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残虐皇帝の花嫁  作者: 雪斗
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廻り始める運命

今回も楽しんでくれると嬉しいです。

少女は愛しい男の胸に体を預けると涙を零した。

愛している……なんて言葉は言えない。

ーーこれは泡沫の恋。


少女は月に向かってゆっくりと手を伸ばした。

……嗚呼、なんて綺麗で儚い。


「……月になりたい。」


そんな呟きは虚空に消えて、少女は儚く微笑んだ。


















此処に召喚されて一週間が経った。

今日も逃げ出す方法を考えていた蓮とエマ達だったが……


突然ノックも無しに部屋の扉が開けられ、蓮達は驚き其方に目を向けた。

その扉の向こうから現れたのは憎っくき変態王だった。


変態王は相変わらずの目つきで蓮を見ると、下卑た笑みを浮かべた。


「舞姫よ……貴方様の為に舞台を用意させました。是非私に貴方様の舞を見せて下さい。」


その言葉に蓮は嫌悪の表情が出てしまいそうになるのを堪えて、作り笑いを浮かべた。


「今、僕は足を怪我しているので舞えません。」


どうやらその蓮の言葉が癪に障ったようで、変態王は豹変して怒り出した。


「前の無礼と言い、女神だと思って調子に乗りよって!」


そう怒鳴ると変態王は蓮に近づき、美しい銀髪を掴んで思い切り引っ張った。

その乱暴な行為にエマやリサは悲鳴を上げて、レメイアは蓮を助けようと変態王に食って掛かろうとした。


蓮は視線でレメイアに大丈夫と告げると変態王を見つめた……お前になんて決して屈さないと言う決意を込めて。


そんな反抗的な蓮の態度が気に入らないのか、変態王は更に強く蓮の髪を引っ張った。

蓮の顔が痛みで歪む。


「さぁ、来い!お前は私の為に舞えば良いのだ!」


そう言うと変態王は髪を引っ張って、蓮を強引に部屋から連れ出した。

蓮は必死に抗うが変態王の方が力が強く、髪から手を離させる事が出来なかった。


そうして焼けつくような鋭い痛みを頭皮に感じながら、蓮は変態王に連れて行かれたのであった。



















着いた場所はひたすら煌びやかだった。

変態王は髪から手を離すと、蓮を思い切り突き飛ばした。


体が思い切り床に叩きつけられて痛い。

蓮は痛みで軽く涙目になりながら変態王を睨んだ。

変態王はそんな蓮を鼻で笑うと偉そうに言った。


「此処でお前は舞うのだ!早く着替えろ!」


その言葉と同時に変態王の後ろからメイド達が現れ、蓮に衣装らしき物を差し出した。

蓮はその衣装らしき物を見て言葉を失った。


変態王が蓮に着れと命令して来た物は、大事な所が全く隠せていないとんでもない物だった。

それは布ではなく既に紐だった。


こんな物着れる筈が無いと、蓮は王を睨みつけた。


「こんな物着れない!」


そう言った蓮に変態王は舌打ちすると、後ろにいたメイド達に命令した。


「その女の服を脱がせろ。」


その言葉に蓮はギョッと目を見開いた。

変態王の目の前で全身剥かれるということか?

……嫌だ!


蓮は痛む体を叱咤して立ち上がると逃げようとしたのだが、それを素早くメイド達が取り抑えた。


「やめろ!離せ!僕に触るな!」


そんな蓮の叫びも虚しくメイド達が蓮の服に手を掛けた……その時だった。

突然勢いよく扉が開かれると、一人の騎士が慌てた様子で部屋に入って来た。


変態王はその騎士を胡乱げに見やった。


「何事だ。邪魔をするな!」


そんな不機嫌な変態王は意に介さず、騎士は青褪めた表情で話し始めた。


「王様、今すぐお逃げを!突然アミュリデス帝国の兵士達が現れ、我が国に攻め込んで参りました!既に城内にもアミュリデスの兵士達が入り込んでおり、この城が落城するのも時間の問題です!ですから、早くお逃げ下さい!」


その言葉に変態王は青褪めると勢いよく部屋から出て行き、メイド達もその後を追って行った。

蓮は何とか助かったと安堵の息を吐いたが、すぐに表情を引き締めた。


この国は今何処かの国から攻め込まれている……つまり此処にいては危ない。

蓮はそこに置かれていった蝶が描かれた仮面を付けるとエマ達の元へ駆けていった。


遂に、天上の舞姫の運命が廻り始める。







次回も読んでくれると嬉しいです。

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