第5話 白黒
レンを交えた日常にようやく慣れ始めてきたシン。
昼休みにいつもの4人組でトランプをしていると、ふとした事からシンとユウの間で異様に火花が散り始めて…?
SE(ヴァルシア宮殿内法皇の間、部屋の奥でステンドグラスを見上げる法衣をまとった青年の耳に、遠くから足早な音が近付いてくる)
法皇「………」
??「(低い男性の声で)失礼致します」
法皇「入りなさい」
SE(大きな扉が重い音を立てて開くと、背の高いくせ毛の長髪の男性が入ってくる、その身形は騎士を思わせる服に包まれていた)
法皇「一体何事です」
??「はい、あの方について少々気になる事が…」
法皇「……話しなさい」
??「先日また影の襲撃があった模様です」
法皇「また、ですか」
??「我々が思っている以上に、あの方の身は危ないのではないでしょうか」
法皇「……」
??「この際やはりあの方の身はここで…」
法皇「いえ、まだその必要はないでしょう…私はあの子の力を信用している、もう少し様子を見ます」
??「……はっ!仰せの通りに」
シン「ソウルブレイカー」
レン「第5話、白黒」
シン「………;」
レン「………」
シン「…………っこれだぁぁ!!」
SE(シンがハートのキングを出す)
レン「…シン、切り札は最後まで取っておくものだ」
SE(レンがスペードの2を出す)
シン「あーっっ!!;」
レン「はい、僕あがり」
SE(昼休み、今日は屋上でパンを食べた4人、現在は食後のトランプ中)
ユウ「やーいシン負けー♪」
シン「黙れ毎回貧民の分際でっっ!!;(泣)」
ユウ「俺今回は勝ったもんね♪」
ジュン「まぁまぁ、たまには位が変わってもいいじゃない(笑顔)」
シン「うっせ!!黙ってろ永続大富豪っ!!;(泣)」
レン「シンて意外とゲーム苦手?」
ジュン「そうだねー、1番抜けになった事は殆ど無いね」
ユウ「シンはなんでも深く考えすぎんだよ」
シン「っせーな;俺は策士なのっ、戦略たててやってんだよっ;」
ユウ「お前が策士ぃ〜? そもそもトランプに策略はいるのか?」
ジュン「どちらかと言えば駆け引きとか心理戦だよね」
二人「シンはどっちもダメだからなぁ〜(ハモリ)」
シン「うっせー!ほっとけ!!;(泣)」
レン「……戦略って事はチェスとかなら得意なんじゃない?」
シン「チェス…?」
レン「うん」
ユウ「そーいやチェスとかやったことねーな」
ジュン「あれ難しいからねぇ」
シン「ユウの場合は頭がついてこないだけだろ;」
ユウ「あぁ?貴様この俺様の有り余る才能を愚弄するかっ!」
シン「何が才能だよ、テスト毎回最下位に近いくせに;」
ユウ「それは俺が力を温存しているからだ!」
シン「いやテストだから発揮しろよっ!;」
レン「(ふむ)………だったらしてみたら?チェス」
ユウ「え?」
ジュン「あぁー、いいね、そしたらユウに才能があるか、シンに向いてるのか、どっちもはっきりするし(笑顔)」
ユウ「い、いや」
シン「無理だって、まずルール理解すんのも難しいんじゃねーの?(ニヤリ)」
ユウ「(カチン)ほーう、それは宣戦布告か?シン(怒)」
シン「いーえ真実を述べているだけですが(ニヤ)」
ユウ「面白れぇ…その勝負、受けて立つっっ!(怒)」
シン「はっ、望むところだ、来いよ!」
二人同時『俺の才能頭脳で返り討ちにしてやるっ!!(怒)』
ジュン「ははは、なんか凄い事になってきたねぇ(笑)」
レン『何気にこの人ちゃっかり難を逃れてるな…;』
SE(放課後、R0部室)
ジュン「はい、視聴覚から借りて来たよ、チェス」
SE(ジュンがチェスボードを持って来る。床に置くと、それを挟んでシンとユウが向き合って座る)
レン「じゃあルールを説明するよ」
SE(レンが間に入り、駒を並べ始める)
レン「まずこれが基本位置、ここから互いに駒をすすめて行くんだ、駒によって動ける範囲が違うから気をつけてね」
シン「あぁ」
ユウ「…;(真剣)」
レン「次に動かし方と勝つ条件だけど、まずこれがポーン、これは前方に一つ進むことができる、例えば−…」
SE(それから20分程説明が続く)
