第6話 変化
その日の朝も時間に追われるシンとレン。
しかしその日の朝はいつもと違っていた。
朝から影と遭遇する2人は初めてピンチに陥る。
それは2人の関係にある変化をもたらして…。
シン「…あれ?」
SE(シンが気付いた場所は広い草原だった)
シン「なんで俺こんな所に…夢か?」
SE(辺りを見回すと後ろに大きな木が一本立っており、その下に肩より長めな金髪の人間が立っている、遠くて顔は見えない)
シン「誰かいる………誰だ…?」
SE(暫く見ているとシンに気付いたその人間が笑いかけてくる)
シン「あ………っ、くぅ!;」
SE(途端に凄まじい風が吹き抜けてシンは夢から覚める)
シン「………朝?;」
シン「ソウルブレイカー」
レン「第6話、変化」
SE(レンと共に全力疾走するシン)
シン「お前はホントに毎回毎回よく寝るなオイ!!;」
レン「それほどでも」
シン「次1発で起きなかったらマジでほっとくからな!(怒)」
レン「以後気をつけます…(言ってる側から眠そう)」
シン「ホントにわかってんのかよ!;
…そうだ言えばさ、今朝変な夢見たんだよ」
レン「へぇー…」
シン「なんかこう…気付いたら広い草原にいてさ、デカい木が一本あってその下に誰かいて…見てたらそいつが俺に気付いて笑ったんだ、そしたら強い風がふいて、目が覚めたんだよな」
レン「………診断によればそれは安定した人間関係が近々崩れる暗示です」
シン「誰が夢診断しろっつったよ、しかもなんか悪そうな感じの;(怒)」
レン「いやなんか意見求められてるのかなって思って」
シン「少なくともそういう答えは望んでなかったよ;」
SE(急に曲がり角から子供が飛び出してくる)
シン「うわっ!!;」
レン「っっ!?」
SE(シンはバランスを崩しながらもぶつかるギリギリで何とか止まる)
シン「っと…あっぶねー……だっ、大丈夫か?;(子供を見て)」
子供「うん」
レン「………」
SE(見た所幼児であろう子供が朝に一人で外にいるのを不信に思うレン、シンの一本前へ出て膝をつき視線を合わせる)
レン「君は…どうしたの?迷子?」
子供「うん、一緒にママ探して」
シン「あぁー…そっか、でも俺らも学校行かなきゃなんねーしなぁ…困ったな;」
子供「(泣きそうな目で見る)探してくれないの?」
シン「(困り果てて渋々と)んー…じゃあ探すか…;」
レン「待って」
シン「は?;」
レン「(子供を見たまま)…君は…本当にママを探してるの?」
シン「オイお前、何言って…;」
子供「………」
レン「違うだろ? 本当は…」
シン「おいレンッ?;」
レン「普通の人間なら騙せるかも知れないけど…僕を騙すのならもっと巧くやるべきだ」
シン「だから子供相手に何言ってんだよ;」
レン「子供なんかじゃないさ、この子は」
子供「…」
レン「影だ」
子供「……流石だなぁ…『マグダラ』よ」
SE(突如世界が赤黒く染まる)
シン「っ!?;」
レン「シン下がって!」
SE(レンが銃を出すと、反射的にシンは数歩後ずさる)
子供『…迅速な判断、的確な指示、素晴らしい』
SE(ユラユラと子どもの姿から黒い異形の姿に変わってゆく、同時に世界は赤黒い色に飲み込まれる)
レン「…お前は、アンダーグラウンドか」
影 『いかにも』
シン(アンダーグラウンドって何っ?;)
レン「何の用だ」
影 『聞くまでもなかろう』
レン「シンは渡さない」
影 『いつまでそう威勢よくいられるかな?』
レン 「何?」
影 『ひとつ予言をしてやろう、近いうちにお前の時計は止まる…それもすぐにだ、我にはわかる』
レン「…撹乱が目的ならあまりにお粗末だな」
影 『ふふふ、心あたりが無いわけではないと思うがな』
レン「……言いたい事は、それだけか?」影 『いや…』
SE(影がシンをちらりと見る)
影 『その魂をョこセッっ!!』
SE(異形の影がぎょろりと目のようなものを見開くと、下半分を地面と繋げてシンを飲み込もうと濁流のようにグバッと伸びていく)
シン「ひっ…!;」
レン「っ!」
SE(振り向き様にレンが発砲する、2発撃ち込み、一発は影の中にあった十字痕を撃ち抜いていた)
レン「……そう易々と彼に触れられると思うなっ」
子供『…ふ…流石…マグダラの…たまし、ぃ……』
