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残虐皇帝の花嫁  作者: 雪斗
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残虐皇帝

今回も楽しんでくれると嬉しいです。

召喚されて五日が経った。

蓮は未だ此処から逃げ出す方法を思いつかないでいた。


見張りの兵士もかなりの人数が居るし、何より蓮が一人で此処から逃げたら、同じ部屋に居るエマ達があの変態王に危害を加えられてしまうかも知れない。

そう思うと容易には逃げ出せないし、エマ達は自分の家族が変態王に人質に取られている為、どうしても此処から逃げ出せないのだ。


そんな事情もあり、蓮が此処から逃走するのは絶望的であった。


だがそれでも蓮は諦めず、首を捻りながら必死に逃げる方法を考えていたのだが……やはりどれだけ考えても良い方法は浮かばず、蓮は肩を落とした。


そんな蓮をエマ達三人は必死で励ました。


「大丈夫よ、まだ時間はあるわ!」

「レン!私達も一緒に考えるから!」

「レンは優しすぎるのよ!私達の事は気にしなくて良いから、自分一人の事だけを考えて!」


そんな三人の優しさに蓮は微笑んだ。


「ありがとう、皆。」


だがやはり蓮の声には元気が無く、エマ達は暗い顔をした。


蓮は部屋中に漂う重苦しい雰囲気に耐えかねて、話題を変える事にした。


「ねぇ、そう言えばエマ達はどんな事が得意なの?」


あの変態王は優れた才能を持つ女性を好む……と言う事はエマ達も何か優れた才能を持っていると言う事だ。

それが何なのか蓮は気になり、三人に尋ねた。


突然の蓮の質問に三人は目を丸くしたが、最初にエマが答えた。


「私は楽器だったらなんでも出来るのだけど……特にピアノが得意なの。」


ピアノ、まさか異世界にその楽器があるとは思わず蓮は目を見開いた。

そして蓮は目を輝かせてエマに詰め寄った。


「エマ!ピアノ弾いて見せて!」


この部屋にピアノは無いが、エマならピアノがある場所を知っていて自由に弾く事が出来るのではないかと思ってお願いしたのだが、この蓮の言葉にエマは悲しげに目を伏せた。


「ピアノは王の許可が無いと弾けないの……それにピアノがあるのは一箇所……王の間だけなの……」


その悲痛な声に蓮は言葉を失った。

大好きな楽器を自由に弾けないエマの苦しみはどれ程だろう。

聞いてはいけない事を聞いてしまった、そう思い蓮は深く頭を下げた。


「ごめん、エマ……辛い事を聞いてしまって……」

「良いのよ……私こそピアノを見せてあげられなくて、ごめんなさいね……」


レンは改めて王に怒りを覚えた。

だいたい練習しないと腕は落ちてしまうと言うのに、王は心底馬鹿だと思う。


蓮は内心憤慨しながらも更に重くなった雰囲気を変える為、側室のリサを見つめた。


「リサは何が得意なの?」


その言葉にリサは微笑んだ。


「私は歌が得意なの……」


それを聞いて蓮は再び目を輝かせた。


「リサの歌、聞いてみたいな!」


それにリサは再び微笑むと歌い始めた。

蓮はそんなリサの歌声に聞き惚れた。

透き通った歌声が部屋中に響いて、心や体を蕩かせていく……凄すぎて鳥肌が立った。


蓮は聞き終えると拍手をし、興奮した様子でリサに詰め寄った。


「リサ!凄いよ!凄すぎて言葉に出来ないよ!」


そんな蓮の反応にリサは恥ずかしげに目伏せると、はにかんだ。


「ありがとう……」


それから暫し興奮していた蓮だったが落ち着くと、次に側室のレメイアを見つめた。


「レメイアは何が得意なの?」


その問いにレメイアは待っていましたとばかりに笑った。


「私は武術よ!武術ならばどんな男にも負けないわ!」


その予想外の答えに蓮は目を丸くしたが、次の瞬間今までの二人と同様に目を輝かせた。


「凄い!格好いい!」


元男だった蓮としては武術……その言葉はなんとも心惹かれるものだった。

だが、何を見せて貰おう?

そんな事を考えていた蓮にレメイアは微笑んだ。


「今は部屋の中で狭いし、武器もないから体術も剣術も見せてはあげられないけどいつか必ず見せてあげるわ!」


その力強い言葉に蓮は笑顔で頷いた。


「レメイア!期待して待ってる!」


そうレメイアに言ってから、蓮はわざとらしく咳払いをすると皆を見つめ、話し始めた。


「皆もう知っていると思うけど僕は舞です。此処は狭くて披露出来ないけどいつか必ず見せるから!」


その言葉に三人とも嬉しそうに微笑むと頷いた。

それから蓮達は色々な話に花を咲かせた。

舞の時に使用する様々な天上の音楽や歌を教えてあげると、エマやリサは大喜びしてくれた。

レメイアからは天上の世界の武術の事について色々と聞かれたが、流石にそれは蓮には分からず曖昧に微笑むだけだった。


そうして楽しく話していた時だった……ある皇帝の話題が出たのは。

それを最初に話題に出したのはレメイアだった。


「ねぇ、隣国の残虐皇帝って本当に戦神のように強いのかしら!」


残虐皇帝、その聞いたことのない言葉に蓮は首を傾げた。


「……残虐皇帝?」

「そう言えば、レンは知らないのよね……強大な帝国を統治する皇帝で、気に入らなければ老若男女関係なく容赦無く殺す事から残虐皇帝や殺戮帝と呼ばれているのよ。」


その恐ろしい呼び名に蓮は震えた。

そんな蓮を見てレメイアは悪戯っ子のように微笑んだ。


「その皇帝の噂はまだまだあるのよ!例えば自分の実兄を殺して皇帝に即位したとか……自ら戦場に出て一人で千人以上殺したとか……後は……」


まだまだ話そうとするレメイアを蓮は止めた。

そう言う話は苦手だ。


「もう良いよ…‥」


そんな疲れた様子の蓮を見てレメイアは口を閉じたが、代わりにエマが口を開いた。


「でも残虐皇帝って言っても恐ろしい噂ばかりじゃないのよ……例えばその余りの美貌から素顔を隠すために仮面をつけているとか……博学多才を誇る素晴らしい皇帝だとか……」


その言葉に蓮は少しだけ残虐皇帝に対するイメージを和らげた。

更にエマは話し続ける。


「でも、残虐皇帝は今まで何にも心動かされた事が無いらしいわ。どんな美しい人を見ても、どんな素晴らしい音楽を聴いても決して心動かさないのだとか。」


その話を聞いて蓮は悲しくなった。

そんな風に生きて、その皇帝は幸せなのだろうか?

残虐皇帝、蓮は何故かその言葉が忘れられなかった。







エマ……楽器

リサ……歌

レメイア……武術

次回も読んでくれると嬉しいです。

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