レン「…こんな感じで、先にキングを取った方が勝ち、わかった?」
シン「………なんとか…;」
ユウ「とりあえず取りゃいいんだろ、取りゃ;」
レン「うん、早い話はね」
ユウ「よし!ならもう早速やるかっ!」
シン「大丈夫かよ;」
ユウ「はっ、敵に情けをかけると今に痛い目見るぜシン(ニヤリ)」
シン「(カチン)っほーぅ、デカい口叩けんのも今のうちだからなユウ(怒)」
二人『返り討ちにしてやるっ!(睨み合い火花が散る)』
レン「(火花散ってるし…)じゃー、まずは先手後手を決めるよ」
シン「うしっ!」
二人「せーの!じゃーんけーん…」
SE(シンがグー、ユウがパー)
シン「んのおぉぉぉぉぉっっっ!!;」
ユウ「っしゃあぁぁぁぁっっっ!!!」
レン「Σ!!;(ビクゥ)」
ユウ「先攻決めるとこから負けたぁ、先が思いやられるなぁ〜シン♪(ニヤニヤ)」
シン「くっ…まだだっ、俺の力はこんなもんじゃねぇぞっ!;」
レン「………この人達なんで開始前からこんなに白熱してるの(面倒くさそうな目)」
ジュン「てゆーかじゃんけんに力関係無いけどね(笑顔)」
ユウ「いくぞ…」
二人「決闘っっ!」
SE(凄まじい火花が散る)
レン「遊●王…?」
ユウ「まず俺からだっ、白のポーンをDの4へ移動!ターンエンド!」
シン「ならばこっちは黒のポーンをDの5へ!ターンエンドだ!」
ユウ「白のポーンをDの6へ!」
シン「黒のポーンをDの4へ!」
ユウ「白のポーンを!」
シン「黒のポーンを!」
ユウ「白を!」
シン「黒を!」
ユウ「白!」
シン「黒!」
SE(白熱とした激闘は、その後15分続いた)
二人「…;(睨み合って息切れ中)」
レン「…」
ジュン「…(笑顔)」
ユウ「…降参するなら今の内だぜ;」
シン「は…そんなもんするかよ……これでっ…終わりだぁぁぁっ!」
ユウ「なっ、何ぃっ!?黒のナイトだとぉっ!?;」
シン「チェック…メイトオォォォ!!(カッッッ!!←駒を置いた音)」
ユウ「ぐあぁぁぁぁーっっっ!!;;」
SE(チェス板が眩しく光る)
レン「…(呆れ顔)」
ジュン「…(笑顔)」
SE(勝負が決する。ユウとシンは息切れしながらその場に倒れ込む)
ユウ「……くそっ…俺の負けかっ…;」
シン「いや…お前はよく戦ったよ…あの時ビショップを使われていたら…俺は負けていた」
ユウ「シン…」
シン「お前は最高のライバル…いや、戦友だ(爽)」
ユウ「シン……あぁ、俺達は戦友だ…最高の戦友だ(爽)」
シン「ユウ…」
ユウ「シン…我が友よ…」
SE(やたらキラキラしている二人、夕日すら見える)
レン「……………なにコレ(怪訝そう)」
ジュン「あまりの激戦に友情が生まれたみたいだね(笑顔)」
レン「いやそれ、これまでの友情はどうしたのさ…」
ジュン「とりあえず勝負はシンの勝ちだね」
レン「お疲れさま」
シン「いや!まだだ!」
レン「へ?」
SE(シンが起き上がる)
シン「俺はまだラスボスを倒してねぇ!」
レン「ラスボスって…」
SE(シンがレンを指す)
シン「お前だっ!」
レン「…僕?;」
シン「お前は俺達にチェスを教えた…つまり師匠!(?)故にお前を倒さなければ俺は真の勝者とは言えない!」
ジュン「わー凄い、何言ってるのか全然わからないよシン(笑顔)」
ユウ「あー?いいよもう疲れたし、みんな休もーぜ?;(と言うより飽きただけな人)」
レン「………(何か考えている)」
ユウ「…レンたん?」
レン「……いいよ」
ユウ「は?」
レン「この僕にチェスを挑むなんていい度胸だ、受けて立つよ(不敵な笑み)」
ユウ「えぇ?ちょ、マジで?;」
レン「あぁ、もちろん」
シン「よし、なら早速じゃんけんで先攻を…」
レン「その必要はない、シンが好きな方を選んでくれて構わないよ」
シン「…ほーぅ、自信マンマンだな;」
レン「と言うより、端から負けてあげるつもりは無い(不敵に笑う)」
シン「!(カチン)選ばせた事…後悔させてやるぜ(怒)」
レン「そっちこそ、秒で終わらせないように気をつけてね」
SE(やっぱり火花が散る)
ジュン「あー……あれだね、チェスはきっと人を惑わせるんだね」