SE(シュゥゥ…と音を立てて影が消えると)
シン「き…消えた…」
レン「…(少し息が荒い)」
シン「あれ…でもなんで空が戻らないんだ?;」
SE(シンが辺りを見回すが世界は並行世界のまま)
レン「まだいるんだ…きっと、近く…」
シン「ま、マジかよ」
レン「…(苦しそうに呼吸する)」
シン「…?お前、なんか変じゃ…」
レン「…大丈夫」
シン「いやそんな訳あるかっ、お前顔色悪いぞっ?;(レンに近寄る)」
レン「この位なんでもない」
シン「なんでもなさそうに見えねーよ!;」
レン「……来る」
シン「!?;」
SE(二人の前に地面から2体の影が現れる)
シン「なっ、2つも!?;」
レン「っ…!」
SE(レンが銃を向けようと、一度降ろした腕を上げるが、突如ガシャンと音を立てて力無く銃が落ちてしまう)
レン「あっ…!?;」
シン「ちょっ…何してんだよ!;」
レン「…っ;」
SE(すぐに拾おうとするが、ガクンと膝が折れ、そのまま動けなくなってしまう)
シン「おっ、おい!;」
レン「…;(先程よりも呼吸が荒くなっていて苦悶の表情を浮かべている)」
SE(影が向かって来る)
シン「きっ、来たあぁっっ!!;」
レン「…っ;」
シン「ぅあぁぁっっ!!;;」
エル「危ないっっ!!」
SE(影が襲い掛かったその瞬間、二人の前にエルダが現れ、瞬時に結界をはる)
シン「!?…エルダッ!;」
エル「間に合って良かった…シン!早くレンに銃を持たせなさいっっ!!」
シン「ぅえ!?あ、ハイ!;」
SE(慌ててシンは言われた通りにレンに銃を持たせる、だがレンは力が入らず、朦朧として目の焦点が合わない)
シン「…持たせるったって、コイツなんか様子が変なんですけどっ、全然銃掴まないんですけど!;」
エル「だったらアンタが支えなさいっ!」
シン「んな事言ったって…つか、お前は倒せないのかよっ;」
エル「あたしは防御専門なの!いいからやれっ!!(怒)」
シン「はっ、はいっ!!;」
SE(とりあえずレンに持たせるような形を取り、シンが支える)
エル「…よし!後は標準を合わせて引き金をひかせなさい、いちにのさんで私は結界を解いて真上に行くから、それに合わせるのよ!」
シン「お、おう!?;」
SE(言われるまま標準を合わせる)
エル「いくわよ…いち…にの…さん!!」
シン「くっ……らえっ!;」
SE(エルダが真上に飛び上がった瞬間、物凄い轟音と閃光が2体の影を飲み込む、それは普段レンが放つものとは比べものにならない程大きかった)
エル「なんて威力っ…っきゃあ!」
シン「うあっ!;」
SE(反動でシンはレン諸とも後ろにひっくり返り、エルは少し後ろに飛ばされる)
SE(少しして、光が消えると世界は既に元に戻っていた)
シン「うぅ…いてて…;」
SE(シンが倒れた体を起こす、隣ではレンがぐったりと横たわっている)
シン「なんだったんださっきの……っそうだ!オイお前っ、しっかりしろっ!;」
SE(慌てて隣でぐったりしているレンの頬をぴたぴた叩くが、レンは何の反応も見せない)
シン「嘘だろ…ピクリともしねぇ…っ;」
エル「力の使いすぎよ…だから言ったのにっ;」
シン「エルダ!;」
SE(エルダが戻ってきてレンの傍に舞い降りる)
シン「コイツ、大丈夫なのかっ?;」
エル「正直言ってマズイわ…死にはしないけど…このまま動けなくなるかも…;」
シン「マジかよ…なんとかならないのかっ…?;」
エル「…方法は…無くはないけど;」
シン「あるのかっ、どうすればいい!?」
エル「………レンに、キスするのよ」
シン「全っ力でお断りしますっ!!;(青ざめ)」
エル「冗談よ、それ以外にも方法はあるから安心して」
シン「あるならそっち言えよ!少しでも想像しそうになった自分が嫌だっ!!;」
エル「あらヤダ想像するなんてアナタ意外とムッツリなの?」
シン「違うわ!!;」
エル「冗談はさておき、まずは家に戻らないと」
シン「あ、あぁ;」
エル「またいつ奴らが現れるかわからないわ、急いでっ」
シン「わかった!;」
SE(既に意識の無いレンをおんぶして自宅に走るシン)
SE(自宅に着くと、一先ずレンをベッドに横にする)
シン「つーか、なんでイキナリぶっ倒れたんだ?コイツ;」
