対価と情報
「じゃあ、俺が持ってきた情報は役に立つと思うけどな。」
俺がそういうと4人全員が真剣な表情になる
「じゃあ、話をしようか。君たち3人は黙って聞いててね。話がややこしくなるのは嫌だし。」
3人はそう言われるとそれぞれ返事をし王座の横に並ぶ
先程のやりとりが茶番だったかのように感じるほどに
スムーズに進む
俺としては
はじめからその姿勢で話を進めて欲しかった…
はぁ………
まぁ、ぐだぐだ1人で思ってても仕方ない
さっそく本題に入るとしようか
俺は王を見据え、改めて言う
「俺は情報屋クラウン。対価に見合っただけの情報を提供しよう。これは対等な契約である。そちらが求める情報の対価は?」
俺がそう問いかけると全員が不思議そうにこちらを見る
「君が情報を持ってきたんじゃないか。それをどんな内容かも教えずに対価を聞こうとするのはおかしくないかな?」
「あなたが今、1番欲している情報を持ってきた。」
俺は知っている
この国の王は何を1番知りたいのか
だから問う
「俺が持ってきた情報の対価に何を差し出す?」
そう問うが少しの沈黙のあと
「僕が1番欲しい情報だって?君は僕が何が知りたいかわかるのかい?それに内容も聞かずに対価など考えられるはずがないよ。適当に言ってるだけかも知れないだろう。」
にこにこと笑ってはいるがこちらを警戒している様子がわかる
まぁそう言われることは予想していたが
「聞く前から対価など考えられないのは当たり前だよな。」
それが普通の反応だ
今まで相手してきた客たちも同じ反応をしてきた
だがな、
「だがな、1つ間違っている。俺はあなたが1番欲している情報だと言ったはずだ。その上で、対価を聞いている。俺は対価に見合った情報を提供するってだけだ。情報が先ではない。対価が先だ。」
王は一瞬、呆気にとられたがすぐに元の表情に戻る
「それはなかなかに面白いことだね。情報の内容を聞く前に対価を決めるなんて。でもね、僕としては君が持ってきた情報を別に聞かなくたっていいんだよ?」
何を言われようが俺のスタンスは変わらない
対価に見合った情報を提供するだけだ
ここで王が無視できないことを一言、ぽつりと言う
「王妃」
「っ!!!!」
俺がそういうと王は目を見開きこちらに身体を乗り出してくる
焦ったような
それでいて何かに縋るような雰囲気を纏って俺に問いかけてくる
「君は王妃の何を知っているんだい?どんな情報を持ってきた!!」
王がそう問いただすが
「言っただろう。あなたが1番欲している情報だと。それを聞きたいのなら対価を示せ。俺は対価に見合った情報しか提供しない。」
俺は1歩も譲るつもりはない
これは俺の情報屋として生きていこうと決めたときに
定めたルールだ
誰になんと言われようと譲れない
「で、どうするんだ?」
王は唸りながら考え込んでいたが何を対価にするのか決めたのか
顔をこちらに向けてはっきりと言う
「決めたよ。僕が支払う対価として僕が用意できる範囲で君の望むものを何でも用意しよう。」
そう言うとなにかを言おうとしていた3人に顔を向けて
「異論は認めない。」
有無を言わさず押し通した
そこで俺はあえて聞く
「俺が望むのは王の命だと言ったら?」
そう言った瞬間に凄まじい殺気が俺に向けられる
黙ってはいるがいつ俺が動いても対応できるように
3人とも武器に手をかけているのがわかる
そんな3人を王は手で制止し
「それが君が望む対価であるならば。王妃の…、僕の大事な妻のソフィアの命が助かるのなら僕の命なんて安いものだよ。全てが終わったら僕の命を君に捧げよう。だからソフィアを助けるための方法を教えてくれ。」
俺はそれを聞きほくそえむ
「では、契約成立だ。」