ユウ「つーかレンたんてあんなキャラだっけ?;」
シン「よし!じゃあ先攻は俺が貰う!(白のキングを掲げる)」
レン「いいだろう、じゃあ僕は後攻で(静かに黒のキングを指で取る)」
シン「いくぞっ…」
SE(向き合って座る)
二人「デュエル!」
ジュン「やっぱりデュエルかぁー(笑顔)」
シン「まず俺だ!白のポーンをD4へ!」
レン「黒のナイト、C3へ」
シン「ポーンをD5へ!」
レン「黒のポーンをD4へ」
シン「よしっ!D4のポーンでD5の相手ポーンを撃破!」
SE(シンが黒のポーンを奪う)
シン「はっ、しくじったんじゃねーの?(ニヤリ)」
レン「そのようだね、若干読み間違えたみたいだ(でも余裕そう)」
シン「(くっ…コイツ;)…ナイトをC3へ!」
レン「黒のナイト、C6」
シン「…ナイトをCの6だ!」
レン「ビショップをBの4へ」
シン「(コイツ…早いっ;)……ビショップをB5へ!;」
レン「…手が遅れてきたね(チェス板を見つめて駒を進めながら)」
シン「うっ、うっせ!そっちこそ自分の心配しろよな!;(少し迷って駒を置き、レンのを奪う)」
レン「シンは今目の前に見えているものしか見えていないんだよ(駒を動かす)」
シン「はぁ?何言ってんだ;(レンを見てから少し間を置いて駒を動かす)」
レン「だから見えない所から攻められれば、確実にシンは足を掬われる(シンが駒を置いたのを確認して、自分も駒を動かす)」
シン「だから何言ってんのかわかんねーって;(レンとチェスを交互に見て戸惑いながら駒を動かす)」
レン「チェック」
シン「は?;(ピタッと動きが止まりチェス板を見る)」
レン「シンは今そこからナイトを動かした…一見守りを固めて僕の懐に攻め込もうとする盤面に見えるけど…同時に君のキングは逃げ場を失った……残された唯一の活路の延長線上には…何がいる?」
シン「…黒のクイーン…;」
レン「シンのキングは自分の駒に囲まれて逃げられない、つまりこれで…」
SE(クイーンの駒をレンが動かす)
レン「チェックメイトだ(シンを見てにっと笑う)」
シン「っっ!;」
ユウ「レンたんすげーっっ!!」
ジュン「ほぼ瞬殺だったね(素直に驚いている)」
シン「っっ…;」
ユウ「強ぇー、レンたん完全勝利じゃん!」
ジュン「シンて学年でもかなり頭良い方なんだよ?なのに破っちゃうなんて…大会記録かなんか持ってそうだよね(笑顔)」
レン「そーゆーのは無いけど…場数じゃないかな、前いたとこではよくやってたから…」
SE(チェスを片付け始めるレン)
レン「とは言えシンも中々強かったよ、さっきルール覚えたにしてはかなり…」
シン「…俺ジュース買って来るわっ!;」
SE(急に部屋を出ていくシン、扉を多少乱暴に閉めたので周りは少し驚いている)
ユウ「…な、なんだアイツ、どうしたんだ?;(きょと)」
ジュン「負けたのが悔しかったのかな?;」
レン「……(シンの出て行った方を見つめている)」
SE(自販機の前でぼーっと立っているシン)
シン『はぁ…カッコ悪いなぁ…俺』
SE(ぼーっとしながらお金を入れる)
シン『頭が良くたって…弱かったらなんの意味もねぇじゃん…』
SE(お金を入れている)
シン「…はぁ」
SE(横から手が伸びて来て、ピッとホットのコーヒーを押す)
シン「ん?;」
レン「1500円も投入して何買うつもり?」
シン「なんでいるんだお前;」
レン「ついてきたから(落ちて来たコーヒーとお釣りを取る)」
シン「何しに来たんだよ…は、まさか笑いに来たか?;」
レン「仮にわざわざ笑いに来た所で、僕には何のメリットもない(コーヒーとお釣りをシンに手渡す)」
シン「じゃあ何しに…」
レン「慰めてあげようかと思って(自分もポケットから財布を出して自販にお金を入れる)」
シン「よ、余計なお世話だっ!;」
レン「そう?なら別にいいんだけど(ミルクティーを押す)」
シン「いいからさっさと戻れよ;」
レン「シンが戻る時一緒に戻るよ、それまではここにいる(落ちて来たミルクティーを取り、開ける)」
シン「…うざ;」
レン「それはどうも(一口飲む)」