エル「さっきも言ったけど、力の使い過ぎなのよ、この子」
シン「力って、いつも銃から光をぶっ放すあれだよな」
エル「えぇ…ここに来てからはずっと補給も無しで力を使ってるわ…こうなるのは当然の事よ」
シン「補給って言うのは何なんだ?食事や睡眠とは違うのか?」
エル「少し違うわね、今まではそれで良かったのだけど…今はシンと契約しているでしょう?だからシンから力の供給が無いと自分では回復することもままならないの」
シン「あ、だからさっきキスしろとか言ったのかっ?;」
エル「それも一つの方法なんだもん、仕方ないじゃない」
シン「絶対嫌です;」
エル「だからしろなんて言ってないってば」
シン「じゃあ他にどうすればいいんだよ;」
エル「………だから私は契約は反対だったのよっ」
シン「…は?」
エル「本来なら契約なんて普通はしないの、こうして力の流れが生まれるから。
でもレンは貴方を守る為にどうしても必要だからって……私の忠告も聞かないで…」
シン「契約が、いらない…?……じゃあ、一体なんのためにこんなっ…」
エル「繰り返しになるけれど、貴方を守る為よ……契約しているとね、離れている時に貴方に何かあった時すぐにわかるようになっているの…少しでも貴方を守れる手札は増やしておきたいって…あの子なりの覚悟よ…」
シン「え…」
エル「……絶対こうなるって思ってた…なのに止められなかった……レンの相棒失格だわ…」
シン「………なぁエル、力の流れってのはどうしたら生まれるんだ?」
エル「…………絆は流れ、力は想い…(ぼそ)」
シン「えっ?」
エル「レンのこと苦手で受け入れ難いかもしれないけどねっ!せめてコイツじゃなくてちゃんと名前で呼びなさいっ!バーッカ!!」
SE(エルダが羽を広げ、ビャッと窓から外に出て行ってしまう)
シン「えっ、ちょっ、早っ!…行っちまった;」
SE(ベッドに横たわるレンを見る)
シン「…名前ねぇ……………そういや、呼んでなかったかもな…」
SE(暫く沈黙)
シン「いやいや、苦手なんてそんな、そもそも名前呼ぶとかそんなんで元気になんなら、ほっといても平気だろ;」
SE(やれやれと言ったように笑う、が、レンの言葉が頭をよぎる)
レン『僕は命に代えても君を守る』
シン「……命に代えても…か…」
SE(暫く考えると、レンに背を向けややむすっとしたようになり)
シン「あーっ、もうっ!; ……だからお前は寝過ぎなんだよっ……早く元気になれよな…レン」
SE(夕方)
レン「……ん?」
SE(意識を取り戻したレンが体を起こす、夕焼けでオレンジ色の室内にはシンもエルダもいない)
レン「…なんで夕方…?」
SE(ドアを開けてシンが入ってくる)
シン「お、起きたか、おはよう」
レン「あ、うん……僕、なんで寝て…」
シン「朝倒れただろ?力の使いすぎだってさ」
レン「……そういえば」
SE(シンはレンの傍まで来ると水を差し出す)
シン「ほい水、あともうすぐ飯出来るから、待ってろ」
レン「(水を受け取る)…あの」
シン「(続きを遮るように)んじゃ、早く起きて来いよな、俺は飯の用意してくるから」
レン「あ……うん」
SE(言うとレンに背を向け、そそくさとドアまで行ってしまう、が、部屋を出る前に1度足を止め)
シン「……ハンバーグのソースはケチャップでいいか?」
レン「…あ、うん」
シン「…りょーかい……早く来いよ、レン」
レン「!(ハッと驚く)」
SE(シンは出ていきパタンとドアが閉まる、一人残ったレンはふっと笑う)
レン「……初めて、呼んだね」
SE(外からその様子を見ていたエルダ)
エル「やれやれ…これで一先ずは安心、かしらね…」
ジュン「ユウ」
ユウ「あぁ?」
ジュン「そろそろ俺達も動くべきじゃないかな」
ユウ「まだ早ぇーよ」
ジュン「でも時は一刻を争うよ」
ユウ「まだだ…まだ待ってろ」
SE(二人の前には電子レンジが稼動している)
ジュン「ユウ…」
ユウ「あぁ、わかってる……くるぞ!」
SE((チーン))
ユウ「キタアァァァァ!!(嬉)」
ジュン「いやぁ、冷凍ハンバーグって時間かかるんだねぇ(笑顔)」
レン「そして翌日、学校では昨日の夕飯がハンバーグだったという話で、多いに盛り上がった」
第7話へ続く