表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2

 幼き頃、少女は父親と妹と離れ、山の中に建てられた小さな古びた小屋に、母親と二人でひっそりと暮らしていた。母親は少女に何も告げず、少女もまた、何も聞かなかった。何故、離れて暮らすのかを。幼いながらも少女は、気づいていたのだ。母親と同じものの事を。父親と妹と違うものの事を。母親との暮らしは、貧しいながらも楽しく、笑顔が絶えなかった。

 十歳になって間もない頃、それは唐突に訪れた。


「ここです! ここに化け物(フェラ)がいるんですよ」


 突然、山の(ふもと)の集落から、村人が押しかけてきた。何年も音沙汰がなかったが、この時ばかりは村人の男が数人の奴隷を連れた男と訪れたのだ。

 母親は、少女を押入れへと隠したが、その頃には扉がこじ開けられていた。少女は、震えながら押入れの隙間から外の様子を伺う。錆びついた鎖を手につけた男が二人、右腕がない男が一人、小屋の外に村人が多数。一人の鎖をつけた男は、母親を地へと押さえつけた。そして、もう一人の男は少女のいる押入れへと歩み寄る。開かれた戸、少女は恐怖で立ち尽くし、母親を見つめた。


「お、かあさん?」


 まともに呼吸が出来なくなるほど、張り詰めた空間。そう呟いた少女の声は、母親へ届き、母親は(うな)り声をあげて立ち上がった。押さえつけていた男を壁へと叩きつける。その瞳は少女を護るという意思が現れていた。叩きつけられた男は、少し欠けた刃の剣を片手に振り上げた。鈍い音とともに少女の視界は赤に染まる。母親の背から吹き出る血液。目の前で起こる事は、少女の網膜(もうまく)に焼き付く。母親は最後の力を振り絞って少女の元へと歩み寄る。


「逃……げてっ」


 少女の頬を優しく撫でた手は、力なく落ちていく。その手を掴もうと少女は手を出すが、それを阻止するかのように少女の手には、鎖が付けられた。


「今日からお前に自由はない。この(かせ)は一生涯、はずれない」


 この日、少女の運命は天地一変した。未来永劫、自由は訪れないのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