能性は高いな…」
エル「恐らく彼女で間違い無いと思う、データによれば、彼女はクリストファ学園の高等部2年A組の生徒…」
シン「うちのクラス…!;」
レン「…エル、その人物の名は?」
エル「名前は…美原聖」
シン「なっ…聖だって!?;」
エル「えぇ」
レン「確か、さっきの子だよね」
シン「だってそんな…何かの間違いだろっ!?;」
エル「でも影を纏っていたのは間違い無いわ」
シン「でも…聖が…;」
レン「…けど確かに…全てのつじつまが合うのは彼女しかいない…恐らく決まりだ」
シン「決まりって…だったらどうすんだっ;」
レン「禍の種は早急に潰さなきゃならないからね、一先ず彼女に会いに行かないと…」
シン「禍って…そんな…;」
エル「なんにせよ急いだ方が良いと思うわ、彼女かなりキてたもの」
レン「行こう」
シン「っ…;」
聖「……………」
第8話に続く