薔薇園
今回も楽しんでくれると嬉しいです。
着いた場所は美しい薔薇園だった。
その華やかな薔薇の美しさに見惚れている蓮に、男性は麗しく微笑んだ。
「良い場所でしょう?」
その言葉に蓮は勢いよく頷くと心から笑った。
「この場所に連れて来てくれてありがとうございます!ところで……貴方は?」
「ああ、自己紹介がまだでしたね……私はエリアスです。どうかリアスと呼んでください。」
「はい!わかりました。リアス!僕の名前は蓮です。宜しくお願いしますね。」
そう言って蓮は握ったままのリアスの手を引いて、薔薇園の中を歩き始めた。
真紅の薔薇や桃色の薔薇など、色鮮やかに咲き誇る多くの薔薇を見ていると不思議と心が澄んでいった。
そうして清々しい表情になった蓮に、エリアスは微笑んだ。
「貴方には明るい表情が似合いますよ。」
その言葉に微笑んだ蓮だったが、ふと疑問を投げ掛けた。
「そういえば……リアスはどうしてあんな所に居たのですか?」
「私は……今この城に遊びに来ているのですが、友人に好きな人が出来たらしくて……その好きな相手を見定めようと思い、あそこに居たのですよ。」
その予想外の言葉に蓮は目を丸くした。
……思っていた事なのだが、この城に遊びに来れるなんてリアスはとても高貴な人なのでは?
そんな疑問を抱いた蓮だったが、本人が話さないのなら良いかと思い直した。
……今だけは身分も何も関係ない。
蓮は愉しげに笑うと問い掛けた。
「それで、その友人の好きな相手は見定める事が出来たのですか?」
「……出来ましたよ……確かにとても魅力的な方でした……思わず私が心惹かれてしまう程に。」
そのまさかの展開に蓮は再び目を丸くした。
「え!まさかエリアス……その友人の好きな相手を好きになってしまったのですか!」
その言葉にエリアスは曖昧に微笑んだ。
「……如何なのでしょう……分かりません。ですが、例え彼女を好きになっても……彼女は私のことを愛してはくれないでしょう。」
「……如何してですか?」
「彼女は……私の友人を心から愛している様子でしたから。」
その切ない響きを持つ声に、蓮は不意に泣きたくなった。
ーー叶わぬ恋ほど苦しいものはない。
そんな表情の曇った蓮を見てエリアスは目を瞠った。
「……レン?」
心配げに此方を見遣るエリアスの顔が、不意にエルと重なった。
……この瞬間蓮の涙腺は崩壊した。
蓮はエリアスに抱き付くと涙をぽろぽろ零した。
そんな蓮にエリアスは驚きながらも、優しく蓮の頭を撫でた。
その温かい体温と優しいエリアスの手に蓮はますます涙を零した。
「レン……私が何か良くないことでも言ってしまいましたか?」
その言葉に蓮は首を横に振ると、何も言わずただエリアスの胸で泣き続けた。
エリアスはそんな蓮を愛おしそうに見つめながら、優しく蓮を抱きしめていた。
蓮は落ち着くと頬を赤らめてエリアスから離れた。
そんな蓮にエリアスは微笑んだ。
「もう大丈夫そうですね。」
「はい、もう大丈夫です。突然泣き出してすみませんでした……エリアス。」
「全然良いですよ。むしろ貴方ならば歓迎します。」
その優しい言葉に蓮は微笑み、ふと思い付いた。
「エリアス……お礼に僕が良いものを見せてあげます。」
その言葉にエリアスは愉しそうに言葉を紡いだ。
「何ですか?」
「さっき丁度いい場所を見つけたんです!行きましょう!」
そうして蓮はエリアスの手を取ると歩き始めた。
次回も読んでくれると嬉しいです。