第1話 序曲を奏でる銃声
普段通りの一日になるはずだった日常は1人の転校生と出会った事で急激に変化する。
突如赤黒く染まる世界、得体の知れない化け物。
そしてシンは衝撃的な現実を突き付けられる…。
シン「ソウルブレイカー」
レン「第1話、序曲を奏でる銃声」
SE(昼も近づいた授業中)
エリ「…となるからこのXはここのAと同じ事になり、更にこのYが…」
シン「…」
SE(ぼんやり外を眺めるシン)
シン『……俺、なんでガンつけられてたんだろ…』
SE(シンが隣の席を見ると、レンは黙々と授業を受けている)
シン『そういやコイツ…もう4時間目なのに、まだ誰ともろくにしゃべって無いような…休み時間とかもすぐ一人でどっか消えちまうし…もしかして人見知り?恥ずかしがり屋?』
SE(そこまで考えると何かを閃き)
シン『そんならもうすぐ昼メシだし、コイツ誘ってみっかな!ユウとジュンもいることだし…うん、俺頭良い!』
ユウ「おい、シン」
SE(すぐ後ろの席からユウが声をかける)
シン「なっ、何だよ;」
ユウ「頭良いとかフツー自分で言わねーし」
シン「人のモノローグ読むなぁぁ!;」
聖「センセー、二人が煩くて授業に集中できませーん」
エリ「二人ともー、静かにー;」
レン「…」
SE(昼休みに入り、賑やかなざわつきに包まれていく)
シン「っあ゛〜、足いてぇ〜…;」
SE(ぐったりしたように椅子に座りこむシン)
ユウ「お前のせいであれからずっと立たされてたじゃねーか、どうしてくれる」
シン「やかましい、テメェけろっとしやがって(怒)」
SE(隣からガタンと椅子を引く音、レンが立ち上がる)
シン「あっ…(気付いて呼び止めようとする)なぁお前ー…」
ユウ「(シンの「お前」に被って)さーて昼飯行くかぁー、ホラ行くぞシン」
シン「(後ろから襟を掴まれる)ぐはっ!;」
ジュン「二人ともー、学食行こ……ユウ、シンがなんか死にそうだよ」
ユウ「あぁ?大丈夫だって、こん位で死ぬ奴なんかいねーし」
ジュン「意識は失うと思うよ」
ユウ「そしたらレッツ三途の川観光ツアーだな(笑)」
シン「んなモンさせんなっ!;」
ユウ「元気じゃねーか、ほら行くぞポチ」
シン「やめっ、引っ張んなっ…ホントに、死ぬ…;」
SE(霞み行く視界に教室を出ていくレンが見える)
シン「あぁー…転校生…(泣)」
SE(学食で日替わりランチを食べる3人)
ユウ「そーいやシン、何をあんな真剣に考えてたんだよ?」
シン「あ?転校生だよ、転校生」
ジュン「転校生ってあのちっこいの?」
ユウ「ってあれ男じゃん…シン、お前まさか、そっちの気が…(ドン引き)」
シン「ちゃうわ!(怒)」
ジュン「そっか…まぁ人の好みそれぞれだからいいと思うよ…うん」
ユウ「幸せになれよ、シン」
シン「……お前ら、後で覚えてろよ(怒)」
SE(同じ頃、立入禁止の屋上にはレンの姿があり、肩と同じ高さまで挙げた左腕には一羽の鳥がとまっている)
レン「…何か反応はあったか?」
エル「いいえ、まだよ…こちらの様子を伺っているようにも思えるわね」
レン「そうか…」
SE(しばしの静寂、3拍程)
レン「エルダ、警戒していてくれ、恐らく奴はもう…」
エル「わかったわ」
SE(エルダが翼を広げて空へ舞い上がる)
レン「…」
SE(帰りのHRが終わり、生徒達が部活や帰宅などで各々の時間に入っていく)
シン「は〜…今日も終わったな〜(首を鳴らす)」
ユウ「シーンー、まだ終わらせねーぞー、部活行くぞー」
SE(背後からゆっくり首を締める)
シン「待ってユウさん、締まってる、ゆっくり締まってる!;」
ユウ「違げぇよ、締めてんだよ」
シン「尚悪いわっ!;」
SE(遠くからジュンが二人に声をかけ)
ジュン「二人ともー、俺先に部室行ってるよー?」
SE(教室を出ていく)
ユウ「あ!待てジュン、俺も行く!…シンも早く来いよ!?」
SE(シンを解放してユウもすぐジュンの後を追う。残されたシンはぐったり机に伏せる)
シン「…あのやろ…マジで三途の川見せるつもりかよ…;」
SE(ふと隣を見るとレンは既にいない)
シン『転校生は…いない、帰ったのか?早いなー…』
SE(疲れてうとうと目を閉じようとする)
シン『あー…なんか眠みぃ…心なしかダルいし…なんでだろ…なんか…空間が、重い…』
SE
シン「……っ!?」
SE(突然、耳鳴りのようなものがする。シンが痛みで体を起こすと、つい先程までざわついていた筈の教室内が一瞬にして静かになっていて誰もいない)
シン「な…なんだこれ…」
SE(窓の外には赤黒い空が広がっており、昼下がりの学校の雰囲気などかけらもない)
シン「誰も、いない…?さっきまであんなに煩かったのに…それになんだこの空…どす黒い赤みたいな…気持ち悪ぃ…;」
SE(しばし静寂、2、3拍)
シン「ちくしょ…何だよ、コレ…夢…?;」
レン「違うよ」
シン「っ!?;」
SE(背後から声がする、慌てて振り返ると教室の入口にもたれ掛かるレンがいる)
シン「お前っ…転校生!」
SE(シンはそう言うと、人がいた事に嬉しそうにしてレンに近付く)