シン「(少し俯いて)……俺、弱いよな…」
レン「さっきも言ったけどそんな事はない、シンは要領も飲み込みも良い、場数さえ踏めばすぐに強くなるよ」
シン「…」
レン「何事もね(シンを見上げる)」
シン「………お前って、変な奴;(ふっと笑みを見せる)」
レン「それはどうも(一緒になってふっと笑う)」
シン「あー、なんかどうでもよくなってきたな!」
レン「それはよかった」
シン「よし……部室戻るか(にっと笑いかける)」
レン「そうだね」
SE(二人がそこを立ち去る)
聖「………」
SE(陰でその様子を聞いていた聖、二人がいなくなり、少ししてそこを立ち去る)
SE(部室に戻った二人)
シン「ただいまー(ドアを開ける)」
ユウ「遅せぇー!!(ギターのピックを飛ばす←時速160キロ)」
シン「キャーッッ!!;(ドアを閉める)」
SE(ピックがドアに刺さった)
シン「(ドアの向こうから)てめぇ!ユウ!!イキナリ何さらすんじゃダァホ!!;」
ユウ「るせぇ!八つ当たりじゃボケカス!!(怒)」
レン「タチ悪いなソレ;」
SE(レンがドアを開けてシンの前に立つ)
レン「ただいま、今度はどうしたの?」
ユウ「どーしたもこーしたもあるかよ…コイツが…(ジュンを指差す)」
ジュン「いやー、二人がいなくてヒマだったからチェスやったんだよ、そしたらさ…」
ユウ「こいつ秒で俺にチェックメイトしやがったぁぁぁぁ!!;(泣)」
シン「えぇー…?;」
レン「…ホントだ、ほとんど互いの駒動いてない;(チェス板を見る)」
三人『…この人、何者なんだろう…;(ジュンを見る)』
ジュン「?(笑顔)」
SE(ぼーんぼーんと4時半の鐘が鳴る)
ユウ「お、もうこんな時間か」
ジュン「そろそろ帰る?」
ユウ「そうだなー、なんか今日は疲れたし;」
シン「まぁ俺も疲れてはいる;」
ユウ「よし!今日は撤収撤収!」
ジュン「はーい、帰ろ帰ろ(チェスを片付ける)」
レン「はいシン、鞄(鞄を差し出す)」
シン「あぁ、サンキュ」
SE(シンが鞄を受け取ろうとする、と…)
シン「…あれ、お前なんか…」
レン「え?」
シン「………ごめん、俺ら先帰るわ!」
ユウ「は?」
シン「後片付け任せた、ほら行くぞ!(レンの手を引っ張り部室を出る)」
レン「は?え?;」
SE(二人が出ていく、後に残されぽかんとするユウとジュン)
ユウ「…なんだアイツら?」
ジュン「……あぁ、なるほど」
ユウ「何が?(ジュンを見る)」
ジュン「このチェス、実はマグネットだった(笑顔)」
ユウ「どうでもいいよ」
SE(家に着いたシンとレン、家に入るなりシンは鞄をレンに預けエプロンを着ける)
シン「お前ソファ座ってろ、あ、あと鞄頼む」
レン「それはいいけど…どうしたのいきなり」
シン「だってお前なんか手ぇ震えてんじゃん、自分で気付いてねーのかもしんないけど」
レン「(自分の手を改めて見ると小刻みに震えて痺れる感覚を覚える)…言われてみれば確かに…」
シン「昨日も一昨日も夕飯食べずに寝ちまったし、朝は寝坊するわ、まともに食ったの昼だけだろ?」
レン「そうだね」
シン「だから今日は俺が美味いモン作ってやる!お前ちっこくて細いからもっと食ってガタイ良くしねーとなっ」
レン「…でもシン料理できるの?」
シン「こう見えて料理スキルは意外とある方だから安心しろって」
レン「…はぁ…(ポカンとしている)」
レン『そして出て来たオムライスは、本当に本当に美味しかった……でも彼は知らない、この手の震えはそんな簡単な物じゃない事を…』
シン「美味いか?(笑顔)」
レン「うん、凄く」
シン「そーかそーか、たくさん食えよー♪(褒められると嬉しい人)」
SE(食べながらスプーンを持つ手を見てきゅっと握る手に力を込める)
レン『……気付かれないようにしないとな…』
第5話 完
ちょっと幕間そうるぶれいかー
レン「ちなみにチェスの先攻後攻を決める方法は公式でちゃんと決まってるんだけど、2人があまりに暑苦しくて説明が面倒だったのでそのままジャンケンしてもらいました」
エル「本来のやり方が気になったそこのアナタは「チェス 先攻」でレッツ検索よ☆」