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残虐皇帝の花嫁  作者: 雪斗
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召喚理由

楽しんでくれると嬉しいです。

目覚めて最初に目に入ってきたのは知らない天井だった。

いつもの部屋の天井ではない事に首を傾げていた蓮だったが、先程のやり取りを思い出し目に涙を浮かべた。


『私が貴方を我が国に召喚したのです……』


その言葉に蓮は軽く絶望した。

……あんな男に召喚されてしまうなんて。

余りの悲しみと悔しさで溜めていた涙が遂に溢れた。


そんな風に涙を流しながら天井を眺めていた蓮だったが不意に複数の女性の声がする事に気がつき、視線を其方に向けた。


そこに居たのはとても綺麗な女性達だった。

そのうちの一人が目覚めた蓮に気づき、笑った。


「気がついたのですね!」


その女性の言葉を皮切りにして、皆が蓮の所にわらわらと集まってきた。


「気がついて本当に良かったです!」

「何か悲しい事でも思い出したのですか?」

「大丈夫ですよ……私達が側に居ますから。」


蓮は一斉に話し出す彼女達に驚きながらも微笑んだ。

……彼女達はとても良い人達そうだ。


「ありがとうございます……もう大丈夫です。」


彼女達のおかげか涙が止まった蓮はゆっくりと体を起こそうとしたのだが……その時に気づいてしまった。

……服が違う、と。


まさかあの王が僕の着替えを?

そう想像しただけで鳥肌が立った。


蓮は青褪めると己の体を抱きしめ、女性達に目を向けた。


「僕の着替えは……」


蓮の言いたい事が何か悟ったのか、最初に蓮に気が付いた女性が話してくれた。


「大丈夫ですよ。あの下衆な男ではなく、私が貴方様を着替えさせましたから……」


下衆な男……とはあの自称王のことか。

蓮は早速溜まっていた疑問を口にした。


「あの……貴方の名前は?そして此処は何処ですか?本当にあの男は王様なのですか?」


そう質問攻めにしてくる蓮に対して目の前の女性は嫌な顔一つせず優しく答えてくれた。


「私はエマと申します……そして此処はディルトリア王国という国の王城で、あの男がこの国の王です……」


ディルトリア王国なんて聞いた事がない。

蓮は改めて此処が異世界だと認識させられた。

……そしてあの男が王だなんて虫唾が走ると思った。


そんな風に衝撃を受けていた蓮だったが、次のエマの言葉で更なる衝撃を受ける事になる。


「そして……私達はあの男の側室です……」


悲しげにそう話すエマの衝撃的な言葉に蓮は目を見開いた。

……この親切な人達があの下衆男の側室?


「本当に……あの男の側室なんですか?」


その言葉に皆が悲しげに頷いた。

確かにこの部屋には美人ばかり居ると思っていたけれど……そんなまさか……


「私達はあの男に無理やり側室にされました……」


その悲しげなエマの言葉に、蓮は彼女達が側室である理由に納得した。

あの男に卑劣な手を使われたのだ。


そんな蓮の手をエマは取ると、強い決意を秘めた目で蓮を見つめた。


「だから貴方様だけは逃げて下さい!何としても!このまま此処にいては私達と同じように側室にされてしまいます!」


その言葉に蓮は目を剥いた。

理解が追いつかず、頭がクラクラする。

そんな蓮に気づきエマは説明を始めた。


「あの男……王は美しく何かしら優れた才能を持つ女が大好きなのです……私達は皆、見目がそこそこ良くて何かしら秀でた才能を持っていたから……あの王に強引に側室にされました……今度あの王は舞に秀でた者を側室にしたがっていました……しかも恐れ多い事に女神が舞う天上の舞を求めたのです!本当だったら女神なんて召喚できる筈が無いのに……何故か恐れ多くも貴方様がこの世界に召喚されてしまいました……本当に申し訳ありません……私達がなんとしてもこの召喚を食い止めていれば……」


そう悔しげに語るエマに蓮は混乱しつつも何とか理解した。

つまり変態王は美しい女神の舞姫を側室に求め召喚の儀を行ったけれど、女神なんて召喚できる筈もないから女神でないけど天上の舞を舞う事が出来る自分が召喚され、みんなは蓮を女神の舞姫と勘違いしている……と。


その余りにも身勝手な理由と酷すぎるとばっちりに蓮は憤慨した。

そんな蓮の手を取って、エマは言い募る。


「だからどうかお逃げください……美しい女神様……どうか天上の世界へとお戻り下さい……」


蓮自身出来たらそうしたいが……生憎女神ではないし、天井の世界へ戻る方法も知らない。


だが蓮は取り敢えず女神でない事は言わない事にした。

この人達なら大丈夫だと思うが……もしもあの男に知られたらどんな目に遭わされるか分からないからだ。


蓮は側室の女性達を見回すと微笑んだ。


「どうか敬語はやめて下さい。」

「ですが、女神様に恐れ多く……」

「大丈夫です。僕自身がそれを望むのですから、それに僕には蓮と言う名がありますから、どうか蓮と呼んでください。」


その蓮の優しい言葉に彼女達は目を潤ませると微笑んだ。


「レン、こんな私達にそう言ってくれてありがとう!」

「レンは優しくて美しくて素晴らしいわね!」

「必ず私達がレンを守るから!」


気さくに接してくれるようになったエマ達に蓮は微笑んだが、直ぐにこの絶望的な状況を思い出して蓮は途方にくれたのであった。







側室は三人います。

次回も読んでくれると嬉しいです。


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