シン「よかった、お前は無事だったんだな…なんか突然みんなが消えちまったから俺…」
レン「それは違う」
シン「へ?」
レン「消えたのはむしろ僕達だ」
シン「?…ま、待てよ、意味がわかんねぇ…;」
レン「ここは並行世界、元の世界と並んだ影の世界、つまり僕等は影の中にいる」
シン「…どーゆー事?;」
レン「光に当たると影が出来るだろう?その中にいるようなものだよ」
シン「…なんで?;」
レン「君が呼んだから」
シン「はい?」
レン「君が呼んだ、影と、僕を…だから僕はここにいる」
シン「…お前、不思議ちゃんか?;」
レン「そう思いたければどうぞ」
シン「はぁ……じゃあ、どうしたら帰れるんだ?;」
レン「空間の主を消せばいい」
シン「主って…」
レン「……来るよ」
SE(キィン、と耳鳴りが再びする)
シン「っ…さっきからなんだこの音っ…」
レン「ここは危険だ、外に−…」
SE(突如、廊下をゴパッと黒い影が覆う)
二人「っ!?」
影「ミツケタ…」
シン「わっ…わあぁぁっ!;」
レン「ちっ…!」
SE(レンがバシンッとドアを閉め鍵をかける)
シン「な、な、何だアレっ!;」
レン「影だよっ…少し長話しすぎた…」
SE(言いながらツカツカと反対の窓へ歩く。扉の外は真っ暗になっており、ガタガタと扉を破ろうとしている)
シン「な、なぁどうすんだよっ;」
レン「外に出る」
シン「つったって外にはアレが…」
レン「窓から飛べばいい」
シン「は!?何言ってんだ!ここ3階だぞ!?;」
レン「アレに飲まれたい?」
SE(今にも扉を破りそうな程ガタガタしている)
シン「っ…;」
レン「死にたくないだろ?」
シン「落ちたらそっちのが死ぬだろっ!;」
レン「僕がいる限り転落死は有り得ない」
シン「でもっ…」
レン「大丈夫、君は必ず僕が守る…その為に僕はここへ来たんだ」
シン「…?;」
SE(ガタン!と一際大きな音がする)
シン「くっ、来るっ;(扉を見ながら)」
レン「一緒に飛ぶよっ!(窓を開ける)」
シン「ち…きしょ…こうなりゃヤケだあぁぁっっ!!;」
SE(開いた窓に足をかけ、シンがぎゅっと目を閉じ勢い良く飛び出す、その後をレンが追って飛び出すと、同時に背後から影が扉を破り溢れ出して来る)
シン「うわぁぁぁぁぁっっっ!!;」
レン「エルダッ!」
SE(レンが落ちて行くシンの体を引き寄せ抱き抱える。呼び掛けに反応してザァッと光の帯が二人の下に入り込み、包むように受け止めると、二人を地に降ろして消える)
シン「(ゆっくり目を開ける)…生きてる;」
レン「だから言ったろ」
シン「…お前、一体…;」
SE(レンがその小柄な体には似つかない大きめの銃を取り出す)
シン「なんだそれ…銃?てかどっから出した;」
レン「来るよっ」
シン「え」
SE(途端、再びゴパッと頭上の窓から影が溢れ出して来る)
シン「わ…うあぁぁぁぁ!!!;」
レン「ボサッとするな!」
SE(シンの腕を引き、レンは建物から離れる。影はビシャッと床にぶつかる)
シン『(泣きそうになりながら)なんだコレ…なんなんだコレ…あの黒いのと言いコイツと言い…一体何がどうしちまったんだっ…;』
レン「よし…ここでいい」
SE(十数m離れた場所でレンが立ち止まる)
シン「な、何止まってるんだよっ…;」
レン「僕から離れないように」
シン「逃げるのが先だろっ!;」
レン「防戦だけじゃアレには勝てない」
シン「つったってどう対抗すんだよ;」
SE(影が形を成して襲い掛かってくる)
シン「き、来たっ;」
レン「……神の声に答えよ」
SE(二人の足元が大きく十字の光で囲まれる)
シン「ひっ…」
レン「十字結界っ!」
SE(レンがそう言うと同時に影が突進してくるが、光の壁にバチバチと阻まれる)
シン「な…なんだこれ…壁っ?;」
レン「対魔道具十字結界、そう簡単には破れないよ」
SE(ガシャッと大きな銃から弾の装填音がする。結界を破ろうとぶつかる影に逆十字の模様が僅かに見え隠れしている)
レン「さぁ、終わりにしようか」
シン「あ…」
SE(レンが影に銃口を向ける)
レン「…王手」
SE(直後激しい轟音と共に眩しい閃光を放つ)
シン「っくぅ…!;(眩しさに目を閉じる)」
SE(少しして光が消え始め、シンがゆっくり目を開くと影は消えている)
シン「…っ奴は!?」
レン「消えたよ」
SE(レンは銃から空薬莢を取り出して、新たな弾を1発再装填してそれをしまう)
シン「お前…今何したんだ?」
レン「銃で撃っただけだ」
シン「撃っただけって…お前一体…;」
レン「…僕はヴァルシアの法皇陛下直属部隊『神の聖団』に所属する対魔能力者」
シン「エクソ、シスト…?」
レン「この度法皇陛下の任を受け、君の命を護る為に来た、今この時をもって君は僕の主、だから僕は命に代えても君を護る」
シン「……なんで…なんで俺の命を守る必要があるんだよ;」
レン「君の魂は神の生まれ変わり、故に君は今まさに世界の神そのものだからだ」
シン「俺が…神…?」
SE(空がシンの目の前で元の色を取り戻して行き、辺りは何事も無かったようにざわつき始めた)
第2話へ続く